上 下
18 / 52
第二章

まるで媚薬に流されたような(1)

しおりを挟む
 対するクローヴィスはその黒色の目を真ん丸にする。

 だからこそ、マーガレットはその強い意思のこもった目でクローヴィスのことを見つめた。

「旦那様、媚薬か何かを呑まされたのでしょう? だったら、さっさと交わるのが身のためです」

 そう言って、マーガレットはクローヴィスの方に近づきその身体に跨った。そうすれば、彼の身体がびくんと跳ねる。

「……考え、なおして」
「嫌ですわ」

 その言葉はある意味マーガレットの言葉を肯定しているとも受け取れる。媚薬か何かを呑まされたというところを否定していないということは、ずばりそれは当たっているということである。

 マーガレットが魔法で灯した灯りに照らされるクローヴィスは大層色っぽい。その仄かに赤くなった目元が、その艶めかしさを増幅させていた。

「……旦那様。私は旦那様のお役に立ちたいのです。……これっきりの関係で構いませんわ」
「マーガレット」
「大丈夫でございます。わ、私が……えぇ、私が何とかします」

 こんなにも苦しそうなクローヴィスの手を煩わせるわけにはいかない。そのため、ここはマーガレットが主導するしかないのだ。

(正直、どういう風にすればいいかいまいちよく分かっていないけれど……)

 そんなことを思うと、脳内に一抹の不安がこみあげてくる。けれど、それを振り払うかのようにぶんぶんと首を横に振り、マーガレットは身を後ろに引く。

 すると、臀部に硬いモノが当たった。布越しにもしっかり主張をするソレが、クローヴィスの熱杭だとわかるのに時間はかからなかった。だからこそ、マーガレットはクローヴィスの足元に移動すると、息を呑む。

「……無理なんて、するな」

 苦しそうなクローヴィスの声に、マーガレットは「だ、大丈夫、です……!」と半ば強がりのような言葉を発する。実際これっぽっちも大丈夫ではない。

 しかし、媚薬の中には強い毒性を持つものもあるのだ。速やかに異性を交わらなければ、身体に悪影響を与える……最悪の場合死に至るものさえあるのだ。

(クローヴィス様を死なせるわけにはいかないのよ……!)

 内心でそう呟き、マーガレットは慣れない手つきでクローヴィスのベルトを外す。その手が何処となく震えているのは、気のせいではない。だって、マーガレットだって嫌というほど自覚しているのだから。

 震える手でベルトを外し、そのトラウザーズと下着をずり下ろす。そうすれば、窮屈そうにしていたクローヴィスの熱杭が顔を出す。それはマーガレットの予想していた以上の大きさであり、また息を呑んでしまった。

(ど、どうすれば……)

 まず、どうすればいいのだろうか。とりあえず、マーガレットもワンピースと下着を脱いだ方が良いのだろうか。葛藤しその手元が行き場なく彷徨うのを見てか、クローヴィスが「……大丈夫、なんだな?」ともう一度確認してくる。

「……え、えぇ、これでも私は……旦那様の妻、ですので」

 それに対し震える声でそう告げれば、クローヴィスはいきなり起き上がる。そして、マーガレットの身体をソファーに押し倒した。
 一気に移動した視界にマーガレットが躊躇っていれば、クローヴィスが「……俺が、するから」と言いながら自身の前髪をかき上げていた。

「で、ですが……」
「大丈夫。……ここは俺に任せておいて」

 クローヴィスは何処となく辛そうに胸を上下させながら、そう言ってマーガレットの目元をそのきれいな指で拭う。その瞬間、マーガレットの顔に水滴が当たる。……どうやら、それはクローヴィスの汗らしい。

「……ごめんね」
「――っつ⁉」

 そう言うとクローヴィスはマーガレットの唇に口づけてきた。挙式の時以来の口づけに、マーガレットの心臓が大きく音を鳴らす。さらにはクローヴィスはマーガレットの唇を味わうかのように、角度を変えて何度も何度も口づけてくる。

「んんっ、んぅ……!」
「……口、開けて」

 優しくそう指示され、マーガレットはうっすらと唇を開ける。そうすれば、マーガレットの口内に入ってくる温かくてぬるぬるとした何か。それに驚き目を見開くものの、それがクローヴィスの舌だとわかるのに時間はかからなかった。

「んんぁ、んんぅ……!」

 その肉厚の舌はマーガレットの口内を蹂躙するかのように舐め上げてくる。頬の内側を刺激されたかと思えば、歯列をなぞられる。舌を絡め取られ唾液を注がれた際には、苦しくてどうにかなってしまいそうだった。

 でも、それ以上に。

 ――マーガレットの身体が、ほんのりと熱くなり始める。

(ぁ、あつ、ぃ……)

 これが興奮するということなのだろうか。ぼんやりとする思考でそう思っていれば、クローヴィスの唇がマーガレットから離れていく。その際にどちらのものかわからない銀色の糸が二人の間を伝う。……大層淫靡な光景だった。

「……嫌だったら、突き飛ばしてね」

 まるでこれが最終宣告とばかりにそう確認される。だからこそ、マーガレットはこくんと首を縦に振った。まぁ、突き飛ばすつもりなどこれっぽっちもないのだけれど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話

もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。 詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。 え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか? え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか? え? 私、アースさん専用の聖女なんですか? 魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。 ※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。 ※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。 ※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。 R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。

【完結】【R18】跡継ぎが生まれたら即・離縁! なのに訳あり女嫌い伯爵さまが甘すぎます!

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
2024.08.29 一度引き下げていましたが、再公開させていただきました。 ―― 「どうか、俺と契約結婚して跡継ぎを産んでくれ」――女嫌いと有名な上司は、ある日そんな打診をしてきた。 ローゼはシャハナー王国の貧乏な子爵家レーヴェン家の長女であり、王立騎士団に女騎士として所属している。 五人の弟妹たちのために日々身を粉にして働くローゼは、気が付けば結婚適齢期を逃した23歳になっていた。 そんな中、三つ年下の妹エリーに婚約話が持ち上がる。しかし、子爵家に持参金を用意するような財力はない。 エリーは家に迷惑をかけたくないから……と婚約話を断ろうとする。でも、ローゼは彼女には自分のような嫁き遅れになってほしくないと思った。 「姉さんが持参金は何とか用意するから」 そうエリーに告げたものの、あてなどない。 どうしようか……と悩む中、騎士団長である上司イグナーツがローゼの事情を聞きつけてひとつの打診をしてきた。 それこそ――彼と契約結婚をして、跡継ぎを産むということだった。 「跡継ぎが生まれたら、すぐに離縁しても構わない」 そう言われ、ローゼは飛びついた。どうせ嫁き遅れの自分がまともな結婚を出来るとは思えない。ならば、エリーのためにここは一肌脱ごう。 そう決意してイグナーツの元に嫁いだのだが。 「ちょ、ちょっと待ってください!」「いやだ」 彼は何故か契約妻のローゼを甘く溺愛してきて……。 訳あり女嫌いの伯爵さま(28)×貧乏な子爵家の令嬢兼女騎士(23)の契約結婚から始まる、子作りラブ ▼hotランキング 最高2位ありがとうございます♡ ―― ◇掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
 侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。  だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。  二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?   ※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。

スパダリ猟犬騎士は貧乏令嬢にデレ甘です!【R18/完全版】

鶴田きち
恋愛
★初恋のスパダリ年上騎士様に貧乏令嬢が溺愛される、ロマンチック・歳の差ラブストーリー♡ ★貧乏令嬢のシャーロットは、幼い頃からオリヴァーという騎士に恋をしている。猟犬騎士と呼ばれる彼は公爵で、イケメンで、さらに次期騎士団長として名高い。 ある日シャーロットは、ひょんなことから彼に逆プロポーズしてしまう。オリヴァーはそれを受け入れ、二人は電撃婚約することになる。婚約者となった彼は、シャーロットに甘々で――?! ★R18シーンは第二章の後半からです。その描写がある回はアスタリスク(*)がつきます ★ムーンライトノベルズ様では第二章まで公開中。(旧タイトル『初恋の猟犬騎士様にずっと片想いしていた貧乏令嬢が、逆プロポーズして電撃婚約し、溺愛される話。』) ★エブリスタ様では【エブリスタ版】を公開しています。 ★「面白そう」と思われた女神様は、毎日更新していきますので、ぜひ毎日読んで下さい! その際は、画面下の【お気に入り☆】ボタンをポチッとしておくと便利です。 いつも読んで下さる貴女が大好きです♡応援ありがとうございます!

【R18】騎士団長は××な胸がお好き 〜胸が小さいからと失恋したら、おっぱいを××されることになりました!~

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
「胸が小さいから」と浮気されてフラれた堅物眼鏡文官令嬢(騎士団長補佐・秘書)キティが、真面目で不真面目な騎士団長ブライアンから、胸と心を優しく解きほぐされて、そのまま美味しくいただかれてしまう話。 ※R18には※ ※ふわふわマシュマロおっぱい ※もみもみ ※ムーンライトノベルズの完結作

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

処理中です...