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本編

モテる幼馴染の秘密 8【※】

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「……マルクス」

 ようやく唇が離れて、若干歪んだ視界でマルクスの顔を見つめる。

 歪んでいるのは、快感の所為で零れた涙の所為だった。

「ロドルフ。無理、我慢できそうにない」

 マルクスが熱を帯びた声でそう囁いて、俺の身体に手を這わせる。

 初めは薄手のシャツの上から、上半身を撫でられる。それがどんどん下に降りて、腰元に触れた。

「……反応した?」

 ぴくんと身体を跳ねさせた俺を見て、マルクスが意地悪く唇の端を吊り上げて、そう問いかけてくる。

 ――反応なんて、してない!

 と、言うには説得力が全くない。

 だって、俺の陰茎は緩く勃ち上がってる。スラックスと下穿きを押し上げているのが、俺自身にもよくわかってしまった。

(キスして、身体を撫でられただけで……)

 それを実感すると本当にいたたまれなくて、そっとマルクスから視線を逸らした。

 瞬間、絡めた指を解かれて、一抹の寂しさが胸中に渦巻く。だから、俺は自ら腕をマルクスの背中に回した。

「……な、なぁ、もっと、触って……」

 視界が涙でぐちゃぐちゃになっている。なのに、俺は強請ることを止められない。

 俺の声は震えていて、理性なんてとっくに投げ捨てた声を、していた。

 自分でも驚くほどに艶めかしい、色香を帯びた声。心臓がバクバクと大きな音を立てて、マルクスを求めている。

「お、おれ、マルクスだったら、大丈夫……だと、思う」

 嘘だ。

 本当はマルクスじゃないとダメだ。この男じゃないと……俺は、こんな風にはならない。

 身体は反応しないし、触れてほしいなんて思いもしない。それだけは、容易に想像が出来る。

「ロドルフ……」
「我慢、しなくてもいいから」

 もう片方の手を、マルクスの下肢に伸ばして、そこに触れる。

 硬くて熱いソコに、布越しに指を這わせた。

「もう、こんなになってるし……」

 さらに大きくなったソレが、なんだか愛おしく感じてしまった。それは、惚れた弱みなのか。

「めちゃくちゃにしていいよ。……マルクスの、好きにして」
「っつ!」

 俺の言葉を聞いたマルクスが、俺の唇に噛みつくようなキスをしてくる。

 じゅっと舌先を吸われて、身体中に甘いしびれが広がっていく。何度も何度も口づけて、酸欠からなのか頭がくらくらとした。

 その間にも、マルクスの手は俺の身体を撫でまわしている。その手が腰から下肢に伸びて、身体が緊張からなのかまたびくんと震えた。

 ……違う。これは緊張じゃない。期待だ。

「ロドルフ」
「い、いい、続けて……」

 マルクスは変なところで臆病だから、俺が嫌がっていると思ったら、すぐに行為をやめてしまおうとするだろう。

 頭の何処かでは、この関係が虚しいものだって、理解していた。が、もういい。

(この際、こいつの童貞を貰って、思い出にして生きて行けばいい……)

 俺とマルクスが結婚できるわけがない。だったら、こいつの童貞を貰って、思い出にして、別の奴と結婚する。

 一度抱かれておけば、俺の拗らせた恋慕も、落ち着くだろうと信じて。

 そんなことを考えていれば、マルクスの手が俺のスラックスの上から、陰茎に触れる。緩く勃ち上がっていたソコを撫でられて、さらに下肢に熱が溜まっていく。

「ロドルフ。俺、お前のことが、す――」

 言葉の続きが容易に読めたので、俺は顔を上げて、言葉を遮るようにキスをする。

 一方的にキスをして、舌でマルクスの口腔内を蹂躙する。

「……それ以上は、言うな」

 唇を離してそう言えば、マルクスの眉間にしわが寄った。

 けど、さすがに欲望には勝てなかったらしい。こくんと首を縦に振って、その指が俺のシャツのボタンにかけられる。

(マルクスは、人のシャツを脱がせるのは、ハジメテなのかな……)

 もしもそうだったとしたら、これまた嬉しい……かも、しれない。

 そういう意味での『ハジメテ』も、俺がもらえていたら。……これ以上の幸福は、ない。

「直接、触ってもいいか?」

 一々問いかけなくてもいいのに、マルクスは静かな声で問いかけてくる。

 そういうところも、なんだかとっても愛おしい。

 だから、俺は頷く。
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