【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

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第二章

ちょっぴり、妬いた……かも?

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(信じられないっ!)

 どうして、こんなにも丁寧に扱ってくれるのだろうか。

 そんなことを思ってマーガレットが内心でクローヴィスのことを子供のように罵倒していると、不意に馬車が止まる。

 それに驚いてマーガレットが顔を上げれば、クローヴィスは「ついたみたいだね」と言ってニコニコと笑っていた。

「は、早くないですか……?」
「そりゃあ、そんなに離れてないから」

 マーガレットの言葉に淡々と返事をしたクローヴィスは御者に扉を開けてもらい地面に足をつける。その後、マーガレットに手を差し出してきた。……どうやら、エスコートしてくれるらしい。

(こういうところは……その)

 とても、素敵かもしれない。

 一瞬だけそう思ったが、その感情を振り払うように首をぶんぶんと横に振る。クローヴィスに惹かれてはいけない。万が一彼がこの感情を間違いだと気が付いてしまった時、傷つくのは自分なのだ。

 しかし、クローヴィスのエスコートを無下にすることもできなかった。そのため、マーガレットは渋々彼の手に自分の手を重ね馬車を降りる。綺麗な石畳とヒールがぶつかるような音がして、顔をパッと上げる。

 そうすれば、きれいな街並みが少し遠くに見えた。その賑わいはここにいても聞こえてくるほどであり、マーガレットの心が無意識のうちに弾んでいく。

「騒ぎになるといけないから、少し遠くから歩くよ。……大丈夫?」
「は、はい」

 確かにお忍びで公爵がやってくると騒ぎになるだろう。それを瞬時に理解し、マーガレットはクローヴィスに手を取られたまま歩く。

 街に入ればとてもきれいな街並みに視線を奪われてしまう。レンガ建ての建物。地面は石畳であり、上品な印象も与えてくる。どうやらこの街は警備も行き届いているらしく、周辺で制服姿の騎士が見えた。

「マーガレット、まずは何処に行く?」

 にっこりと笑ってクローヴィスがそう問いかけてくる。なので、マーガレットは考えてみる。……行きたい場所。やっぱり、美味しいものが食べたいかもしれない。色気よりも食い気だと笑われてしまいそうだが、そもそも目的がレモンを使ったお菓子なのだ。

「では、美味しいものが食べたいです」

 クローヴィスにそう答えれば、彼は「わかった」と言ってマーガレットの手を掴んだまま歩き出す。

 何処に向かうのだろうか。ぼんやりとそう思いながら彼について歩けば、彼は人通りの多い道を通っていく。マーガレットが人ごみに流されないようにと盾になりながら進む様子はとても紳士だ。

(……旦那様、とてもお優しいのよね)

 それを再認識して、マーガレットはクローヴィスに続いて歩く。

 それからしばらく歩くと、クローヴィスが足を止めた。そこには一つのこじんまりとしたカフェがある。クローヴィスは何でもない風に「ここでいい?」とマーガレットに問いかけてきた。

「……ここは?」
「元々オルブルヒ公爵家で働いていた料理人が開いた店だよ。だから、味は保証する」

 彼は何でもない風にそう言ってマーガレットの顔を覗き込んでくる。……公爵家で働いていた料理人と言うことは、腕は相当なものだろう。

(……美味しいんだろうなぁ)

 そう思うと、無意識のうちにごくりと唾をのんだ。気が早いかもしれないが、頭の中に思い浮かぶスイーツの数々にマーガレットの意識が向かう。それに気が付いてか、クローヴィスは「よさそうだね」と言ってマーガレットの手を掴んだまま店内に入った。

 扉を開けばからんカランとベルが鳴る。そして、店の奥から顔を見せたウェイトレスがクローヴィスの顔を見て驚いたように目を見開いた。

「領主――」
「しぃっ」

 ウェイトレスに遠回しに黙るようにクローヴィスが仕草で告げれば、彼女は慌てて自身の口をふさぐ。

「今日はお忍びで来ているからさ。……マークはいる?」
「えぇ、いますよ。……奥の個室でよろしいですか?」
「うん、よろしく」

 クローヴィスとウェイトレスはこそこそとそんな会話をする。その姿にほんの少し妬いてしまいそうになるが、ウェイトレスは視線をマーガレットに向けてきたことによりマーガレットはにっこりとした笑みを貼り付けた。

「まぁ、奥様ですか⁉」

 すると、ウェイトレスは嬉しそうに手をパンっとたたいてそう尋ねてくる。それに対し、クローヴィスはマーガレットの肩を抱き寄せながら「そう。俺の妻のマーガレット」と言っていた。……その声音には何処となく自慢が含まれているようにも聞こえてしまう。

「とてもお美しい奥様ですね!」

 それに、ニコニコと無邪気に笑みを向けられてしまえばマーガレットとて無下には出来ない。出来る限り歪に見えないような笑みを浮かべて、「マーガレットと言います」と自己紹介をする。

「マーガレット様ですか。……領主様にお似合いでございますね。さぁさぁ、奥へどうぞ」

 ウェイトレスはニコニコとした笑みを崩さずにクローヴィスとマーガレットのことを店の奥へと案内する。

 後に続く途中、クローヴィスがマーガレットの手をぎゅっと握ってきたことにマーガレットは気が付いていた。
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