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本編
モテる幼馴染の秘密 4
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そして、その言葉は生々しい。もっとほら、曖昧にするとか……。
(って、こいつにはそんなの無理だよな……)
マルクスは器用なほうじゃない。むしろ、不器用なほうだ。
きっと、そこまで頭が回っていないのだと思う。あと、今、単純にこいつは焦っている。
「……そっか」
しかし、それ以外に返す言葉が思い浮かばない。
何処か遠い目をしつつそう返事をすれば、マルクスが勢いよく立ち上がる。テーブルが少し動いて、ティーセットがぶつかって小さく音を鳴らした。
「い、いきなり立ち上がって、なに……?」
自分の頬が引きつっているのがわかった。なんていうか、このままだと、危ないような――。
「――俺、ロドルフが好きだ」
はっきりとそう告げたマルクスが、俺の隣に移動してくる。
そのままぐいっと顔を近づけてきて、俺の唇とマルクスの唇が触れ合いそうになる。
すぐそばに、マルクスの端正な顔がある。
「俺、お前への気持ちを拗らせすぎて、童貞のままなんだ」
「いや、そんなの知らないんだけど!?」
そんなの、俺に言われても――!
俺がそう言うよりも前に、マルクスの腕が伸びてきて。
その腕が、俺の腰に回された。俺の身体が、びくって跳ねる。
マルクスはそれに気が付いているのか、はたまた気が付いていないのか。
そこは定かじゃないけれど、俺の身体を抱き寄せる。
……俺とは全然違う、たくましい胸だと思った。
「だから、ロドルフ。……責任を、取ってくれ」
マルクスの心臓の音が、聞こえてくるかのようだった。
早い鼓動を聞いていると、俺の心臓の鼓動もリンクするかのように早くなっているような気がする。
……これ、マルクスに聞こえていないよな?
「せ、責任、取るって……」
「俺と結婚しろ」
意味がわからなかった。
だから、俺がぽかんとしていれば。マルクスが俺の顎をすくい上げる。
俺とマルクスの視線が絡み合って、上手く言葉に出来ない気持ちが胸中に芽生える。
心臓の鼓動が、いつもよりも大きく聞こえた。
「い、意味がわからないんだけど! 大体、俺、マルクスが一生童貞だったとしても、知らないからっ!」
そうだ。それは、マルクスの事情だ。
親友として、幼馴染として。こいつの役に立ちたい気持ちは確かにある。だけど、限度があるんだ。
(そもそも、責任取れとか、意味わかんないし……)
俺、一つも悪くないのに、責任を取れって言われてるんだけど……。
「俺、悪くないだろ!」
マルクスの胸をたたいて、そう叫ぶ。
必死にたたいたのに、非力な俺ではマルクスに大したダメージも与えられないらしい。
マルクスの視線が、温かくなったのがわかってしまった。
(そりゃあ、騎士のマルクスと非力な俺じゃあ、全然違うけど!)
でも、少しくらいダメージを受けてくれたっていいだろ!
そう叫び出したい気持ちを押さえて、俺は何度か深呼吸を繰り返す。
落ち着け、落ち着け、落ち着け……。
「そんなのお前の事情だし、俺には――」
「――縁談が、来ているんだろう?」
俺よりも先に、マルクスがその事実を口にした。
ごくりと息を呑む。こいつ、知っていたのか……。
「相手は誰だ? 女か? それとも男か? 爵位は? 仕事は?」
マルクスがぐっと顔を近づけてきて、俺にそう問いかける。
いや、これは問いかけなどではない。一種の尋問である。
答えるまで終わらない、取り調べみたいなものだと思った。
「……そこまで、マルクスに教える義理、ないだろ」
幼馴染っていうだけで、結婚話にまで口を出されたくはなかった。
そんな風に思って顔を背ければ、マルクスが「関係はある」とはっきりと言ってきて。
「俺は、ロドルフが好きだから」
まっすぐに見つめられて、愛の告白をされた。
(い、いたたまれないっ……!)
愛の告白とか、正直少しだけ憧れていた。
が、この状態はいたたまれない。しかも、相手は長年親友として付き合ってきた幼馴染とか……!
挙句、ここまで言われたら。
(……悪い気が、しないな)
悪くはないなって、思ってしまう。
現金すぎる俺の頭は、自然とそんなことを考えていた。
(って、こいつにはそんなの無理だよな……)
マルクスは器用なほうじゃない。むしろ、不器用なほうだ。
きっと、そこまで頭が回っていないのだと思う。あと、今、単純にこいつは焦っている。
「……そっか」
しかし、それ以外に返す言葉が思い浮かばない。
何処か遠い目をしつつそう返事をすれば、マルクスが勢いよく立ち上がる。テーブルが少し動いて、ティーセットがぶつかって小さく音を鳴らした。
「い、いきなり立ち上がって、なに……?」
自分の頬が引きつっているのがわかった。なんていうか、このままだと、危ないような――。
「――俺、ロドルフが好きだ」
はっきりとそう告げたマルクスが、俺の隣に移動してくる。
そのままぐいっと顔を近づけてきて、俺の唇とマルクスの唇が触れ合いそうになる。
すぐそばに、マルクスの端正な顔がある。
「俺、お前への気持ちを拗らせすぎて、童貞のままなんだ」
「いや、そんなの知らないんだけど!?」
そんなの、俺に言われても――!
俺がそう言うよりも前に、マルクスの腕が伸びてきて。
その腕が、俺の腰に回された。俺の身体が、びくって跳ねる。
マルクスはそれに気が付いているのか、はたまた気が付いていないのか。
そこは定かじゃないけれど、俺の身体を抱き寄せる。
……俺とは全然違う、たくましい胸だと思った。
「だから、ロドルフ。……責任を、取ってくれ」
マルクスの心臓の音が、聞こえてくるかのようだった。
早い鼓動を聞いていると、俺の心臓の鼓動もリンクするかのように早くなっているような気がする。
……これ、マルクスに聞こえていないよな?
「せ、責任、取るって……」
「俺と結婚しろ」
意味がわからなかった。
だから、俺がぽかんとしていれば。マルクスが俺の顎をすくい上げる。
俺とマルクスの視線が絡み合って、上手く言葉に出来ない気持ちが胸中に芽生える。
心臓の鼓動が、いつもよりも大きく聞こえた。
「い、意味がわからないんだけど! 大体、俺、マルクスが一生童貞だったとしても、知らないからっ!」
そうだ。それは、マルクスの事情だ。
親友として、幼馴染として。こいつの役に立ちたい気持ちは確かにある。だけど、限度があるんだ。
(そもそも、責任取れとか、意味わかんないし……)
俺、一つも悪くないのに、責任を取れって言われてるんだけど……。
「俺、悪くないだろ!」
マルクスの胸をたたいて、そう叫ぶ。
必死にたたいたのに、非力な俺ではマルクスに大したダメージも与えられないらしい。
マルクスの視線が、温かくなったのがわかってしまった。
(そりゃあ、騎士のマルクスと非力な俺じゃあ、全然違うけど!)
でも、少しくらいダメージを受けてくれたっていいだろ!
そう叫び出したい気持ちを押さえて、俺は何度か深呼吸を繰り返す。
落ち着け、落ち着け、落ち着け……。
「そんなのお前の事情だし、俺には――」
「――縁談が、来ているんだろう?」
俺よりも先に、マルクスがその事実を口にした。
ごくりと息を呑む。こいつ、知っていたのか……。
「相手は誰だ? 女か? それとも男か? 爵位は? 仕事は?」
マルクスがぐっと顔を近づけてきて、俺にそう問いかける。
いや、これは問いかけなどではない。一種の尋問である。
答えるまで終わらない、取り調べみたいなものだと思った。
「……そこまで、マルクスに教える義理、ないだろ」
幼馴染っていうだけで、結婚話にまで口を出されたくはなかった。
そんな風に思って顔を背ければ、マルクスが「関係はある」とはっきりと言ってきて。
「俺は、ロドルフが好きだから」
まっすぐに見つめられて、愛の告白をされた。
(い、いたたまれないっ……!)
愛の告白とか、正直少しだけ憧れていた。
が、この状態はいたたまれない。しかも、相手は長年親友として付き合ってきた幼馴染とか……!
挙句、ここまで言われたら。
(……悪い気が、しないな)
悪くはないなって、思ってしまう。
現金すぎる俺の頭は、自然とそんなことを考えていた。
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