【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

文字の大きさ
上 下
13 / 14
第2章

第2話

しおりを挟む
「ま、まぁ、とにかく。彼との都合が合ったら、紹介するから!」
「あ、杏珠!」

 来て早々だけれど、このままここにいるのは気まずくて。私は立ち上がって早足でお母さんの病室を出て行く。

 ……せめて、彼氏と別れたとか、そういう風に嘘を回収すればよかったのに。

 それさえも出来なくて、私はどうすることも出来ずに頭を悩ませる。

「……とりあえず、一旦コーヒーでも飲んで落ち着こう」

 病院の一階にある売店のコンビニで、アイスのカフェラテでも買って飲もう。そうすれば、いい考えが思い浮かぶかもしれない。

「……彼氏、かぁ」

 何度も言うように、私は年齢イコール彼氏いない歴だ。つい先日処女ではなくなったものの、彼氏がいたことがないのは間違いない。

 ……そう、私は彼氏いない歴イコール年齢よりも、先に処女を脱してしまったのだ。……なんだこれ。

「誰か適当に捕まえて……って、いやいや、さすがに私も理想じゃない人と恋人ごっこなんて出来ないわ」

 しかも、お母さんのことだ。このまま結婚しろとか言いかねない。

 そうなれば、相手に多大なる迷惑をかけることになる。

「恋人、恋人……何処かに、売ってないかしら?」

 もう頭がこんがらがって、ついついそう零す。

「レンタル恋人みたいなサービスあったわよね。……そのサイトでも見てみるかなぁ」

 後腐れなくやるならば、それしかない。

 そう思って、私は売店でアイスのカフェラテを購入。少し歩いた先にある飲食が出来るスペースに移動する。

 そして、スマホを取り出して、レンタル彼氏を検索しようとしたとき。ふと、スマホが鳴る。幸いにもマナーモードにしていたので、バイブレーションだけど。

 ディスプレイに表示されているのは、『副社長』の文字。……なにか、急用だろうか?

(とりあえず、出るか)

 そう思って立ち上がって、私は病院の玄関に向かう。外に出て、今度はこちらから丞さんに電話をかけた。

 二回ほどコールした後、「はい」という心地のいい声が耳に届く。

「あ、申し訳ありません、副社長。香坂です。今病院でして……」

 一応とばかりにそう説明すれば、電話越しに彼の「何処か、悪いんですか?」という心配の言葉が聞こえて来た。

 ……心の底から心配されているようで、ちょっと胸がチクっと痛む。

「いえ、母のお見舞いです。……母が、骨折して入院していて……」
「そうなのですか。……そんなときに、すみません、電話してしまって」

 スマホ越しに、彼が少し凹んでいるのがわかった。……そんな風に、しなくていいのに。

「構いません。どうなさいました? お仕事のお話ですか?」
「……いえ、そういうわけでは」

 私の言葉に、丞さんが答えを濁す。

「ただ、あなたの声が聞きたかった……というか、少し相談に乗ってほしいことがあって。……その、今から会えますか?」

 前半の言葉は、必要だったのだろうか?

 なんて思う私だったけれど、そこは無視をする。

(今から会えるかと言われても……)

 素早く頭の中でスケジュールを組み立てる。……一時間後なら、いけるかな。

「会社の最寄駅になら、一時間後に行けますが……」
「じゃあ、お願いします」

 あっさりとオッケーが出た。なんだろうか。私は秘書なのだから、もう少しこき使ってもらっても構わないのだけれど。

(あと、言葉が一々丁寧なのよね……)

 関わる感じ、彼は元からそういうお人なのだろう。取り繕っている風もなく、自然とそういう言葉遣いをしているようだ。

 ……好感度は、高い。

「駅に着いたら、電話をお願いします。俺は、近くのカフェでコーヒーでも飲んでいますので」
「あ、は、はい……」

 私の返事を聞いた丞さんは、通話を一方的に切った。

 ……というか。

(秘書をカフェで待つというのは、一体どういう上司なのかしら……?)

 私は、自然とそう思ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...