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本編
モテる幼馴染の秘密 2
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別に童貞であること自体は、悪いことじゃない。実際、俺だってそうだし。
間抜けな声を上げた理由は、そういう理由じゃない。ほかに、二つある。
一つ目、まさかあれだけモテるマルクスが童貞だったという純粋な驚き。そして、もう一つは――。
「……いや、なんでそれ、俺に言うんだ……?」
どうしてマルクスが、それを俺にカミングアウトしたかということだ。
(確かに、俺とマルクスは長い付き合いだけど……)
でも、かといって。相談する先を間違えている気しかしない。
俺は自他ともに認める平々凡々な非モテ男だ。常に老若男女問わず言い寄られているマルクスとは全然違う。
あ、この国では同性婚も可能なので、貴族の中にも男性同士、女性同士の夫婦がいる。
「お前だって、俺がいわば非モテだって知ってるよな……?」
近くにマルクスというモテる男がいたためなのか、俺の存在はかすみ続けていた。
多分存在感がないとか、そういうレベルまで達している。俺の勘でしかないけれど。
「……ロドルフ、お前、驚かないのか?」
「いや、ちょっとは驚いたよ」
どうやらマルクスは俺の疑問は無視するスタンスらしい。
まぁ、いいや。その一心で、俺はマルクスの話に合わせることにする。
そもそも、これはマルクスの悩み相談なのだ。俺がペースを握るのは、少し違うと思う。
「だってお前、ずっと人に囲まれてたし。いい感じの人とか、すでにいるんだって思ってた」
お茶を一口飲みつつ、そう零す。
男でも、女でも。こいつだったら選び放題だろうに。
「……だから、まさかだなって」
「そうか」
マルクスは俺の言葉に気を悪くした様子はない。ただ、その神妙な面持ちをした顔を、余計にしかめるだけだ。
……こいつ、相当悩んでいるな。
付き合いの長い俺には、それがわかった。
「けどさ。まぁ、そういうのデリケートな問題だし。……きっかけとか、機会とか。チャンスがあったら、大丈夫だって」
絶対俺には言われたくないことだろうけれど。
けど、今、こいつを励ますにはこういうしかなかった。
出来る限り柔和に見える笑みを浮かべて、マルクスを励ます。……なんで童貞の俺が、マルクスのことを励ましているかは知らない。
(俺だって、励ましてほしいんだけど……)
こいつにはチャンスや機会があっただろう。が、俺には一度たりともなかった。
ただ、あえて言うのならば――俺には縁談の話が来ているのが、唯一の救いだろうか。
「お前はめちゃくちゃモテるし、いつかきっと――」
「――ロドルフ」
「ん?」
俺の言葉を遮るように、マルクスが声を上げる。なので、俺はきょとんとしつつマルクスの顔を見つめた。
その目が、俺を射貫いている。……心臓が、どくんどくんと大きく音を立てる。
「チャンスとか、機会とか。多分、俺のはそういう問題じゃないんだ」
「……は?」
いや、こいつ一体なにを言っているんだ……?
(大体、そうじゃなかったら、ほかになにがあるんだっての……!)
好きな人がいるのならば、さっさと告白して恋人関係になればいいだろうに。
誰もこいつみたいな優良物件から告白されたら、断りはしないだろう。そういうことだ。
「五年ほど前、だろうか」
「……うん」
なんか、唐突に昔話が始まった。
……これは、長くなるのだろうか? 長くなるんだったら、ちょっと気を緩めたいんだけど……と、言える空気でもなくて。
マルクスは言葉を続けた。俺の気持ちも考えも、知らないから。
間抜けな声を上げた理由は、そういう理由じゃない。ほかに、二つある。
一つ目、まさかあれだけモテるマルクスが童貞だったという純粋な驚き。そして、もう一つは――。
「……いや、なんでそれ、俺に言うんだ……?」
どうしてマルクスが、それを俺にカミングアウトしたかということだ。
(確かに、俺とマルクスは長い付き合いだけど……)
でも、かといって。相談する先を間違えている気しかしない。
俺は自他ともに認める平々凡々な非モテ男だ。常に老若男女問わず言い寄られているマルクスとは全然違う。
あ、この国では同性婚も可能なので、貴族の中にも男性同士、女性同士の夫婦がいる。
「お前だって、俺がいわば非モテだって知ってるよな……?」
近くにマルクスというモテる男がいたためなのか、俺の存在はかすみ続けていた。
多分存在感がないとか、そういうレベルまで達している。俺の勘でしかないけれど。
「……ロドルフ、お前、驚かないのか?」
「いや、ちょっとは驚いたよ」
どうやらマルクスは俺の疑問は無視するスタンスらしい。
まぁ、いいや。その一心で、俺はマルクスの話に合わせることにする。
そもそも、これはマルクスの悩み相談なのだ。俺がペースを握るのは、少し違うと思う。
「だってお前、ずっと人に囲まれてたし。いい感じの人とか、すでにいるんだって思ってた」
お茶を一口飲みつつ、そう零す。
男でも、女でも。こいつだったら選び放題だろうに。
「……だから、まさかだなって」
「そうか」
マルクスは俺の言葉に気を悪くした様子はない。ただ、その神妙な面持ちをした顔を、余計にしかめるだけだ。
……こいつ、相当悩んでいるな。
付き合いの長い俺には、それがわかった。
「けどさ。まぁ、そういうのデリケートな問題だし。……きっかけとか、機会とか。チャンスがあったら、大丈夫だって」
絶対俺には言われたくないことだろうけれど。
けど、今、こいつを励ますにはこういうしかなかった。
出来る限り柔和に見える笑みを浮かべて、マルクスを励ます。……なんで童貞の俺が、マルクスのことを励ましているかは知らない。
(俺だって、励ましてほしいんだけど……)
こいつにはチャンスや機会があっただろう。が、俺には一度たりともなかった。
ただ、あえて言うのならば――俺には縁談の話が来ているのが、唯一の救いだろうか。
「お前はめちゃくちゃモテるし、いつかきっと――」
「――ロドルフ」
「ん?」
俺の言葉を遮るように、マルクスが声を上げる。なので、俺はきょとんとしつつマルクスの顔を見つめた。
その目が、俺を射貫いている。……心臓が、どくんどくんと大きく音を立てる。
「チャンスとか、機会とか。多分、俺のはそういう問題じゃないんだ」
「……は?」
いや、こいつ一体なにを言っているんだ……?
(大体、そうじゃなかったら、ほかになにがあるんだっての……!)
好きな人がいるのならば、さっさと告白して恋人関係になればいいだろうに。
誰もこいつみたいな優良物件から告白されたら、断りはしないだろう。そういうことだ。
「五年ほど前、だろうか」
「……うん」
なんか、唐突に昔話が始まった。
……これは、長くなるのだろうか? 長くなるんだったら、ちょっと気を緩めたいんだけど……と、言える空気でもなくて。
マルクスは言葉を続けた。俺の気持ちも考えも、知らないから。
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