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第2章 新婚生活は割と平和? なんだか胸がむずむずします。
第10話
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その感覚に酔っていると、燎さんが私の目をじっと見つめてくる。
……恥ずかしい。そう思うのに、なんだか目が逸らせなかった。
「すみれ」
なんとなく、真剣な声音に聞こえた。だからだろう、心臓がどくんと跳ねる。
「……は、い」
ドキドキと心臓の音が大きくなっていく。燎さんの顔をじぃっと見る。男らしい、精悍な顔立ち。……嫌いじゃ、ない。いや、むしろ……。
(多分、好き、なんだろうな……)
もちろん、これがどういう意味の好きなのかはまだ理解不能だ。
でも、嫌いじゃない。むしろ、好きな部類に入る。……彼と出逢って、距離を縮めていくにつれて、彼の魅力を知った。
極道の若頭という立場に甘んじず、努力をしていることを知った。組をよりいいものに変えようとしていることも、知った。
私は生粋のこの世界の人間だから、この世界が生半端な努力でやっていける世界じゃないことを知っている。だから、余計にそう思うのだろう。
「……あんまり、こういうことを言うのは慣れていないんだ」
「……はい」
一体、なにを言われるのだろうか。
一抹の不安を抱いていれば、燎さんが私の顔の真横に手を突いた。かと思えば、ふっと口元を緩める。
とっても、魅力的な表情だった。
「すみれ、俺は、お前が好きだ」
……けれど、その言葉の意味をすぐには理解できなかった。
(今、好きって……)
聞き間違いじゃなければ、燎さんは今私のことを「好き」と言ってくれた。
むしろ、聞き間違いじゃない。こんなところで聞き間違いなんてしたくない。
「こんなことを言ってはなんだが、俺は恋愛感情というものがいまいちよく分からない。……ずっと、女を遠ざけてきたから」
「……燎、さん」
「堅気の人間を巻き込みたくない。その一心で、俺は女を遠ざけてきた。……その所為で、この年になっても恋がわからない」
……真剣な声音。笑うことなんて出来ない。だって、それは私も一緒だから。
「だから、すみれに抱く感情が恋なのか、本当のところはなにも分からないんだ。だけど、好きだということに間違いはない」
私の目をまっすぐに見つめて、燎さんがそう続ける。……なんだか、ほっとした。胸を撫でおろして、私は燎さんの頬に触れる。
「……私も、一緒です」
小さな声で、そう言葉を返した。燎さんが、目を見開くのがわかった。
「私も、恋とか、恋愛感情とか、わかりません。……けれど、燎さんが好きです」
彼が想いを告げてくれた。ならば、この際私も自分の気持ちを伝えるべきだと思った。……だって、このままだと平等じゃないもの。
「だから――」
言葉は最後まで続かなかった。燎さんが私の唇をふさぐ。口づけだった。
驚いて目を見開く。でも、すぐに閉じた。何度も何度も唇を合わせて、私は燎さんの背中に腕を回した。
「……燎、さん」
ちょっとだけうるんだ目で、彼を見つめる。……彼が、なにを思ったのか額を押さえた。
かと思えば、私の上から退く。……戸惑って、私は燎さんの手首を掴んだ。
「あ、あの……」
「悪い。ちょっと、頭を冷やしてくる」
燎さんが、私の手を振り払って何処かに立ち去ろうとする。ま、待って、待ってくれないと……!
「待ってください! あの、その……せめてっ!」
なんていうか、言葉にするのも恥ずかしいけれど、私の身体が中途半端にくすぶっているのだ。行き場のない熱が、身体中に溜まっている。このまま放置されるのは辛い。それだけは、経験のない私にもわかった。
「すみれ。……もしも、俺が止まらなかったら困るのはお前だ」
燎さんの言葉はごもっともだ。わかる。理解できる。かといって――。
「一度こうと決めたら曲げないでください! ……その、だから……せめてっ!」
一度でいい。絶頂というものを教えてほしい。私は、どうなろうが覚悟はできている。女に二言はない。
……恥ずかしい。そう思うのに、なんだか目が逸らせなかった。
「すみれ」
なんとなく、真剣な声音に聞こえた。だからだろう、心臓がどくんと跳ねる。
「……は、い」
ドキドキと心臓の音が大きくなっていく。燎さんの顔をじぃっと見る。男らしい、精悍な顔立ち。……嫌いじゃ、ない。いや、むしろ……。
(多分、好き、なんだろうな……)
もちろん、これがどういう意味の好きなのかはまだ理解不能だ。
でも、嫌いじゃない。むしろ、好きな部類に入る。……彼と出逢って、距離を縮めていくにつれて、彼の魅力を知った。
極道の若頭という立場に甘んじず、努力をしていることを知った。組をよりいいものに変えようとしていることも、知った。
私は生粋のこの世界の人間だから、この世界が生半端な努力でやっていける世界じゃないことを知っている。だから、余計にそう思うのだろう。
「……あんまり、こういうことを言うのは慣れていないんだ」
「……はい」
一体、なにを言われるのだろうか。
一抹の不安を抱いていれば、燎さんが私の顔の真横に手を突いた。かと思えば、ふっと口元を緩める。
とっても、魅力的な表情だった。
「すみれ、俺は、お前が好きだ」
……けれど、その言葉の意味をすぐには理解できなかった。
(今、好きって……)
聞き間違いじゃなければ、燎さんは今私のことを「好き」と言ってくれた。
むしろ、聞き間違いじゃない。こんなところで聞き間違いなんてしたくない。
「こんなことを言ってはなんだが、俺は恋愛感情というものがいまいちよく分からない。……ずっと、女を遠ざけてきたから」
「……燎、さん」
「堅気の人間を巻き込みたくない。その一心で、俺は女を遠ざけてきた。……その所為で、この年になっても恋がわからない」
……真剣な声音。笑うことなんて出来ない。だって、それは私も一緒だから。
「だから、すみれに抱く感情が恋なのか、本当のところはなにも分からないんだ。だけど、好きだということに間違いはない」
私の目をまっすぐに見つめて、燎さんがそう続ける。……なんだか、ほっとした。胸を撫でおろして、私は燎さんの頬に触れる。
「……私も、一緒です」
小さな声で、そう言葉を返した。燎さんが、目を見開くのがわかった。
「私も、恋とか、恋愛感情とか、わかりません。……けれど、燎さんが好きです」
彼が想いを告げてくれた。ならば、この際私も自分の気持ちを伝えるべきだと思った。……だって、このままだと平等じゃないもの。
「だから――」
言葉は最後まで続かなかった。燎さんが私の唇をふさぐ。口づけだった。
驚いて目を見開く。でも、すぐに閉じた。何度も何度も唇を合わせて、私は燎さんの背中に腕を回した。
「……燎、さん」
ちょっとだけうるんだ目で、彼を見つめる。……彼が、なにを思ったのか額を押さえた。
かと思えば、私の上から退く。……戸惑って、私は燎さんの手首を掴んだ。
「あ、あの……」
「悪い。ちょっと、頭を冷やしてくる」
燎さんが、私の手を振り払って何処かに立ち去ろうとする。ま、待って、待ってくれないと……!
「待ってください! あの、その……せめてっ!」
なんていうか、言葉にするのも恥ずかしいけれど、私の身体が中途半端にくすぶっているのだ。行き場のない熱が、身体中に溜まっている。このまま放置されるのは辛い。それだけは、経験のない私にもわかった。
「すみれ。……もしも、俺が止まらなかったら困るのはお前だ」
燎さんの言葉はごもっともだ。わかる。理解できる。かといって――。
「一度こうと決めたら曲げないでください! ……その、だから……せめてっ!」
一度でいい。絶頂というものを教えてほしい。私は、どうなろうが覚悟はできている。女に二言はない。
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