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第3章
真意は?
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そう思っていれば、ニールに手を引かれ食卓テーブルの方に連れていかれる。
そして、ニールはなんてことない風に「食べるぞ」と声をかけてきた。
「……あの」
どうして、彼は回答をくれないのだろうか?
心の中でそう思い、シャノンは小首をかしげた。その後、ニールに向かって手を伸ばそうとする。
……その手は、彼に掴まれてしまう。が、すぐに解放された。
「それ以上のことは、聞くな。そのことについて、今の俺は回答できない」
淡々とそう言った彼は、食事に手を付け始めてしまった。
これは、きっと今は教えてくれないということなのだろう。
それを悟り、シャノンはこくりと首を縦に振る。
(でも、いつかは教えてくださるはずよ)
どうして、シャノンがニールを無視できないのか。嫌いになれないのか。
もしかしたら、それは――ニールがあまりにもフェリクスにそっくりだからなのかもしれない。
顔だけじゃない。姿だけじゃない。性格も、声も、口調も。まるで、彼が生きていたらこうなったかのような。
そんな雰囲気を、孕んでいるからなのだ。
「……なぁ、シャノン」
ふと、ニールが声をかけてきた。その言葉にきょとんとし、シャノンが彼に視線を向ける。
すると、彼は「ふぅ」と息を吐いた。
「もうすぐ、この王国は滅ぶだろうよ」
「……え」
いきなりの話題の転換に、シャノンが驚いた声を上げる。しかも、彼は「この国は滅ぶ」と言った。
革命軍が言うのならば、おかしな言葉ではない。しかし、彼は王国軍の人間だ。……そんなこと、言うわけがないと思った。
「そもそも、こうなるのも時間の問題だった。……俺は、そう思っている」
「そ、そう……」
ニールの言葉は間違いない。このジェフリー王国の王族は傲慢で強欲で。民衆を人とは思わない人間だった。
だから、時間の問題であることも、正解なのだ。
「お前の父親は、きっとお前を取り戻そうとしている」
「……そう、でしょうね」
「もしかしたら、それが革命軍の士気を上げているのかもな」
そう言ったニールは、笑っていた。けれど、その笑みは自虐的なものだった。
その表情から、シャノンは目が離せなくなる。
「だから、もうすぐお前はここから出られるよ。……俺が、保証してやる」
彼の手が、シャノンの頭を優しく撫でる。傷まみれの手は、彼が戦ってきた証なのだろう。
(……ニール様は、どうして王国軍にいらっしゃるの?)
今まで関わってきて、シャノンは確信した。……彼は、悪い人じゃない。むしろ、いい人の部類だ。
だからこそ、彼が王国軍として戦う意味がわからない。
(もしかして、大切な人を人質に取られているとか……?)
その可能性は、ゼロじゃない。
「ね、ねぇ、ニール様。……あの」
口を開こうとして、言葉に詰まってしまった。それは、彼があまりにも真剣な目をしていたからだ。
彼が真剣な目でシャノンを見つめ、唇を開いた。
「俺はもう、お前と会うことはないだろうな」
「……そ、れは」
彼の言葉が、残酷な真実を突きつけてくる。確かに、シャノンがここから出れば彼との縁は切れる。そして、彼と会うことは出来なくなってしまう。
シャノンの胸に芽生えたこの気持ちが、恋なのかどうかは分からない。ただ、彼を愛おしく思っている。
これはきっと、看病してくれたことも関係しているのだ。
「お前が出たらな、俺はお前の父親に伝えてほしいことがあるんだ」
「……どうして、ですか?」
「そりゃあ、俺が革命軍のアジトに行くことは出来ないからな」
にんまりと笑いながら、ニールがそう言う。なのに、彼のその目はひどく寂しそうで。
シャノンの胸がぎゅっと締め付けられるような感覚だった。
「――この革命の責任は、王家の責任は、全部俺が取る。始末する。そう、伝えてくれ」
彼の発した言葉の意味が、分からない。
真意を問いかけたい。シャノンの胸に、そんな感情が芽生えてくる。
「俺は、この王国を終わらせる。……どうか、伝えてくれ」
「それはっ……!」
――彼の言っていることは、どういう意味なの?
シャノンの頭が混乱して、上手く答えを導き出してくれない。
シャノンが無意識のうちにニールに手を伸ばす。もしも、ここで手を伸ばさなかったら――彼が、消えてしまうような気がしたのだ。
「シャノン」
優しく名前を呼ばれた。……今までシャノンが聞いてきた彼の声の中で、一番優しげな声。何よりも――ただ、愛おしいと。そう言いたげな声だった。
「少しの間だけでも、お前と過ごせてよかったよ。……俺の人生の中で、二番目に幸せな時間だった」
彼の言葉はまるで――これから死を覚悟しているかのような言葉だ。
胸の奥が、ちくちくと痛む。
「この戦いが終わったら、お前はほかの奴のものだ。けどさ、お前の記憶の中に俺が残るんだったら、それは悪くないな」
どうして、どうして――。
「そんなこと、おっしゃるんですかっ……!」
シャノンの目から、自然とぽろぽろと涙が零れた。
そして、ニールはなんてことない風に「食べるぞ」と声をかけてきた。
「……あの」
どうして、彼は回答をくれないのだろうか?
心の中でそう思い、シャノンは小首をかしげた。その後、ニールに向かって手を伸ばそうとする。
……その手は、彼に掴まれてしまう。が、すぐに解放された。
「それ以上のことは、聞くな。そのことについて、今の俺は回答できない」
淡々とそう言った彼は、食事に手を付け始めてしまった。
これは、きっと今は教えてくれないということなのだろう。
それを悟り、シャノンはこくりと首を縦に振る。
(でも、いつかは教えてくださるはずよ)
どうして、シャノンがニールを無視できないのか。嫌いになれないのか。
もしかしたら、それは――ニールがあまりにもフェリクスにそっくりだからなのかもしれない。
顔だけじゃない。姿だけじゃない。性格も、声も、口調も。まるで、彼が生きていたらこうなったかのような。
そんな雰囲気を、孕んでいるからなのだ。
「……なぁ、シャノン」
ふと、ニールが声をかけてきた。その言葉にきょとんとし、シャノンが彼に視線を向ける。
すると、彼は「ふぅ」と息を吐いた。
「もうすぐ、この王国は滅ぶだろうよ」
「……え」
いきなりの話題の転換に、シャノンが驚いた声を上げる。しかも、彼は「この国は滅ぶ」と言った。
革命軍が言うのならば、おかしな言葉ではない。しかし、彼は王国軍の人間だ。……そんなこと、言うわけがないと思った。
「そもそも、こうなるのも時間の問題だった。……俺は、そう思っている」
「そ、そう……」
ニールの言葉は間違いない。このジェフリー王国の王族は傲慢で強欲で。民衆を人とは思わない人間だった。
だから、時間の問題であることも、正解なのだ。
「お前の父親は、きっとお前を取り戻そうとしている」
「……そう、でしょうね」
「もしかしたら、それが革命軍の士気を上げているのかもな」
そう言ったニールは、笑っていた。けれど、その笑みは自虐的なものだった。
その表情から、シャノンは目が離せなくなる。
「だから、もうすぐお前はここから出られるよ。……俺が、保証してやる」
彼の手が、シャノンの頭を優しく撫でる。傷まみれの手は、彼が戦ってきた証なのだろう。
(……ニール様は、どうして王国軍にいらっしゃるの?)
今まで関わってきて、シャノンは確信した。……彼は、悪い人じゃない。むしろ、いい人の部類だ。
だからこそ、彼が王国軍として戦う意味がわからない。
(もしかして、大切な人を人質に取られているとか……?)
その可能性は、ゼロじゃない。
「ね、ねぇ、ニール様。……あの」
口を開こうとして、言葉に詰まってしまった。それは、彼があまりにも真剣な目をしていたからだ。
彼が真剣な目でシャノンを見つめ、唇を開いた。
「俺はもう、お前と会うことはないだろうな」
「……そ、れは」
彼の言葉が、残酷な真実を突きつけてくる。確かに、シャノンがここから出れば彼との縁は切れる。そして、彼と会うことは出来なくなってしまう。
シャノンの胸に芽生えたこの気持ちが、恋なのかどうかは分からない。ただ、彼を愛おしく思っている。
これはきっと、看病してくれたことも関係しているのだ。
「お前が出たらな、俺はお前の父親に伝えてほしいことがあるんだ」
「……どうして、ですか?」
「そりゃあ、俺が革命軍のアジトに行くことは出来ないからな」
にんまりと笑いながら、ニールがそう言う。なのに、彼のその目はひどく寂しそうで。
シャノンの胸がぎゅっと締め付けられるような感覚だった。
「――この革命の責任は、王家の責任は、全部俺が取る。始末する。そう、伝えてくれ」
彼の発した言葉の意味が、分からない。
真意を問いかけたい。シャノンの胸に、そんな感情が芽生えてくる。
「俺は、この王国を終わらせる。……どうか、伝えてくれ」
「それはっ……!」
――彼の言っていることは、どういう意味なの?
シャノンの頭が混乱して、上手く答えを導き出してくれない。
シャノンが無意識のうちにニールに手を伸ばす。もしも、ここで手を伸ばさなかったら――彼が、消えてしまうような気がしたのだ。
「シャノン」
優しく名前を呼ばれた。……今までシャノンが聞いてきた彼の声の中で、一番優しげな声。何よりも――ただ、愛おしいと。そう言いたげな声だった。
「少しの間だけでも、お前と過ごせてよかったよ。……俺の人生の中で、二番目に幸せな時間だった」
彼の言葉はまるで――これから死を覚悟しているかのような言葉だ。
胸の奥が、ちくちくと痛む。
「この戦いが終わったら、お前はほかの奴のものだ。けどさ、お前の記憶の中に俺が残るんだったら、それは悪くないな」
どうして、どうして――。
「そんなこと、おっしゃるんですかっ……!」
シャノンの目から、自然とぽろぽろと涙が零れた。
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