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第1章

⑭【※】

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(……こんなのっ!)

 そう思うからこそ、俺は亜玲のその指を思いきり噛んだ。

 こうすれば、亜玲が怒ってやめてくれるのではないか。そんな小さな期待が半分。もう半分は――乱暴に犯されるのではないかという、期待。

 まるで相反する気持ちを抱きかかえながら、俺は亜玲の指に歯を立てる。亜玲は、笑っていた。

「甘噛みしちゃって、可愛いね。……ほら、もうちょっと頑張って」

 亜玲がそう言って、さらに腰を押し進めた。

 なんとも言えない痛みが身体を襲って、亜玲の指を噛む歯に力が入る。

 ……亜玲は、指を噛んだことに関して、なにも言わなかった。

「っはぁ、祈のナカ、すっごく熱いね……」

 うっとりとしたような声で、亜玲がそう呟いた。

 さらにぐっと腰を押し進められる。亜玲の腰が、俺の尻に当たったのがわかった。

「全部、挿ったね……」

 そう呟いた亜玲の言葉に、俺の意識が一気に結合部に集中する。

 俺のナカを満たしているのは、熱くて太い――亜玲の屹立。

 ……こんな風にされるなんて、想像もしていなかった。

「本当、祈のナカ、吸い付いてくる。……気持ちいい?」
「そ、んなわけっ!」

 そんなわけない!

 そう言おうとしたのに、言葉にならなかった。律動が始まったからだ。

 肉棒が俺のナカから出て行こうとする。それに一抹の寂しさを覚えていれば、今度は一気に奥まで貫かれた。

「ぁあっ! あぅ……!」

 間抜けな声が、口から零れる。

 亜玲の肉棒が、俺の奥を突いてくる。

 痛み、苦しみ。いろいろなものが身体を支配するのに、頭を支配しているのは確かな喜びだけ。

 オメガの本能が、喜んでいるのだ。孕まされることを望む、質の悪い本能。それが、俺の中で歓喜して暴れ回っている。

「祈……ぁ、気持ちいい……」

 亜玲の抽挿が激しくなる。その動きが激しくなると、ぐちゅぐちゅという淫らな水音も大きくなった。

 多分、さっき亜玲が指に垂らしていた潤滑油かなにかだろう。その所為なのか、俺の粘膜がひくひくとしている。

 亜玲のモノを、嬉しそうに締め付けているのがよくわかった。

「いぁ、やだぁ……」

 ぶんぶんと首を横に振った。

 なのに、亜玲は止まらない。容赦ない突き上げに、俺の頭がくらくらとする。

 ――おかしくなる……!

 頭の中で鳴り響く警告。しかし、それと同時に「おかしくなりたい」という願望も生まれて。

(も、どうしたいのか、わかんないっ……!)

 シーツに顔をうずめて、俺は微かに感じる快感に耐えるしかなかった。

 きっと、今の俺の顔は涙と唾液と鼻水でぐちゃぐちゃになっているだろう。……見るに堪えない姿だと、思う。

「祈……」

 後ろから俺の名前を呼ぶ亜玲の声は、うっとりとしていた。

 ……あぁ、コイツって情事のときはこういう風に相手を呼ぶんだ……。

 とか、一生使えそうにない知識を手に入れた。……もう、忘れたい。

「うぁ、あ、あ、れい……」

 ぱんぱんと肉同士がぶつかる音がする。水音もどんどん大きくなっているような気がして、身体中に快感が蓄積していく。

(……もっと)

 無意識のうちに、心がそう叫ぶ。

 ハッとしてその本能をねじ伏せようとすると、俺の身体のナカでなにかがはじけ飛んだ。

 最奥に熱い飛沫を放たれたかと思えば、亜玲は陰茎の先っぽで俺の奥をぐりぐりと刺激する。……いや、違う。

(ぁ、お、く、あつい……)

 これは孕ませようとしているんだ。

 ……それは、アルファがオメガを孕ませようとしている本能的なものなのか。

 はたまた、亜玲自身が俺を孕ませようとしているのか。生憎、俺にはそれを知る術がない。

「ははっ、祈、もしかして……」

 ふと、亜玲の手が俺の陰茎に伸びる。俺の陰茎は、痛いほどに勃っていた。

「ナカをいっぱいつかれて、興奮しちゃったの?」
「ちがっ!」

 亜玲がゆるゆると俺の陰茎の竿をしごきながら、そう問いかけてくる。

 一度出した所為で、白濁と先走りでドロドロになっている俺自身のモノ。それを、亜玲のきれいな手が撫でている。

「触ったら、もっと硬くなってきたね。……可愛い」

 その指が、先端の鈴口に触れる。瞬間、俺の身体がびくんと跳ねた。

「いいよ、このまま出しても。……もう一回出しておかないと、辛くなるだろうし」
「……ぁ?」

 亜玲の言葉の意味が、よくわからない。ぼうっとする意識で亜玲を見つめれば、亜玲は笑っていた。

「ほら、まだ夜は始まったばっかりだし? ……罠にかかった獲物を逃がすほど、俺もお人好しじゃないんだよ」
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