【完結】【R18】恋愛未経験なのに、モテる騎士の幼馴染に「童貞を拗らせた責任を取れ」と迫られています。正直知らない。

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

文字の大きさ
上 下
2 / 15
本編

モテる幼馴染の秘密 2

しおりを挟む
 別に童貞であること自体は、悪いことじゃない。実際、俺だってそうだし。

 間抜けな声を上げた理由は、そういう理由じゃない。ほかに、二つある。

 一つ目、まさかあれだけモテるマルクスが童貞だったという純粋な驚き。そして、もう一つは――。

「……いや、なんでそれ、俺に言うんだ……?」

 どうしてマルクスが、それを俺にカミングアウトしたかということだ。

(確かに、俺とマルクスは長い付き合いだけど……)

 でも、かといって。相談する先を間違えている気しかしない。

 俺は自他ともに認める平々凡々な非モテ男だ。常に老若男女問わず言い寄られているマルクスとは全然違う。

 あ、この国では同性婚も可能なので、貴族の中にも男性同士、女性同士の夫婦がいる。

「お前だって、俺がいわば非モテだって知ってるよな……?」

 近くにマルクスというモテる男がいたためなのか、俺の存在はかすみ続けていた。

 多分存在感がないとか、そういうレベルまで達している。俺の勘でしかないけれど。

「……ロドルフ、お前、驚かないのか?」
「いや、ちょっとは驚いたよ」

 どうやらマルクスは俺の疑問は無視するスタンスらしい。

 まぁ、いいや。その一心で、俺はマルクスの話に合わせることにする。

 そもそも、これはマルクスの悩み相談なのだ。俺がペースを握るのは、少し違うと思う。

「だってお前、ずっと人に囲まれてたし。いい感じの人とか、すでにいるんだって思ってた」

 お茶を一口飲みつつ、そう零す。

 男でも、女でも。こいつだったら選び放題だろうに。

「……だから、まさかだなって」
「そうか」

 マルクスは俺の言葉に気を悪くした様子はない。ただ、その神妙な面持ちをした顔を、余計にしかめるだけだ。

 ……こいつ、相当悩んでいるな。

 付き合いの長い俺には、それがわかった。

「けどさ。まぁ、そういうのデリケートな問題だし。……きっかけとか、機会とか。チャンスがあったら、大丈夫だって」

 絶対俺には言われたくないことだろうけれど。

 けど、今、こいつを励ますにはこういうしかなかった。

 出来る限り柔和に見える笑みを浮かべて、マルクスを励ます。……なんで童貞の俺が、マルクスのことを励ましているかは知らない。

(俺だって、励ましてほしいんだけど……)

 こいつにはチャンスや機会があっただろう。が、俺には一度たりともなかった。

 ただ、あえて言うのならば――俺には縁談の話が来ているのが、唯一の救いだろうか。

「お前はめちゃくちゃモテるし、いつかきっと――」
「――ロドルフ」
「ん?」

 俺の言葉を遮るように、マルクスが声を上げる。なので、俺はきょとんとしつつマルクスの顔を見つめた。

 その目が、俺を射貫いている。……心臓が、どくんどくんと大きく音を立てる。

「チャンスとか、機会とか。多分、俺のはそういう問題じゃないんだ」
「……は?」

 いや、こいつ一体なにを言っているんだ……?

(大体、そうじゃなかったら、ほかになにがあるんだっての……!)

 好きな人がいるのならば、さっさと告白して恋人関係になればいいだろうに。

 誰もこいつみたいな優良物件から告白されたら、断りはしないだろう。そういうことだ。

「五年ほど前、だろうか」
「……うん」

 なんか、唐突に昔話が始まった。

 ……これは、長くなるのだろうか? 長くなるんだったら、ちょっと気を緩めたいんだけど……と、言える空気でもなくて。

 マルクスは言葉を続けた。俺の気持ちも考えも、知らないから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...