37 / 41
第3章
変わった日々 1
しおりを挟む
俺がジェムとクォーツと身体を重ねてから、数日後。俺は、特に不便や不自由もなく、こいつらと共同生活を送っていた。
「クォーツ、起きろ。零すぞ」
三人で食卓用のテーブルを囲んで、朝食を摂る。家事の類は、俺が引き受けることになった。というのも、居候の分際でなにもしないのは気が引けたのだ。……それに、どうにもこいつら生活能力低いみたいだし。
「んっ、フリント……」
クォーツの奴が、俺にもたれかかってくる。どうやらこいつは朝に弱いらしくて、未だにうとうとしている。
だけど、その手が俺の胸元に伸ばされるのに気が付いて、手をはたき落とした。
「朝から盛るな。……さっさと食べろ。こっちは後片付けがあるんだ」
近所のパン屋のパンをかじりつつ、俺はそう告げる。クォーツは、少し不満そうにしながらも食事を再開した。
「……そういえば、今日から復帰だったか」
ふと、ジェムがそう言葉を投げつけてくる。だから、俺は頷いた。
「そうだよ」
ここ数日、俺は大事を取って仕事を休んでいた。その間にすっかり薬は抜けきったらしく、調子はかなり戻ったと思う。
なので、仕事面で不安はない。ただ、唯一あるのが……。
「……気を付けろよ」
「……あぁ」
俺にあの興奮剤を盛った相手のことだった。あの日、俺はギルド職員からもらったものしか口にしていない。……つまり、職員の中に犯人がいると考えるのが妥当なのだ。
(正直、誰のことも疑いたくない)
けれど、実際俺は狙われてしまったのだ。……疑いたくないとか、そういう考えは捨てないといけないのだろう。まぁ、とにかく。
「大丈夫だ。……そこまで、心配するようなことじゃない」
パンをもう一口かじって、咀嚼して飲み込んで、そう言う。不安そうなジェムに向かって、俺は肩をすくめた。
「大体、俺だって男だ。……そう簡単には手籠めにはされない」
こいつらにとって、俺なんて華奢で男に分類されないのかもしれない。が、生物学上は男なのだ。だから、大丈夫。
「けど、不安なものは不安だ。……フリントは、こんなにも可愛いんだから」
ジェムが真顔で俺の頬に触れてくる。……くすぐったくて、身をよじった。
「あー、ずるいです。……俺も、フリントに触れたいです」
「ちょ、そういう、意味じゃあ……!」
もう片方の頬に、クォーツの指が触れる。……なんだ、このシチュエーション。
(俺が女だったら歓喜する状態だな……)
両手に花ならぬ、両手に美男子。この世の女に恨まれそうな状態だ。
そう思いつつ、俺は二人の手を振り払う。……こんなことしている暇はない。
「ほら、さっさと食ってくれ。俺はフリーの冒険者であるお前らとは違うんだ」
こいつらは気が向いたときに働けばいいかもだが、こちとら雇われの身なのだ。遅刻なんて言語道断。許されることじゃない。
「だったら、別に片付けしなくてもよくないですか? 俺らがやっときますし」
「だーめだ。お前らの片付け適当だから、二度手間になる」
クォーツの言葉にそう返す。実際、こいつらの片付けはこの世の終わりかと思えるほどに適当で。結局、俺がやり直すので二度手間なのだ。だったら、初めから自分でやるに限る。
「ふぅん。……っていうか、フリントは本当にいいお嫁さんになりそうですよね。……結婚しませんか?」
「お前、真顔でそう言われると本気なのか冗談なのか判断つかないんだけれど……」
頬を引きつらせつつ、クォーツの言葉に返事をする。奴は「本気ですけれど」ときょとんとしつつ言っていた。
なんだろうか。こいつって、素の天然なんだよな。肉食系で、行為のときはとんでもない雄みたいな感じだけれど。
(って、こんなこと思うなんてばかばかしい……)
雄のクォーツの顔が頭の中に浮かんで、それを振り払うように首を横に振った。
……そうじゃないと、なんだか身体がおかしくなってしまいそうだったから。
「クォーツ、起きろ。零すぞ」
三人で食卓用のテーブルを囲んで、朝食を摂る。家事の類は、俺が引き受けることになった。というのも、居候の分際でなにもしないのは気が引けたのだ。……それに、どうにもこいつら生活能力低いみたいだし。
「んっ、フリント……」
クォーツの奴が、俺にもたれかかってくる。どうやらこいつは朝に弱いらしくて、未だにうとうとしている。
だけど、その手が俺の胸元に伸ばされるのに気が付いて、手をはたき落とした。
「朝から盛るな。……さっさと食べろ。こっちは後片付けがあるんだ」
近所のパン屋のパンをかじりつつ、俺はそう告げる。クォーツは、少し不満そうにしながらも食事を再開した。
「……そういえば、今日から復帰だったか」
ふと、ジェムがそう言葉を投げつけてくる。だから、俺は頷いた。
「そうだよ」
ここ数日、俺は大事を取って仕事を休んでいた。その間にすっかり薬は抜けきったらしく、調子はかなり戻ったと思う。
なので、仕事面で不安はない。ただ、唯一あるのが……。
「……気を付けろよ」
「……あぁ」
俺にあの興奮剤を盛った相手のことだった。あの日、俺はギルド職員からもらったものしか口にしていない。……つまり、職員の中に犯人がいると考えるのが妥当なのだ。
(正直、誰のことも疑いたくない)
けれど、実際俺は狙われてしまったのだ。……疑いたくないとか、そういう考えは捨てないといけないのだろう。まぁ、とにかく。
「大丈夫だ。……そこまで、心配するようなことじゃない」
パンをもう一口かじって、咀嚼して飲み込んで、そう言う。不安そうなジェムに向かって、俺は肩をすくめた。
「大体、俺だって男だ。……そう簡単には手籠めにはされない」
こいつらにとって、俺なんて華奢で男に分類されないのかもしれない。が、生物学上は男なのだ。だから、大丈夫。
「けど、不安なものは不安だ。……フリントは、こんなにも可愛いんだから」
ジェムが真顔で俺の頬に触れてくる。……くすぐったくて、身をよじった。
「あー、ずるいです。……俺も、フリントに触れたいです」
「ちょ、そういう、意味じゃあ……!」
もう片方の頬に、クォーツの指が触れる。……なんだ、このシチュエーション。
(俺が女だったら歓喜する状態だな……)
両手に花ならぬ、両手に美男子。この世の女に恨まれそうな状態だ。
そう思いつつ、俺は二人の手を振り払う。……こんなことしている暇はない。
「ほら、さっさと食ってくれ。俺はフリーの冒険者であるお前らとは違うんだ」
こいつらは気が向いたときに働けばいいかもだが、こちとら雇われの身なのだ。遅刻なんて言語道断。許されることじゃない。
「だったら、別に片付けしなくてもよくないですか? 俺らがやっときますし」
「だーめだ。お前らの片付け適当だから、二度手間になる」
クォーツの言葉にそう返す。実際、こいつらの片付けはこの世の終わりかと思えるほどに適当で。結局、俺がやり直すので二度手間なのだ。だったら、初めから自分でやるに限る。
「ふぅん。……っていうか、フリントは本当にいいお嫁さんになりそうですよね。……結婚しませんか?」
「お前、真顔でそう言われると本気なのか冗談なのか判断つかないんだけれど……」
頬を引きつらせつつ、クォーツの言葉に返事をする。奴は「本気ですけれど」ときょとんとしつつ言っていた。
なんだろうか。こいつって、素の天然なんだよな。肉食系で、行為のときはとんでもない雄みたいな感じだけれど。
(って、こんなこと思うなんてばかばかしい……)
雄のクォーツの顔が頭の中に浮かんで、それを振り払うように首を横に振った。
……そうじゃないと、なんだか身体がおかしくなってしまいそうだったから。
2
お気に入りに追加
1,628
あなたにおすすめの小説
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
【R18】元騎士団長(32)、弟子として育てていた第三王子(20)をヤンデレにしてしまう
夏琳トウ(明石唯加)
BL
かつて第三王子ヴィクトールの剣術の師をしていたラードルフはヴィクトールの20歳を祝うパーティーに招待された。
訳あって王都から足を遠ざけていたラードルフは知らない。
この日がヴィクトールの花嫁を選ぶ日であるということを。ヴィクトールが自身に重すぎる恋慕を向けているということを――。
ヤンデレ王子(20)×訳あり元騎士団長(32)の歪んだ師弟ラブ。
■掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ
【R18】俺のセフレはどうやら王国で人気の高い騎士団長らしい。
夏琳トウ(明石唯加)
BL
実家は没落した男爵家。現在は王都にある花屋のアルバイト。
そんな経歴を持つユーグには、関係を持って3年になるセフレがいる。
出逢いは偶然。関係を持ったのも、偶然。後腐れのない身体だけの関係。
どうやら彼「ルー」は訳ありらしく、いつも顔を隠すような恰好をしていた。しかも、名前もどうやら偽名のようだ。
けれど、一緒にいて楽なことからユーグはルーとセフレの関係を続けていたのだが……。
ひょんなことからルーの正体を知る羽目に陥った。しかも、彼がまさか王国内での人気が高い騎士団長セザールだったなんて!?
「ユーグ。結婚しよう」
彼はそう言ってくるが、これは所詮後腐れのない身体だけの関係。だから、責任を取る必要なんてこれっぽっちもなくて……。
セフレ関係の中で想いを寄せるようになった騎士団長(27)×自分に自信のない没落貴族の息子(21)
二人の拗らせた気持ちの行く末は――……!?
◇hotランキング 最高27位ありがとうございます♡
▼掲載先→アルファポリス、エブリスタ、BLove、ムーンライトノベルズ
【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う
R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす
結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇
2度目の人生、異世界転生。
そこは生前自分が読んでいた物語の世界。
しかし自分の配役は悪役令息で?
それでもめげずに真面目に生きて35歳。
せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。
気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に!
このままじゃ物語通りになってしまう!
早くこいつを家に帰さないと!
しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。
「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」
帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。
エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。
逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。
このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。
これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。
「アルフィ、ずっとここに居てくれ」
「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」
媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。
徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。
全8章128話、11月27日に完結します。
なおエロ描写がある話には♡を付けています。
※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。
感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる