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第4章
作戦会議
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その後、シャノンは革命軍の拠点に戻ってきた。
そこでは見知った顔が作戦会議を行っており、誰もが真剣な面持ちだ。
しかし、シャノンが戻ってきたことに気が付いてか、彼らはホッと胸をなでおろしていた。
「シャノン嬢。……大丈夫でしたかい?」
一人の男性がそう問いかけてくる。なので、シャノンは笑った。少し、ぎこちない笑みだったかもしれないが。
「えぇ、大丈夫。……親切な人に、匿ってもらったの」
「……親切な人なんて、王国軍に居ないでしょう」
女性の一人が怪訝そうにそう声を上げた。確かに、王国軍は民たちを虐げ、圧政を敷く人たちだ。
シャノンだって、ニールに出逢い、惹かれるまでは彼女と同意見だった。
「……いえ、いらっしゃったの。……だから、私、一つの提案をしたくて」
はっきりとシャノンがそう告げると、周囲にぴりりとした緊張が走った。
なので、シャノンは革命軍の面々を見渡す。……ここにいるのは、この国の王族たちによって大切な人を傷つけられた人たちだ。
……シャノンだって、同じなのだから。
(お母様を奪われた。フェリクス殿下を奪われた。……だから、私にはみんなの気持ちがよくわかる)
でも、そのうえで――ニールのことを、助けたいと思ってしまった。
「お父様、お願いがあります」
ジョナスに向き合い、シャノンがそんな言葉を口にする。ジョナスは驚いたように眉を上げたが、すぐに頷いてくれた。
「聞くだけ、聞こうか」
どうやら、詳しい判断はシャノンのお願いを聞いてからにするらしい。それが、正しい判断だ。
(お話を一刀両断する前に聞いてくださるだけ、お優しいわ)
心の中でそう思い、シャノンはぐっと手のひらを握った。
「――王国軍の将軍、ニール・スレイド様を助けていただきたいのです」
ぎゅっと握った手のひらが、痛い。けれど、言わなくちゃならないと思った。だから、その言葉を口にした。
シャノンのお願いを聞いてか、周囲の人間たちがざわめく。
「……シャノン、どういうことだ」
ジョナスのその鋭い目がさらに細められる。その迫力に若干押されつつも、シャノンは自らの気持ちを伝えることにした。
「私は、王国軍に監禁されておりました」
「……あぁ」
「ですが、好待遇だったのです。地下牢に閉じ込められることもなく、屋敷の一室にいるようにと命じられました」
「……そうか」
ジョナスの目の迫力が、ほんの少しだけ緩んだ。……今ならば、向き合ってくれる。
「そう、国王に進言してくださったのが将軍のニール様だったのです」
「だから、シャノンはその男に恩を返したいと言うのか?」
厳しい声音で問いかけられる。怯んでしまいそうになりながらも、シャノンはこくんと首を縦に振った。
……本当は恩を返すためじゃない。
彼に惹かれているから。彼と一緒になりたいから。半分以上、シャノンの下心なのだ。
「呆れたな。……いつからお前はそんなお人好しになったんだ」
「……お父様」
ジョナスはそれだけの言葉を残すと、拠点の奥へと入っていく。……やはり、ダメなのだろう。
「……ねぇ、シャノン嬢」
シャノンが俯いて唇を震わせていると、一人の女性がそう声をかけてきた。そのため、シャノンは彼女の顔を見つめる。
彼女は、恋人を殺された。だから革命軍に参加していると言っていた。強かで、ただでは転ばない性格の強い女性だ。
「……はい」
「あなた、多分そのニール・スレイドっていう男が、好きでしょ?」
「……え」
どうして、それがわかったのだろうか。
そう思って目をぱちぱちと瞬かせていれば、女性はウィンクを飛ばしてきた。
「顔が、恋する乙女みたいになっているのよ」
肩をすくめた彼女が、シャノンの頬をつつく。その指先は荒れており、戦いの壮絶さを表しているかのようだった。
「マレット伯もね、シャノン嬢の言ったことを無下にしているわけじゃないと思うんだよ」
「どう、いう」
「娘を取られそうで、拗ねちゃっているのよ」
けらけらと笑いながら、女性がそう言う。
だからこそ、シャノンは大きく目を見開いてしまった。
「可愛がってきた娘が、ほかの男に取られちゃう。親なら、特に男親ならきっとみんなそう思うよ」
「……じゃあ」
「うん、マレット伯はシャノン嬢の言葉を、ある程度は理解してくれていると思うよ」
もしも本当にそうなのだとすれば、ニールが助かる可能性だってある。
(……ニール様)
自身の唇をなぞりながら、シャノンは彼のことを心の中で呼んだ。傲慢で、嫌な男だと思った。でも、それ以上に彼は優しくて――素敵だった。
(どうか、待っていてください。……もう二度と会わないなんて、おっしゃらないで)
心の中でシャノンがそう思っていたとき。ふと拠点のちっぽけな扉が開いた。
そして、そこにいたのは――革命軍の一人である、キースという男。
「シャノン! よかった、無事だったのか……!」
彼はシャノンの顔を見て、ずたずたと大股で歩いて来て――その華奢な身体を抱きしめてきた。
そこでは見知った顔が作戦会議を行っており、誰もが真剣な面持ちだ。
しかし、シャノンが戻ってきたことに気が付いてか、彼らはホッと胸をなでおろしていた。
「シャノン嬢。……大丈夫でしたかい?」
一人の男性がそう問いかけてくる。なので、シャノンは笑った。少し、ぎこちない笑みだったかもしれないが。
「えぇ、大丈夫。……親切な人に、匿ってもらったの」
「……親切な人なんて、王国軍に居ないでしょう」
女性の一人が怪訝そうにそう声を上げた。確かに、王国軍は民たちを虐げ、圧政を敷く人たちだ。
シャノンだって、ニールに出逢い、惹かれるまでは彼女と同意見だった。
「……いえ、いらっしゃったの。……だから、私、一つの提案をしたくて」
はっきりとシャノンがそう告げると、周囲にぴりりとした緊張が走った。
なので、シャノンは革命軍の面々を見渡す。……ここにいるのは、この国の王族たちによって大切な人を傷つけられた人たちだ。
……シャノンだって、同じなのだから。
(お母様を奪われた。フェリクス殿下を奪われた。……だから、私にはみんなの気持ちがよくわかる)
でも、そのうえで――ニールのことを、助けたいと思ってしまった。
「お父様、お願いがあります」
ジョナスに向き合い、シャノンがそんな言葉を口にする。ジョナスは驚いたように眉を上げたが、すぐに頷いてくれた。
「聞くだけ、聞こうか」
どうやら、詳しい判断はシャノンのお願いを聞いてからにするらしい。それが、正しい判断だ。
(お話を一刀両断する前に聞いてくださるだけ、お優しいわ)
心の中でそう思い、シャノンはぐっと手のひらを握った。
「――王国軍の将軍、ニール・スレイド様を助けていただきたいのです」
ぎゅっと握った手のひらが、痛い。けれど、言わなくちゃならないと思った。だから、その言葉を口にした。
シャノンのお願いを聞いてか、周囲の人間たちがざわめく。
「……シャノン、どういうことだ」
ジョナスのその鋭い目がさらに細められる。その迫力に若干押されつつも、シャノンは自らの気持ちを伝えることにした。
「私は、王国軍に監禁されておりました」
「……あぁ」
「ですが、好待遇だったのです。地下牢に閉じ込められることもなく、屋敷の一室にいるようにと命じられました」
「……そうか」
ジョナスの目の迫力が、ほんの少しだけ緩んだ。……今ならば、向き合ってくれる。
「そう、国王に進言してくださったのが将軍のニール様だったのです」
「だから、シャノンはその男に恩を返したいと言うのか?」
厳しい声音で問いかけられる。怯んでしまいそうになりながらも、シャノンはこくんと首を縦に振った。
……本当は恩を返すためじゃない。
彼に惹かれているから。彼と一緒になりたいから。半分以上、シャノンの下心なのだ。
「呆れたな。……いつからお前はそんなお人好しになったんだ」
「……お父様」
ジョナスはそれだけの言葉を残すと、拠点の奥へと入っていく。……やはり、ダメなのだろう。
「……ねぇ、シャノン嬢」
シャノンが俯いて唇を震わせていると、一人の女性がそう声をかけてきた。そのため、シャノンは彼女の顔を見つめる。
彼女は、恋人を殺された。だから革命軍に参加していると言っていた。強かで、ただでは転ばない性格の強い女性だ。
「……はい」
「あなた、多分そのニール・スレイドっていう男が、好きでしょ?」
「……え」
どうして、それがわかったのだろうか。
そう思って目をぱちぱちと瞬かせていれば、女性はウィンクを飛ばしてきた。
「顔が、恋する乙女みたいになっているのよ」
肩をすくめた彼女が、シャノンの頬をつつく。その指先は荒れており、戦いの壮絶さを表しているかのようだった。
「マレット伯もね、シャノン嬢の言ったことを無下にしているわけじゃないと思うんだよ」
「どう、いう」
「娘を取られそうで、拗ねちゃっているのよ」
けらけらと笑いながら、女性がそう言う。
だからこそ、シャノンは大きく目を見開いてしまった。
「可愛がってきた娘が、ほかの男に取られちゃう。親なら、特に男親ならきっとみんなそう思うよ」
「……じゃあ」
「うん、マレット伯はシャノン嬢の言葉を、ある程度は理解してくれていると思うよ」
もしも本当にそうなのだとすれば、ニールが助かる可能性だってある。
(……ニール様)
自身の唇をなぞりながら、シャノンは彼のことを心の中で呼んだ。傲慢で、嫌な男だと思った。でも、それ以上に彼は優しくて――素敵だった。
(どうか、待っていてください。……もう二度と会わないなんて、おっしゃらないで)
心の中でシャノンがそう思っていたとき。ふと拠点のちっぽけな扉が開いた。
そして、そこにいたのは――革命軍の一人である、キースという男。
「シャノン! よかった、無事だったのか……!」
彼はシャノンの顔を見て、ずたずたと大股で歩いて来て――その華奢な身体を抱きしめてきた。
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