11 / 22
第2章 新婚生活は割と平和? なんだか胸がむずむずします。
第1話
しおりを挟む
あれからあっという間に数ヶ月が経ち。結婚式を明日に控えた私は、燎さんが用意してくれた新居に移り住むことになった。
新居は防犯面でも完璧な高級マンションの三階にある一室。広々としたリビングと、二つのベッドルーム。あとは水回りとか収納とか個室とか。まぁ、とにかく……広いの一言に尽きる。それだけ。
(……なんていうか、掃除が大変そう……)
心の中でそう思いつつ、私は引っ越し業者に持ってきてもらった段ボールを見つめる。……片付けだけでも、大変そうだ。
リビングには備え付けのダイニングテーブルと椅子。あと、ソファーとテーブルがあって。洋風の造り……なんだろうな。
(実家は和風だったし、慣れなくちゃね)
それだけを呟いて、私はキッチンのほうに向かう。キッチンは対面式で、設備は最新式。……なんていうか、作り甲斐がありそうだ。
戸棚を開ければ調理器具はしっかりと揃っている。……今日にでも、使えそう。
そんなことを考えていると、リビングの扉が開いて燎さんが顔を見せた。先ほどまで引っ越し業者とお話をされていたけれど、終わったのだろうな。
「……すみれ?」
燎さんが私のことを呼ぶ。そのため、私は燎さんのほうに向かう。彼は、頭を掻いていた。
「なにを、してたんだ?」
彼がきょとんとしつつ、そう問いかけてくる。
この婚約期間で知ったことだけれど、燎さんは割と可愛いところがある。ちょっと怖く見える顔立ちだけれど、内面は可愛くて。そのギャップに、私は少し……その、惹かれている、のかもしれない。
「いえ、キッチンを見てました。……使い勝手、よさそうだなぁって」
にっこりと笑ってそう言うと、燎さんの目が大きく見開かれる。……なにかおかしなこと、言っただろうか?
「すみれは、料理が出来るのか?」
ちょっと驚いたように、そう問いかけられる。もしかして私――料理が出来ない人だって、思われてた?
(まぁ、そりゃそうよね。お嬢様が料理するなんて思われないわ)
私は「お嬢様」じゃなくて「お嬢」だけれど、似たようなものだろう。そう、思う。
「はい。私、ある程度は料理が出来ます。……その」
「……あぁ」
「結婚が決まって、もっと頑張ろうって、思って……」
彼からそっと視線を逸らして、そう告げる。
実際、それが真実なのだ。元々料理は羽賀家の家政婦さんに度々習っていた。けれど、燎さんとの結婚が決まってから、もっと頑張るようになっていた。……理由は、恥ずかしいから言いたくないけれど。
「そう、か」
「……その、重いですよね。ごめんなさい」
「いや、嬉しいよ」
私の端的な謝罪に、燎さんがそう返してくださる。その後、私の頭を撫でてくださった。……子供扱いだってわかっているけれど、ちょっと嬉しい、かもしれない。
「じゃあ、そうだな。……ハウスキーパーは頼むとして、料理や洗濯なんかは、すみれがしてくれるか?」
「はい!」
燎さんのその提案に、私は頷く。……でも、後から思った。
(それって全部家政婦さんがする予定だったっていうことよね……?)
そうなれば、私がここにいる意味って、あったのだろうか……?
なんていうか、お飾りの妻みたいな感じになってしまいそうだったっていうこと、よね……?
(私も……その、少しでも、燎さんの役に立たなくちゃ……って)
お祖父さまの面子を潰さないためにも、私は頑張る必要がある。それに……立松組の役にも、立たなくちゃだし。
そんな風に考えていると、ふと燎さんが「あ」と声を上げられた。
「今から、足りないものとか買い出しに行かないか? 少し車を走らせれば、ショッピングモールがある」
それは、一種のデートのお誘いなのだろうか? なんて思うのは、少し浮かれすぎなのかもしれない。
「行きたいです! 食材とかも、買いだしたいので……!」
ちょっと食い気味にそう告げれば、燎さんが笑ってくれた。……その笑みが、なんだか好きだなぁって、私は再認識する。
新居は防犯面でも完璧な高級マンションの三階にある一室。広々としたリビングと、二つのベッドルーム。あとは水回りとか収納とか個室とか。まぁ、とにかく……広いの一言に尽きる。それだけ。
(……なんていうか、掃除が大変そう……)
心の中でそう思いつつ、私は引っ越し業者に持ってきてもらった段ボールを見つめる。……片付けだけでも、大変そうだ。
リビングには備え付けのダイニングテーブルと椅子。あと、ソファーとテーブルがあって。洋風の造り……なんだろうな。
(実家は和風だったし、慣れなくちゃね)
それだけを呟いて、私はキッチンのほうに向かう。キッチンは対面式で、設備は最新式。……なんていうか、作り甲斐がありそうだ。
戸棚を開ければ調理器具はしっかりと揃っている。……今日にでも、使えそう。
そんなことを考えていると、リビングの扉が開いて燎さんが顔を見せた。先ほどまで引っ越し業者とお話をされていたけれど、終わったのだろうな。
「……すみれ?」
燎さんが私のことを呼ぶ。そのため、私は燎さんのほうに向かう。彼は、頭を掻いていた。
「なにを、してたんだ?」
彼がきょとんとしつつ、そう問いかけてくる。
この婚約期間で知ったことだけれど、燎さんは割と可愛いところがある。ちょっと怖く見える顔立ちだけれど、内面は可愛くて。そのギャップに、私は少し……その、惹かれている、のかもしれない。
「いえ、キッチンを見てました。……使い勝手、よさそうだなぁって」
にっこりと笑ってそう言うと、燎さんの目が大きく見開かれる。……なにかおかしなこと、言っただろうか?
「すみれは、料理が出来るのか?」
ちょっと驚いたように、そう問いかけられる。もしかして私――料理が出来ない人だって、思われてた?
(まぁ、そりゃそうよね。お嬢様が料理するなんて思われないわ)
私は「お嬢様」じゃなくて「お嬢」だけれど、似たようなものだろう。そう、思う。
「はい。私、ある程度は料理が出来ます。……その」
「……あぁ」
「結婚が決まって、もっと頑張ろうって、思って……」
彼からそっと視線を逸らして、そう告げる。
実際、それが真実なのだ。元々料理は羽賀家の家政婦さんに度々習っていた。けれど、燎さんとの結婚が決まってから、もっと頑張るようになっていた。……理由は、恥ずかしいから言いたくないけれど。
「そう、か」
「……その、重いですよね。ごめんなさい」
「いや、嬉しいよ」
私の端的な謝罪に、燎さんがそう返してくださる。その後、私の頭を撫でてくださった。……子供扱いだってわかっているけれど、ちょっと嬉しい、かもしれない。
「じゃあ、そうだな。……ハウスキーパーは頼むとして、料理や洗濯なんかは、すみれがしてくれるか?」
「はい!」
燎さんのその提案に、私は頷く。……でも、後から思った。
(それって全部家政婦さんがする予定だったっていうことよね……?)
そうなれば、私がここにいる意味って、あったのだろうか……?
なんていうか、お飾りの妻みたいな感じになってしまいそうだったっていうこと、よね……?
(私も……その、少しでも、燎さんの役に立たなくちゃ……って)
お祖父さまの面子を潰さないためにも、私は頑張る必要がある。それに……立松組の役にも、立たなくちゃだし。
そんな風に考えていると、ふと燎さんが「あ」と声を上げられた。
「今から、足りないものとか買い出しに行かないか? 少し車を走らせれば、ショッピングモールがある」
それは、一種のデートのお誘いなのだろうか? なんて思うのは、少し浮かれすぎなのかもしれない。
「行きたいです! 食材とかも、買いだしたいので……!」
ちょっと食い気味にそう告げれば、燎さんが笑ってくれた。……その笑みが、なんだか好きだなぁって、私は再認識する。
5
お気に入りに追加
321
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる