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第2章

見知らぬ部屋 6

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 ジェムの視線がいたたまれない。そう思って俺が視線を逸らす。が、クォーツは特に狼狽えていないようだった。

「あ、ジェムも混ざりますか?」

 しかしまぁ、そんなこと言わないでほしい。普通に勘弁してほしい。だって、そんなことされたら俺の身体が本当に持たない……!

「馬鹿を言うな。とりあえず、フリントを離せ」

 いつの間にかクォーツが俺の身体をぎゅうぎゅうと抱きしめていた。ジェムはこちらに近づいてくると、俺の身体をクォーツから引きはがしてくれる。クォーツの奴は、一人不満そうな表情をしていた。

「大体、昨日あれだけ抱いておいて、お前は朝から盛っていたのか……」
「だって、ですねぇ」

 クォーツに向けるジェムの視線は、冷たい。絶対零度と言っても過言じゃないかもしれない。……この状態でダンジョンに行ったら、大けがをしてくるであろうレベルの喧嘩だ。

「俺のはフリントを見たら興奮するんです。……ほら、勃ってるでしょ?」

 堂々と自身の下半身を晒すクォーツ。……ダメだ、変質者だ。同性しかいないとはいえ、隠してほしい。

 しかも、そんな勃ち上がったものなんて、人に見せるものじゃない。

「どうでもいい。下半身を隠せ。ついでにいえば、もうここから出ていけ」
「えぇ~」

 正論なのに、クォーツは不満そうだった。まぁ、後半は言い過ぎ……かも、しれないけれどさ。

(いや、俺からすれば同じ部屋にいるだけでヤバいんだけれど……)

 いつ襲われるかわからない以上、同じ部屋にはいたくない。頭の中でそんな考えが思い浮かんで、頬が引きつる。クォーツは、額を押さえていた。

「でも、フリントに慰めてもらわないと辛いんですけれど……」
「そんなもの一人で処理してこい。別にナカに出す必要はない」

 ゆるゆると首を横に振りながらジェムがそう続けていた。……正論だ。とても正論だ。

 ……だけど、ナカに出すという言葉を聞いて、さぁーっと俺の顔から血の気が引く。

(男がナカに出されたら、腹壊すんだっけ……?)

 っていうことは、俺はこの後腹を壊すということで……。普通に勘弁してほしい。なんとか、掻きだしてほしい。

 ……かといって、それを言うことは憚られた。

「ほら、クォーツ、さっさと処理してきて着替えてこい。……飯、買ってきたから」
「はぁい」

 俺が一人考えを巡らせていると、どうやら二人の会話は終わったらしい。クォーツが部屋を出ていく。もちろん、スラックスや下穿きを履き直していることはない。下半身は丸出しである。

「悪いな。……あいつには、常識というものがないんだ」
「ははは……」

 クォーツが出て行ってすぐに、ジェムがそう告げてくる。俺は、乾いた笑いを零すことしか出来なかった。

「とりあえず、なにか疑問はあるか? あるのならば、あいつがいないうちに答えておくが」
「……まぁ、クォーツがいたら疑問の解消どころじゃないか……」

 ぽつりと俺がそう言葉を零せば、ジェムが頷いていた。……さすがは長年の付き合いというべきか。クォーツのことはなんでも知っているみたいだ。

「……えっと、だな……」

 まず、頭の中を整理しよう。クォーツやジェムの態度からするに、翌日になっている……はず、である。

 ……っていうか、翌日っていうことは。

「え、えぇっと、俺は、無断欠勤扱いに……」

 昨日だって最後まで仕事できていない。合わせ、今日もここにいるということは、無断欠勤扱い……の、はずだ。そもそも、今日は早番だったし。

(無断欠勤は、なにか直接的なデメリットがあるというよりも評価が落ちるんだよな……)

 つまり、今後の出世に関わる。間接的に、デメリットがあるということ。

「あぁ、その点は心配するな」

 だが、俺の言葉にジェムが淡々と返してきた。……俺が驚いて奴の顔を見つめていれば、奴は「連絡はいれてある」と淡々と答えた。……え。
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