11 / 14
第1章
第10話
しおりを挟む
「だ、だめ、だめ……」
弱々しい声で、拒否する。
瞬間、私の乳房を掴む彼の手の力が強くなった。
さらには、彼の顔が私の耳元に近づくのがわかってしまう。
「嘘、言わないでください」
まるで私の心の奥底も見透かしているような言葉だと思った。
自然とごくりと息を呑んで、指先に力がこもる。……あぁ、ダメだ。
(気持ちいい……)
なんだろう。私の気持ちがあっさりと陥落してしまいそうだった。
「可愛いですね。昨夜もとっても可愛かったんですけど、明るい場所で見るともっと可愛いです」
「……ぁ」
丁寧なのに、確かな欲を孕んだ声。
お腹の奥底がゾクゾクとする。この感覚は、身体の奥底に染みついている。
「杏珠さん。……許可、してください」
……彼は、私が許可を出さなければ抱こうとはしないだろう。
本当に拒否すれば、諦めてくださるだろう。ただ、なんだろうか。このまま続けてほしいって思う気持ちもある。
「ぁ、あっ、た、すく、さん……」
何処か上ずったような声で彼を呼んで、彼のほうに顔を向けて。
彼の目に映る私自身を、見せつけられる。……無理、恥ずかしい。
「どうしました?」
「……も、っと」
口から望んでいない言葉が零れる。
違う。私の心は本当は望んでいるんだ。嫌と言うほどに思い知らされて、零れる吐息が荒くなって。
なんだか不思議と脚ががくがくと震える。
「……そう、ですか」
彼が嬉しそうにそう呟いて、私の乳首をつまみ上げる。
ぎゅってされて、指の腹でぐりぐりって刺激されて。爪で引っかかれて。
小さな快感に翻弄されて、おかしくなりそうな私の身体。
「ぁ、あっ」
「杏珠さんって、本当に可愛い」
私のつむじにキスを落とした彼が、色っぽく囁く。
「昨夜はちょっと無理させちゃったんで……その、本当は、我慢するつもりだったんです」
……ちょっと無理って、一体何度やったんだろうか?
そういうことは、怖くて聞けない。
「けど、あなたが朝からあんまりにもきれいで……やっぱり、我慢できなくて」
きれいとか、美しいとか、可愛いとか。
男の人に言われても今までなんとも思わなかった……のに。
(好みの人だと、こんなにも違うものなの――?)
それに戸惑っていれば、洗面台の上に置いていた私のスマホがぶるると震える。
「……電話、ですか?」
丞さんにそう問いかけられて、私はゆるゆると首を横に振る。
「め、っせーじ……」
これはメッセージアプリの通知音だ。こんな朝からメッセージを送ってくるのは、一人しかいない。
……お母さんだ。
「そう、ですか」
彼の声が何処か沈んだ。
「その、心配されているのなら……」
「だ、いじょうぶ、です」
どうしてこう返事をしたのかは、わからない。
だって、ここで肯定すれば角が立たずに断れたのに。
「……あの、もっと、したい、です」
どうして私の口がそんな言葉を紡いだのか。それは生憎――私自身にもわからなかった。
弱々しい声で、拒否する。
瞬間、私の乳房を掴む彼の手の力が強くなった。
さらには、彼の顔が私の耳元に近づくのがわかってしまう。
「嘘、言わないでください」
まるで私の心の奥底も見透かしているような言葉だと思った。
自然とごくりと息を呑んで、指先に力がこもる。……あぁ、ダメだ。
(気持ちいい……)
なんだろう。私の気持ちがあっさりと陥落してしまいそうだった。
「可愛いですね。昨夜もとっても可愛かったんですけど、明るい場所で見るともっと可愛いです」
「……ぁ」
丁寧なのに、確かな欲を孕んだ声。
お腹の奥底がゾクゾクとする。この感覚は、身体の奥底に染みついている。
「杏珠さん。……許可、してください」
……彼は、私が許可を出さなければ抱こうとはしないだろう。
本当に拒否すれば、諦めてくださるだろう。ただ、なんだろうか。このまま続けてほしいって思う気持ちもある。
「ぁ、あっ、た、すく、さん……」
何処か上ずったような声で彼を呼んで、彼のほうに顔を向けて。
彼の目に映る私自身を、見せつけられる。……無理、恥ずかしい。
「どうしました?」
「……も、っと」
口から望んでいない言葉が零れる。
違う。私の心は本当は望んでいるんだ。嫌と言うほどに思い知らされて、零れる吐息が荒くなって。
なんだか不思議と脚ががくがくと震える。
「……そう、ですか」
彼が嬉しそうにそう呟いて、私の乳首をつまみ上げる。
ぎゅってされて、指の腹でぐりぐりって刺激されて。爪で引っかかれて。
小さな快感に翻弄されて、おかしくなりそうな私の身体。
「ぁ、あっ」
「杏珠さんって、本当に可愛い」
私のつむじにキスを落とした彼が、色っぽく囁く。
「昨夜はちょっと無理させちゃったんで……その、本当は、我慢するつもりだったんです」
……ちょっと無理って、一体何度やったんだろうか?
そういうことは、怖くて聞けない。
「けど、あなたが朝からあんまりにもきれいで……やっぱり、我慢できなくて」
きれいとか、美しいとか、可愛いとか。
男の人に言われても今までなんとも思わなかった……のに。
(好みの人だと、こんなにも違うものなの――?)
それに戸惑っていれば、洗面台の上に置いていた私のスマホがぶるると震える。
「……電話、ですか?」
丞さんにそう問いかけられて、私はゆるゆると首を横に振る。
「め、っせーじ……」
これはメッセージアプリの通知音だ。こんな朝からメッセージを送ってくるのは、一人しかいない。
……お母さんだ。
「そう、ですか」
彼の声が何処か沈んだ。
「その、心配されているのなら……」
「だ、いじょうぶ、です」
どうしてこう返事をしたのかは、わからない。
だって、ここで肯定すれば角が立たずに断れたのに。
「……あの、もっと、したい、です」
どうして私の口がそんな言葉を紡いだのか。それは生憎――私自身にもわからなかった。
19
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
【完結】もう二度と離さない~元カレ御曹司は再会した彼女を溺愛したい
魚谷
恋愛
フリーライターをしている島原由季(しまばらゆき)は取材先の企業で、司馬彰(しばあきら)と再会を果たす。彰とは高校三年の時に付き合い、とある理由で別れていた。
久しぶりの再会に由季は胸の高鳴りを、そして彰は執着を見せ、二人は別れていた時間を取り戻すように少しずつ心と体を通わせていく…。
R18シーンには※をつけます
作家になろうでも連載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる