4 / 14
第1章
第3話
しおりを挟む
「で、では、行きますね。まずは……」
とりあえず、この階から案内したほうがいいかな。
そう思いつつ、私は頭の中で案内ルートを組み立てていく。
(……今のは、印象悪いかなぁ)
廊下を歩きつつ、私は心の中でそう思う。
ちらりと隣を歩く副社長を見つめてみる。たくましい身体つきに、高い背丈。
……見るからに、私の好みに合致している。むしろ、ここまで完璧に好みに合う人を、私は知らない。
(ほら、今後は副社長と一緒に過ごすんだし。……慣れなくちゃ)
そうだ。私は今日から副社長の専属秘書なのだ。なんとしてでも、平常心を保たなければ……。
(と、思っても。やっぱり、見ちゃうのよねぇ……)
女性はイケメンを見るとこそこそとしている。それは多分、大々的に見れないからなのだと思う。私は今、それを理解した。
そんなことを考えて、私が歩いていると。不意に「香坂さん」と隣から声が聞こえてくる。
「え……?」
驚いて声の方向――副社長に視線を向ける。彼はきょとんとしつつも、私を見つめている。
「あ、間違えてました、か、名前」
「い、いえいえ、私は香坂です」
私があまりにも驚いているため、副社長は名前を間違えたと思ってしまわれたらしい。
慌てて首をぶんぶんと横に振る。……先ほど痛めた首の所為で、なんか辛い。
「そうですか。……よかったです」
彼がほっと胸を撫でおろしている。……可愛い。って、こういう感想は大の男性に向ける感想じゃない。
(なに、これがギャップ萌えとか、そういう奴……?)
今までろくに男性に興味を持てなかった。だから、世の女性が『ギャップ萌え』とか言っているのを聞いても、ぴんとは来なかった。なのに、今、私はそれを理解した。
……これは、萌える。
「その」
「……はい」
「……叔父が、無茶ぶりをしたんじゃありませんか?」
彼が真剣な面持ちになって、そう問いかけてこられた。
意味がわからなくて、眉を顰める。副社長は苦笑を浮かべていらっしゃった。
「正直、突然やってきて副社長と認められるかは、不安だったりします」
「……副社長?」
「そりゃあ、後継者が必要なのはわかっています。……ただ、やっぱり。ほら。社員の信頼がないと、後継者は務まらない」
彼のそのお言葉を聞いて、私は理解する。
――彼は、何処までも真面目な人なのだ、と。
「そんな務まるかわからない男の秘書なんて、いやでしょうに」
自虐的な言葉だと思う。……けど、その気持ちはよくわかる……と、思う。
務まるか務まらないか。初めは誰だって不安だ。
「……大丈夫、だと思いますよ」
私は足を止めて、副社長の顔を見上げた。彼がぱちぱちと目を瞬かせている。
「その気持ちがあれば、きっとみなさまわかってくださいます」
真剣に彼の目を見て、はっきりと告げる。しばらくして、ハッとして視線を逸らす。
「い、いえ、私ごときが、偉そうなことを言ってしまいました。申し訳ございません。忘れてください」
頭を下げて、そう謝罪をする。副社長はしばらくして、息を吐いていた。
「そう言ってくれて、肩の荷が下りました。なので、お気になさらず」
副社長が私のほうに一歩近づいて、そう声をかけてくださる。……心臓がとくとくと早足になるのが、わかった。
「なんでしょうね。叔父が、香坂さんを秘書にした理由が、わかるような気がしましたよ」
「……え」
頭を上げれば、彼が優しそうな表情で私を見つめていて。……心臓がさらに大きく音を鳴らす。
「これからよろしくお願いしますね。香坂さん」
何処か色気をまとったような笑みでそう言われて……私は、こくこくと首を縦に振るのが精いっぱいだった。
とりあえず、この階から案内したほうがいいかな。
そう思いつつ、私は頭の中で案内ルートを組み立てていく。
(……今のは、印象悪いかなぁ)
廊下を歩きつつ、私は心の中でそう思う。
ちらりと隣を歩く副社長を見つめてみる。たくましい身体つきに、高い背丈。
……見るからに、私の好みに合致している。むしろ、ここまで完璧に好みに合う人を、私は知らない。
(ほら、今後は副社長と一緒に過ごすんだし。……慣れなくちゃ)
そうだ。私は今日から副社長の専属秘書なのだ。なんとしてでも、平常心を保たなければ……。
(と、思っても。やっぱり、見ちゃうのよねぇ……)
女性はイケメンを見るとこそこそとしている。それは多分、大々的に見れないからなのだと思う。私は今、それを理解した。
そんなことを考えて、私が歩いていると。不意に「香坂さん」と隣から声が聞こえてくる。
「え……?」
驚いて声の方向――副社長に視線を向ける。彼はきょとんとしつつも、私を見つめている。
「あ、間違えてました、か、名前」
「い、いえいえ、私は香坂です」
私があまりにも驚いているため、副社長は名前を間違えたと思ってしまわれたらしい。
慌てて首をぶんぶんと横に振る。……先ほど痛めた首の所為で、なんか辛い。
「そうですか。……よかったです」
彼がほっと胸を撫でおろしている。……可愛い。って、こういう感想は大の男性に向ける感想じゃない。
(なに、これがギャップ萌えとか、そういう奴……?)
今までろくに男性に興味を持てなかった。だから、世の女性が『ギャップ萌え』とか言っているのを聞いても、ぴんとは来なかった。なのに、今、私はそれを理解した。
……これは、萌える。
「その」
「……はい」
「……叔父が、無茶ぶりをしたんじゃありませんか?」
彼が真剣な面持ちになって、そう問いかけてこられた。
意味がわからなくて、眉を顰める。副社長は苦笑を浮かべていらっしゃった。
「正直、突然やってきて副社長と認められるかは、不安だったりします」
「……副社長?」
「そりゃあ、後継者が必要なのはわかっています。……ただ、やっぱり。ほら。社員の信頼がないと、後継者は務まらない」
彼のそのお言葉を聞いて、私は理解する。
――彼は、何処までも真面目な人なのだ、と。
「そんな務まるかわからない男の秘書なんて、いやでしょうに」
自虐的な言葉だと思う。……けど、その気持ちはよくわかる……と、思う。
務まるか務まらないか。初めは誰だって不安だ。
「……大丈夫、だと思いますよ」
私は足を止めて、副社長の顔を見上げた。彼がぱちぱちと目を瞬かせている。
「その気持ちがあれば、きっとみなさまわかってくださいます」
真剣に彼の目を見て、はっきりと告げる。しばらくして、ハッとして視線を逸らす。
「い、いえ、私ごときが、偉そうなことを言ってしまいました。申し訳ございません。忘れてください」
頭を下げて、そう謝罪をする。副社長はしばらくして、息を吐いていた。
「そう言ってくれて、肩の荷が下りました。なので、お気になさらず」
副社長が私のほうに一歩近づいて、そう声をかけてくださる。……心臓がとくとくと早足になるのが、わかった。
「なんでしょうね。叔父が、香坂さんを秘書にした理由が、わかるような気がしましたよ」
「……え」
頭を上げれば、彼が優しそうな表情で私を見つめていて。……心臓がさらに大きく音を鳴らす。
「これからよろしくお願いしますね。香坂さん」
何処か色気をまとったような笑みでそう言われて……私は、こくこくと首を縦に振るのが精いっぱいだった。
24
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる