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第2章

不可抗力で 5【※】

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「フリント」

 ジェムが俺の名前を呼ぶ。でも、怖いものは怖い。いくら興奮剤か媚薬で身体が昂っていても、恐ろしいものは恐ろしいのだ。

「……ぁ、むり、だっ!」

 ぶんぶんと駄々っ子のように頭を横に振る。すると、ジェムは俺の後孔から指を引き抜いた。……ほっとしたのもつかの間、ジェムが俺の身体に背後から覆いかぶさってくる。

「力を抜けるようにしてやる」

 奴はそう言って――俺の耳朶を甘噛みした。瞬間、俺の身体がびくんと跳ねる。さらには、耳の孔に息を吹きかけてきて……身体中の熱が先ほど以上に昂っていく。

「……う、ぁっ」

 女のような、甲高い嬌声だった。その嬌声に嫌気がさす。でも、我慢することは出来ない。

「ぁっ、うぁ」

 ジェムが俺の耳を舐めて、その手で腰を撫でる。頭をずらして逃れようとするのに、逃れられない。

「……ジェムに集中しないでください。……やきもち、妬いちゃいそう」
「ぁああっ」

 いきなり陰茎をしごかれて、我慢しきれずに声が漏れる。視線を下に向ければ、クォーツの奴が俺の陰茎を手で弄っていた。

 先端の鈴口を弄られて、先走りがまたあふれ出る。

「くぉー、つ」

 俺の顔を見上げるクォーツの目を、見つめる。やっぱり、欲情している。嫌というほどに、それを実感させられた。

「ほら、また出してください。……こっちに、意識を集中させて」
「ぁあっ」

 クォーツの手が上下に動くたびに、俺の身体が情けなくも跳ねる。合わせ、俺の後孔に触れるごつごつとした指。……もう、抵抗するなんてこと考えられない。

「うぁあっ! んんっ!」

 後孔を弄られている気持ち悪さは、まだある。けれど、先ほどよりはマシだった。多分、陰茎を弄られているからだろう。俺の意識がそちらに集中している所為で、後孔から気を逸らすことが出来た。

「ぁあ」

 クォーツの肩にまた爪を強く食い込ませた。剣士というだけはあり、クォーツの身体はがっしりとしており、俺が全体重をかけてもびくともしない。クォーツの目は、余裕と情欲が混ざり合ってドロドロになったような感情が宿っている。

「あぁ、指挿ったな。……今から、動かすぞ」

 俺の後ろからジェムがそう囁く。それとほぼ同時に、後孔に挿った指が動き始めた。ぬるついた潤滑油のおかげなのか、そこまで痛くはない。確かな異物感はあるのだが。

「熱いな……。しかも、締め付けてる」
「言うなぁっ……!」

 またぶんぶんと頭を横に振る。ジェムは俺のその態度を特に気に留めず、俺の後孔に指を出し入れする。

 ぐちゅぐちゅという水音を立てながら、ジェムが俺の後孔をかき回す。……おかしくなりそうだ。

「ぁああっ、んっ」
「今、びくんと反応したな」
「えぇ、俺にも分かりました」

 俺の身体の些細な変化を敏感に感じ取って、二人が容赦なく俺の快楽を引き出そうとする。

 ……悔しいほどに、感じている。

「指、増やすぞ」

 惚けた頭は、後ろから囁かれるその言葉の意味を上手く理解できない。言葉の意味を理解できたのは、後孔が咥えこむ指の質感が増えたときだった。

(うぁ……なんだ、気持ちいぃ……)

 身体のナカを容赦なく弄られているのに、気持ちいい。陰茎を弄られているのも気持ちいいけれど、後ろでも感じているような気がしてきた。

「っはぁ、あぁっ」
「あぁ、可愛い。……教えてください。……今、どっちで感じてます?」

 クォーツが、端的にそう問いかけてくる。そんなこと、言えるわけがない。こいつらだって、それくらい理解しているだろうに。

「前? それとも後ろ? ……ね、聞かせてくださいよ」

 そんな風に甘えたように言われたらっ……! 頭の奥がくらくらとして、理性を弾き飛ばそうとする。

 このまま快楽に身を委ねて、思いきり気持ちよくなりたい。

「……ぁあっ」
「フリント、クォーツに言ってやれ」

 ジェムが指を動かしながら、そう言ってくる。口元から、よだれが垂れているのが自分でもわかった。

「後ろか? 前か?」

 俺の防壁を決壊させるように、ジェムがそう囁く。助けを求めようにも、この場には俺たち三人しかいない。

「ぁあっ」

 ジェムの指が折り曲げられたのがわかった。目の奥がちかちかとして、本当におかしくなる。……むしろ、もうおかしいのかもしれない。
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