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本編
モテる幼馴染の秘密 1
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俺の実家でもある、ヘルテル男爵家の離れ。
そこで、俺はほかでもない幼馴染の男、マルクスと一緒にいた。
「っていうか、マルクスはどういう相談がしたいんだ……?」
つい先日。マルクスが俺の元をいきなり訪れた。
そして、神妙な面持ちで「お前にしか出来ない相談がある」と言ってきたのだ。
その姿があまりにも思い詰めていたので、俺は了承。
今日、この時間に離れに来てほしいとマルクスに言った。
『お前にしか出来ない相談』ということは、他の人間には聞かれたくないことだろう。
そう思ったので、俺は気を回して使用人たちにも近寄らないようにと、指示を出した。あと、両親にも「マルクスと二人で話がしたいんだ」と言って、近寄らないようにしてもらった。
なので、この離れどころか、今、この付近には俺とマルクスしかいない。
「……あの、さ」
ティーカップをテーブルの上に置いて、俺は小首をかしげる。
そのままマルクスの真っ青な目を見つめれば、奴は露骨に視線を逸らした。
……もしかして、なにかあったのだろうか?
「俺にしか出来ない相談って、なに?」
直球だったかもしれない。が、このまま無言で見つめ合っていても、気まずいだけだ。
「……俺、マルクスのこと、この世界で一番よく理解してるって、自負してる」
産まれてからずっと、一緒だったのだ。
幼馴染とか、親友とか。それ以上の絆……みたいなのが、俺たちの間にはある。
「だからさ、なんでも、話せよ」
静かにそう促せば、マルクスが手を組んでその上に顎を置いた。
視線は下を向いており、やっぱりなにかがあったんだろう。
もしかして、騎士団のほうでなにかがあったのだろうか? それとも、恋愛関係だろうか?
(マルクス、本当にモテるからな……)
男女問わず、マルクスのファンは多い。
……恋愛未経験、交際経験ゼロの俺とは、全然違う。自分で言っていて、惨めだけれどさ。
「……ロドルフ」
「うん」
「俺が今からなにを言っても、驚かずに聞いてくれ。あと、笑わないでくれ」
「え、あ、あぁ」
笑うような要素が、あるのだろうか?
(驚かないでくれというのはともかく、笑う要素なんてあるのか……?)
俺は、大切な幼馴染の悩みを笑うつもりなんてない。けど、一応気を引き締めていよう。
その一心で気を引き締めれば、マルクスが大きく息を吐いて、顔を上げた。
「――俺、童貞なんだ」
「……は?」
だけど、さすがにその相談は予想もしていなくて。
俺は、ただぽかんとしながら間抜けな声を上げることしか出来なかった。
そこで、俺はほかでもない幼馴染の男、マルクスと一緒にいた。
「っていうか、マルクスはどういう相談がしたいんだ……?」
つい先日。マルクスが俺の元をいきなり訪れた。
そして、神妙な面持ちで「お前にしか出来ない相談がある」と言ってきたのだ。
その姿があまりにも思い詰めていたので、俺は了承。
今日、この時間に離れに来てほしいとマルクスに言った。
『お前にしか出来ない相談』ということは、他の人間には聞かれたくないことだろう。
そう思ったので、俺は気を回して使用人たちにも近寄らないようにと、指示を出した。あと、両親にも「マルクスと二人で話がしたいんだ」と言って、近寄らないようにしてもらった。
なので、この離れどころか、今、この付近には俺とマルクスしかいない。
「……あの、さ」
ティーカップをテーブルの上に置いて、俺は小首をかしげる。
そのままマルクスの真っ青な目を見つめれば、奴は露骨に視線を逸らした。
……もしかして、なにかあったのだろうか?
「俺にしか出来ない相談って、なに?」
直球だったかもしれない。が、このまま無言で見つめ合っていても、気まずいだけだ。
「……俺、マルクスのこと、この世界で一番よく理解してるって、自負してる」
産まれてからずっと、一緒だったのだ。
幼馴染とか、親友とか。それ以上の絆……みたいなのが、俺たちの間にはある。
「だからさ、なんでも、話せよ」
静かにそう促せば、マルクスが手を組んでその上に顎を置いた。
視線は下を向いており、やっぱりなにかがあったんだろう。
もしかして、騎士団のほうでなにかがあったのだろうか? それとも、恋愛関係だろうか?
(マルクス、本当にモテるからな……)
男女問わず、マルクスのファンは多い。
……恋愛未経験、交際経験ゼロの俺とは、全然違う。自分で言っていて、惨めだけれどさ。
「……ロドルフ」
「うん」
「俺が今からなにを言っても、驚かずに聞いてくれ。あと、笑わないでくれ」
「え、あ、あぁ」
笑うような要素が、あるのだろうか?
(驚かないでくれというのはともかく、笑う要素なんてあるのか……?)
俺は、大切な幼馴染の悩みを笑うつもりなんてない。けど、一応気を引き締めていよう。
その一心で気を引き締めれば、マルクスが大きく息を吐いて、顔を上げた。
「――俺、童貞なんだ」
「……は?」
だけど、さすがにその相談は予想もしていなくて。
俺は、ただぽかんとしながら間抜けな声を上げることしか出来なかった。
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