【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

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第2章

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 その後、俺が亜玲に連れてこられたのは、数駅先にあるショッピングモールだった。

 今日は土曜日ということもあり、ショッピングモールには割と家族連れが多い。さらにカップルであろう人たちもたくさんいる。

(いや、なんで……)

 休日のショッピングモールといえば、デートスポットの定番だろう。

 それは、恋愛経験の乏しい俺にもわかる。

 だから、思うのだ。いくらなんでも、こんなところに連れてくるのは違うだろう。

「亜玲。……付き合うとは言ったけれど、ショッピングモールだとは聞いてないんだけど」

 隣を歩く亜玲の顔を見上げて、そう問いかける。すると、亜玲の視線が俺に注がれた。亜玲は笑っていた。

「そりゃあ、言ってないからね。……だって、嫌でしょ?」

 わかっているのならば、連れてこないでほしい。

 そういう意味を込めて亜玲を睨みつければ、奴はただ笑みを深めるだけだった。

「……あのなぁ」

 俺が亜玲に小言をぶつけようとしたとき、不意に手を掴まれた。

 それに驚いてそちらに視線を向けると、俺の手を掴んでいるのは当然ながらに亜玲だった。

 亜玲は俺の手を掴んだかと思うと、今度は指を絡めてくる。……いわゆる、恋人つなぎという奴だ。

「あ、亜玲!」

 絡められた指を解こうとする。なのに、亜玲は手に力を込めた。これじゃあ、指を解くこともできない。

「別にいいじゃん。減るもんじゃないし」
「……へ、減るもんじゃないって」

 確かに指を絡めたくらいで減るようなものはないかもしれない。

 あえて言うのならば、俺の精神がすり減るくらいだろうか。

 ……それも、大問題か。

「ほら、行くよ」

 そんな俺の気持ちを無視して、亜玲が足を前に進めていく。

 指を絡められている所為で、俺は亜玲についていくことしか出来ない。

(……そう、いえば)

 昔は、よく亜玲と出掛けたっけな……。

 もちろん当時は子供だったので、互いの家族を含めてだったけれど。

 いつからか、亜玲と仲違いして、俺は亜玲を嫌うようになって……。

(こいつは、俺に嫌われてどう思っていたんだろう)

 今更ながらに、そう思った。

 亜玲は俺に嫌われてどう感じたんだろうか。嫌われるようなことをしたのは亜玲だ。が、初めに酷いことをしたのは俺で……。

 過去に浸りつつ、亜玲を見上げた。亜玲の後頭部が見えて、なんだか照れくさくなる。

 昔は俺のほうが身長が高かったのに。気が付いたら、亜玲には抜かされていて、体格だって亜玲のほうが立派になった。

 そりゃあ、オメガである俺はアルファの亜玲には勝てない。それくらい、頭の中では理解している。

 心の中には、昔の天使のような亜玲がまだ住み着いているんだけれど。

「……亜玲」

 小さく亜玲のことを呼ぶ。そうすれば、タイミングよく亜玲がこちらに視線を向けた。亜玲は、嬉しそうに笑う。

「なぁに、祈?」
「……なんでもない」

 亜玲の言葉に、素っ気なく言葉を返す。

 なんでもない。そうだ、なんでもない。

 ほんの少し過去に浸っていたとか、懐かしい気持ちを抱いていたとか。そういうの、亜玲には関係ない。亜玲には知られるわけにはいかない。

「そっか」

 亜玲は問い詰めてはこなかった。が、俺の手を握る手に力がこもったような気がする。

 ぎゅっと握られた手が、震えているような気がする。

(……もしかして、亜玲にはなにか怖いことがあるのか?)

 不意に、そんなことを思ってしまった。

 亜玲にはなにか恐れていることがあって、それを誤魔化すために明るく振る舞っているのかも……とまで想像して、やっぱりやめた。

 だって、そうじゃないか。俺は亜玲に深入りしたくない。亜玲だって、俺なんかには深入りされたくないだろう。

 番でも恋人でもない。ただの、幼馴染の男。

 自分を卑下してそう思っていたとき、頭の中によぎったのは――朝食の際に亜玲が俺に囁いた、意味の分からない言葉だった。
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