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第2章 新婚生活は割と平和? なんだか胸がむずむずします。
第1話
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あれからあっという間に数ヶ月が経ち。結婚式を明日に控えた私は、燎さんが用意してくれた新居に移り住むことになった。
新居は防犯面でも完璧な高級マンションの三階にある一室。広々としたリビングと、二つのベッドルーム。あとは水回りとか収納とか個室とか。まぁ、とにかく……広いの一言に尽きる。それだけ。
(……なんていうか、掃除が大変そう……)
心の中でそう思いつつ、私は引っ越し業者に持ってきてもらった段ボールを見つめる。……片付けだけでも、大変そうだ。
リビングには備え付けのダイニングテーブルと椅子。あと、ソファーとテーブルがあって。洋風の造り……なんだろうな。
(実家は和風だったし、慣れなくちゃね)
それだけを呟いて、私はキッチンのほうに向かう。キッチンは対面式で、設備は最新式。……なんていうか、作り甲斐がありそうだ。
戸棚を開ければ調理器具はしっかりと揃っている。……今日にでも、使えそう。
そんなことを考えていると、リビングの扉が開いて燎さんが顔を見せた。先ほどまで引っ越し業者とお話をされていたけれど、終わったのだろうな。
「……すみれ?」
燎さんが私のことを呼ぶ。そのため、私は燎さんのほうに向かう。彼は、頭を掻いていた。
「なにを、してたんだ?」
彼がきょとんとしつつ、そう問いかけてくる。
この婚約期間で知ったことだけれど、燎さんは割と可愛いところがある。ちょっと怖く見える顔立ちだけれど、内面は可愛くて。そのギャップに、私は少し……その、惹かれている、のかもしれない。
「いえ、キッチンを見てました。……使い勝手、よさそうだなぁって」
にっこりと笑ってそう言うと、燎さんの目が大きく見開かれる。……なにかおかしなこと、言っただろうか?
「すみれは、料理が出来るのか?」
ちょっと驚いたように、そう問いかけられる。もしかして私――料理が出来ない人だって、思われてた?
(まぁ、そりゃそうよね。お嬢様が料理するなんて思われないわ)
私は「お嬢様」じゃなくて「お嬢」だけれど、似たようなものだろう。そう、思う。
「はい。私、ある程度は料理が出来ます。……その」
「……あぁ」
「結婚が決まって、もっと頑張ろうって、思って……」
彼からそっと視線を逸らして、そう告げる。
実際、それが真実なのだ。元々料理は羽賀家の家政婦さんに度々習っていた。けれど、燎さんとの結婚が決まってから、もっと頑張るようになっていた。……理由は、恥ずかしいから言いたくないけれど。
「そう、か」
「……その、重いですよね。ごめんなさい」
「いや、嬉しいよ」
私の端的な謝罪に、燎さんがそう返してくださる。その後、私の頭を撫でてくださった。……子供扱いだってわかっているけれど、ちょっと嬉しい、かもしれない。
「じゃあ、そうだな。……ハウスキーパーは頼むとして、料理や洗濯なんかは、すみれがしてくれるか?」
「はい!」
燎さんのその提案に、私は頷く。……でも、後から思った。
(それって全部家政婦さんがする予定だったっていうことよね……?)
そうなれば、私がここにいる意味って、あったのだろうか……?
なんていうか、お飾りの妻みたいな感じになってしまいそうだったっていうこと、よね……?
(私も……その、少しでも、燎さんの役に立たなくちゃ……って)
お祖父さまの面子を潰さないためにも、私は頑張る必要がある。それに……立松組の役にも、立たなくちゃだし。
そんな風に考えていると、ふと燎さんが「あ」と声を上げられた。
「今から、足りないものとか買い出しに行かないか? 少し車を走らせれば、ショッピングモールがある」
それは、一種のデートのお誘いなのだろうか? なんて思うのは、少し浮かれすぎなのかもしれない。
「行きたいです! 食材とかも、買いだしたいので……!」
ちょっと食い気味にそう告げれば、燎さんが笑ってくれた。……その笑みが、なんだか好きだなぁって、私は再認識する。
新居は防犯面でも完璧な高級マンションの三階にある一室。広々としたリビングと、二つのベッドルーム。あとは水回りとか収納とか個室とか。まぁ、とにかく……広いの一言に尽きる。それだけ。
(……なんていうか、掃除が大変そう……)
心の中でそう思いつつ、私は引っ越し業者に持ってきてもらった段ボールを見つめる。……片付けだけでも、大変そうだ。
リビングには備え付けのダイニングテーブルと椅子。あと、ソファーとテーブルがあって。洋風の造り……なんだろうな。
(実家は和風だったし、慣れなくちゃね)
それだけを呟いて、私はキッチンのほうに向かう。キッチンは対面式で、設備は最新式。……なんていうか、作り甲斐がありそうだ。
戸棚を開ければ調理器具はしっかりと揃っている。……今日にでも、使えそう。
そんなことを考えていると、リビングの扉が開いて燎さんが顔を見せた。先ほどまで引っ越し業者とお話をされていたけれど、終わったのだろうな。
「……すみれ?」
燎さんが私のことを呼ぶ。そのため、私は燎さんのほうに向かう。彼は、頭を掻いていた。
「なにを、してたんだ?」
彼がきょとんとしつつ、そう問いかけてくる。
この婚約期間で知ったことだけれど、燎さんは割と可愛いところがある。ちょっと怖く見える顔立ちだけれど、内面は可愛くて。そのギャップに、私は少し……その、惹かれている、のかもしれない。
「いえ、キッチンを見てました。……使い勝手、よさそうだなぁって」
にっこりと笑ってそう言うと、燎さんの目が大きく見開かれる。……なにかおかしなこと、言っただろうか?
「すみれは、料理が出来るのか?」
ちょっと驚いたように、そう問いかけられる。もしかして私――料理が出来ない人だって、思われてた?
(まぁ、そりゃそうよね。お嬢様が料理するなんて思われないわ)
私は「お嬢様」じゃなくて「お嬢」だけれど、似たようなものだろう。そう、思う。
「はい。私、ある程度は料理が出来ます。……その」
「……あぁ」
「結婚が決まって、もっと頑張ろうって、思って……」
彼からそっと視線を逸らして、そう告げる。
実際、それが真実なのだ。元々料理は羽賀家の家政婦さんに度々習っていた。けれど、燎さんとの結婚が決まってから、もっと頑張るようになっていた。……理由は、恥ずかしいから言いたくないけれど。
「そう、か」
「……その、重いですよね。ごめんなさい」
「いや、嬉しいよ」
私の端的な謝罪に、燎さんがそう返してくださる。その後、私の頭を撫でてくださった。……子供扱いだってわかっているけれど、ちょっと嬉しい、かもしれない。
「じゃあ、そうだな。……ハウスキーパーは頼むとして、料理や洗濯なんかは、すみれがしてくれるか?」
「はい!」
燎さんのその提案に、私は頷く。……でも、後から思った。
(それって全部家政婦さんがする予定だったっていうことよね……?)
そうなれば、私がここにいる意味って、あったのだろうか……?
なんていうか、お飾りの妻みたいな感じになってしまいそうだったっていうこと、よね……?
(私も……その、少しでも、燎さんの役に立たなくちゃ……って)
お祖父さまの面子を潰さないためにも、私は頑張る必要がある。それに……立松組の役にも、立たなくちゃだし。
そんな風に考えていると、ふと燎さんが「あ」と声を上げられた。
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「行きたいです! 食材とかも、買いだしたいので……!」
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