【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

文字の大きさ
上 下
6 / 14
第1章

第5話

しおりを挟む
 更衣室に入って、私はいつもの服装に戻る。

 今日の衣服はブラウンのブラウス。それから、ベージュのパンツだ。世にいう、きれいめという服装になるのだと思う。

 元々女性にしては高身長の私は、壊滅的に可愛い服装が似合わなかった。というわけで、いつもシンプルなきれいめにまとめている。

 着替えて、少しだけメイクを直して。髪の毛を整え、更衣室を出て行こうとする。そうすれば、後ろから声をかけられた。

「香坂さん。なんか今日、ご機嫌ですね」

 そこにいたのは、営業課にいる同期の女性百田ももたさんだった。

 彼女はニコニコと笑って私に声をかけてくる。だから、私は曖昧に笑った。

「そう?」
「はい。なんか、いつもよりも輝いて見えます」

 同期とあまり親しくしていない私だけれど、百田さん……それから、もう一人の女性社員とは割と話す。

 そのためか、彼女は私の些細な変化に気が付いたらしい。

(別に輝いているっていうほどでは……)

 単に副社長と食事に行くというだけなんだけれど。

(まぁ、好みド真ん中な男性との食事だし。……今までになく、張り切ってはいるのかも)

 とはいっても、私は副社長とそういう関係になりたいとは思っていない。身分だって全然違うし、職場恋愛はご遠慮願いたい。あと、あそこまで好みになると、もういっそ観賞用と割り切りたい。

「別に特別なことは……って、ごめん。この後待ち合わせがあるから」
「……そうなんですか? 飲みに誘うつもりだったのに」
「ごめんね。あなたとだったら行くから、また誘って」

 遠回しに『男性社員はお断り』という意思を表示して、私は早足で更衣室を出て行った。

 着替えとかメイク直しとか。そういうので割と時間を使ってしまっていて、約束の二十分前になっている。

 別にそこまで急ぐ必要はないと思うのだけれど、相手は上司。それから、この退勤時間のエレベーターはとにかく混むのだ。

(副社長を待たせるなんて、絶対に無理)

 こう見えて、私は小心者である。上司には逆らうことはない。……もちろん、セクハラとかパワハラ上司は別だけど。

 エレベーターホールに来て、いくつかのエレベーターを見送る。ようやく乗れたエレベーターは、相変わらずというかぎゅうぎゅう詰めだった。

(側にいるのが女性社員って言うのが、不幸中の幸いだ……)

 押しつぶされつつも一階についてエレベーターを降りる。

 一息ついて、玄関に視線を向ける。……そこには、スマホを弄っている――副社長。

(え、遅かった……?)

 慌てて時計を見る。けど、時間は約束の十分ほど前だ。……彼が単に早く来たということだろうか?

 ちょっと慌てつつ、私は彼のほうに近づく。副社長は私に気が付いてスマホをポケットに入れられる。

「早かったですね」
「い、いえ、その。上司をお待たせするのはダメかと思いまして……」

 と、言っているけれど。

 副社長を待たせたことには変わりない。

「その、遅れてしまって……」
「別に、気にしないでください。俺が早く出て来ただけなので」

 彼は私の謝罪を制すると、「行きましょうか」とおっしゃった。私は、ためらいがちに頷く。

「何処かおススメの場所とかあります? ついこの間まで地方にいたので、ここら辺あまり詳しくなくて」
「あっ、そ、そうですよね。副社長は、どういうのがお好きですか?」

 この辺りのお店については、一通り頭に叩き込んである。なので、洋食でも和食でも中華でも。なんだったらフレンチとかでも紹介できる。

「いえ、俺に合わせなくていいです。香坂さんに合わせます」

 しかし、彼の返答は私の予想していないもので。……若干頬が引きつった。

「で、ですが」
「俺の好みになると、肉とかそういうものになっちゃうので。……居酒屋とかになりますよ?」

 なんてことない風にそう言う彼。……居酒屋。

「そういうの、女性ってあんまり――」
「――いいところあります!」

 それだったら。そう思って、私は若干身を乗り出しつつ、副社長にそう宣言した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...