【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

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第二章

からかわないで!

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 それに驚きマーガレットが目を見開けば、クローヴィスはマーガレットの上から退く。

「ごめんごめん。ちょっと、からかってみたんだよ」

 その後、クローヴィスはやれやれといった風に手を挙げ、マーガレットのことを見つめる。

 だからこそ、マーガレットは顔を一気に赤くして――……。

「最低!」

 思わず、そう叫んでしまった。

 しかし、その言葉はクローヴィスには通じなかったらしく、彼はニコニコと笑いながら「マーガレットだって、乗り気だったでしょ?」と言いながら肩をすくめる。

(の、乗り気だなんて……)

 確かに、口づけで身体が火照り始めていたことは認める。けれど、それは決して乗り気だったわけではない。

 そんな風に思うものの、きっと今のマーガレットには説得力などないだろう。顔を真っ赤にし、目を潤ませたマーガレットの姿は男性の欲情を煽ってしまうだけなのだ。

 その証拠に、クローヴィスは「……ごめん、からかいすぎた」と言って額を押さえてしまった。

「……旦那様?」
「今のマーガレットの姿、ちょっと、いろいろとクる」

 真剣な声音でそう言われ、マーガレットはさらに顔を真っ赤にしてしまった。

「最低! 変態!」

 もうこうなったら容赦なんてしない。そう思いマーガレットがクローヴィスの胸をぽかぽかとたたいていれば、彼は「ごめんってば」と言いながらマーガレットの背を撫でてくる。

(――本当に最低! 変態! このあほ!)

 内心でクローヴィスを罵倒しながら、マーガレットは彼の顔を見つめる。すると、彼の表情は何処となく嬉しそうに緩んでいた。

(まさか、罵られて悦ぶ人⁉)

 一瞬そう思ったマーガレットの気持ちが伝わったのか、彼は「マーガレットが、俺と一線を引かなくなったみたいで嬉しいんだよ」と言いながらふんわりと笑う。

「……ぁ」
「容赦なく俺を罵って、楽しそうにぽかぽかたたいてきて。……可愛いなぁって」

 その後、クローヴィスはマーガレットの唇に触れるだけの口づけを施す。それに驚いて顔を背けようとするものの、クローヴィスに手で頬を挟まれてしまい逃げるに逃げられない。

「ちょっ!」

 クローヴィスの手がマーガレットの髪の毛を梳く。その優しい手つきにぼうっとしてしまえば、個室の扉がノックされた。

「あぁ、どうぞ」

 まるで何もなかったかのようにのんきに返事をするクローヴィスを内心恨めしく思いながらマーガレットも席に座る。

 すると、顔を出したのは中年の男性だった。彼はマーガレットのことを見るとぱぁっと顔を明るくし、「旦那様もついに奥様を……!」と言う。

「……マーク。心配かけたな」
「本当にそうでございますよ!」

 マークと呼ばれた男性はクローヴィスの方に近づくと深々と礼をする。そして、マーガレットに視線を向け「マークと申します」と自己紹介をしてくれた。

「以前はオルブルヒ公爵家で料理長を務めておりました」
「……マーガレット・オルブルヒです」

 軽く会釈をしてそう自己紹介をすれば、マークは「なんと素晴らしい奥様でしょうか!」と感激とばかりに手をパンっとたたく。

「本日はせっかくですし、旦那様の結婚祝いとしましょうか」
「……いいのか?」
「えぇ、おかげさまで繁盛しておりますので。もう少々お待ちくださいませ」

 マークはそれだけを告げるときびきびとした動きで個室を出て行く。

 その後ろ姿を呆然とマーガレットが見つめていると、不意に後ろから抱きしめられてしまう。……その手は、間違いなくクローヴィスのものだ。

「……旦那様?」

 ゆっくりと彼のことを呼べば、彼は「嫉妬した」とむすっとしたような声で告げてくる。

「し、嫉妬って……」
「ほら、俺、どうにも嫉妬深いみたいだからさ」

 マーガレットの身体を抱きしめながらクローヴィスはそういう。……嫉妬深い。それは、マーガレットも同じ……かもしれない。

「……わ、私も、です」

 消え入りそうなほど小さな声でそう言えば、彼は大きく目を見開いていた。

「私も……その、ウェイトレスの人と旦那様がお話しているのを見て、ほんの少し……ほんの少しですよ? 妬きました」

 こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。内心でそう零しながらそう告げれば、クローヴィスは嬉しそうに口元を緩めた。

「今日も、帰ったら覚悟しておいて。……飛ぶまで、愛してあげるから」

 マーガレットの身体をワンピース越しに撫でながら、クローヴィスはそういう。その言葉に、マーガレットは顔を真っ赤にすることしか出来なかった。

(っていうか、これって――)

 ――契約結婚だったはずなのに。

 そう思いながらも、マーガレットはクローヴィスから与えられる愛情を心地よく思い始めていた。

 それからしばらくして、レモンを使ったスイーツがたくさん出てきた。それらはすべて美味であり、マーガレットの心が弾む。

 途中、クローヴィスに「あーん」をされたのは大層不本意だったのだが。
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