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第1章 お見合い相手は同業者!? その場で結婚決まりですか?
第5話
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(え、社長。社長でしょう!?)
これ、社長じゃなくて若頭! 次期組長なのかもしれないけれど、それは社長じゃない!
(堅気の人間だと思ってたのに!)
……でも、後から思えば当然だ。お祖父さまの知り合いということは、八割がたこの世界の人間だ。
そんな私の気持ちも知らないお祖父さまは、どかどかと間に入っていく。なので、私も後に続いた。
だって、引き受けてしまった以上仕方がないじゃない。えぇ、仕方がないの。
そう思いつつ、私はそっと顔を上げる。私のお見合い相手だという男性は……とても、怖いお顔をされていた。
(うん、一番顔が怖いと有名な御影よりも、怖いわね)
羽賀家の中で、一番顔が怖いと有名な三十八歳の男、御影。彼よりも、顔が怖い。……というか、不機嫌なの、かな?
「おぬしが、大輔の孫娘か?」
老人――蔵数さんが、私を見て声をかけてくる。そのため、私はこくんと首を縦に振る。
「初めまして、羽賀 すみれと申します」
ゆっくりと頭を下げて、自己紹介。こういうところは、お祖母さまに厳しく教えられているから。本当に、助かっている。
「そうか。おぬしが羽賀組のお嬢か。……いやぁ、わしのところの組の者がな、羽賀組のお嬢はとても可愛いと言っておったが……」
……一体、どういう噂が出回っているのだろうか。
私の眉間が、ぴくぴくと動いているような気がする。こういうところ、私にもしっかりと裏の人間の血が入っているという証拠なのだろう。
「期待以上だなぁ。顔立ちも可愛いし、なによりもその迫力が良い。これだと、立松組を一緒に引っ張って行ってくれそうだ」
うんうんと頷きながら、蔵数さんがお酒を飲んでいた。
ずっと飲んでいらっしゃったのか、顔が仄かに赤い。そして、蔵数さんは遠慮なくお祖父さまにもお酒を勧められた。
「ほれほれ、大輔。飲め飲め。今日はめでたい日だろう?」
蔵数さんの言葉で、私は察した。……彼の中で、このお見合いは成功しているのだと。
(だけど、張本人さん、一言も話していないんだけれど……)
私のお見合い相手の方に、ちらりと視線を向ける。彼は怖い顔に不機嫌さを醸し出している。……堅気の人間ならば、震えあがる。
だけど、生憎私も生まれてこの方、ずっとこの世界に身を置いている。顔の怖さくらいじゃ、怯まない。
「初めまして。羽賀 すみれと申します」
一応とばかりに笑いかければ、彼の眉がぴくりと動く。
「……立松 燎だ」
やっと、一言お話してくれた。……というか、自己紹介ね。
「一応、なんだ。組とは関係なく会社も経営している」
……あ、社長さんなの、間違いなかったんだ。
心の中でそう思いつつ、私は微笑む。女は度胸。怯んでなんて、いられない。
「そうなのですね」
出来る限り温和に聞こえる声で、そう言葉を返す。瞬間、燎さんが少し視線を逸らした。
「……おい、燎。いい加減真面目に彼女を見つめんか」
「……見てますよ」
「睨みつけているの間違いだろう。お前、わしに似て顔が怖いんだから、笑え笑え」
もう完全に酔いが回ってしまったのか、蔵数さんが燎さんに絡んでいる。彼はそれを少し鬱陶しそうにしているものの、強くは拒絶しない。この世界、上の人間の言うことは絶対だものね。
「ったく、祖父さんども……。悪いな、もう完全に酔っぱらってやがる」
蔵数さんが少し離れたのを見て、燎さんが頭を掻きながら私にそう声をかけてこられた。
……声が、低い。でも、そういうところ……好き、かもしれない。
(多分私の好みって、男らしい人なのよね……)
なよなよした男は嫌い。がっちりとした体格の、ザ・男性! っていうタイプが、好きなんだと思う。
……今更ながらに、それを実感した。
これ、社長じゃなくて若頭! 次期組長なのかもしれないけれど、それは社長じゃない!
(堅気の人間だと思ってたのに!)
……でも、後から思えば当然だ。お祖父さまの知り合いということは、八割がたこの世界の人間だ。
そんな私の気持ちも知らないお祖父さまは、どかどかと間に入っていく。なので、私も後に続いた。
だって、引き受けてしまった以上仕方がないじゃない。えぇ、仕方がないの。
そう思いつつ、私はそっと顔を上げる。私のお見合い相手だという男性は……とても、怖いお顔をされていた。
(うん、一番顔が怖いと有名な御影よりも、怖いわね)
羽賀家の中で、一番顔が怖いと有名な三十八歳の男、御影。彼よりも、顔が怖い。……というか、不機嫌なの、かな?
「おぬしが、大輔の孫娘か?」
老人――蔵数さんが、私を見て声をかけてくる。そのため、私はこくんと首を縦に振る。
「初めまして、羽賀 すみれと申します」
ゆっくりと頭を下げて、自己紹介。こういうところは、お祖母さまに厳しく教えられているから。本当に、助かっている。
「そうか。おぬしが羽賀組のお嬢か。……いやぁ、わしのところの組の者がな、羽賀組のお嬢はとても可愛いと言っておったが……」
……一体、どういう噂が出回っているのだろうか。
私の眉間が、ぴくぴくと動いているような気がする。こういうところ、私にもしっかりと裏の人間の血が入っているという証拠なのだろう。
「期待以上だなぁ。顔立ちも可愛いし、なによりもその迫力が良い。これだと、立松組を一緒に引っ張って行ってくれそうだ」
うんうんと頷きながら、蔵数さんがお酒を飲んでいた。
ずっと飲んでいらっしゃったのか、顔が仄かに赤い。そして、蔵数さんは遠慮なくお祖父さまにもお酒を勧められた。
「ほれほれ、大輔。飲め飲め。今日はめでたい日だろう?」
蔵数さんの言葉で、私は察した。……彼の中で、このお見合いは成功しているのだと。
(だけど、張本人さん、一言も話していないんだけれど……)
私のお見合い相手の方に、ちらりと視線を向ける。彼は怖い顔に不機嫌さを醸し出している。……堅気の人間ならば、震えあがる。
だけど、生憎私も生まれてこの方、ずっとこの世界に身を置いている。顔の怖さくらいじゃ、怯まない。
「初めまして。羽賀 すみれと申します」
一応とばかりに笑いかければ、彼の眉がぴくりと動く。
「……立松 燎だ」
やっと、一言お話してくれた。……というか、自己紹介ね。
「一応、なんだ。組とは関係なく会社も経営している」
……あ、社長さんなの、間違いなかったんだ。
心の中でそう思いつつ、私は微笑む。女は度胸。怯んでなんて、いられない。
「そうなのですね」
出来る限り温和に聞こえる声で、そう言葉を返す。瞬間、燎さんが少し視線を逸らした。
「……おい、燎。いい加減真面目に彼女を見つめんか」
「……見てますよ」
「睨みつけているの間違いだろう。お前、わしに似て顔が怖いんだから、笑え笑え」
もう完全に酔いが回ってしまったのか、蔵数さんが燎さんに絡んでいる。彼はそれを少し鬱陶しそうにしているものの、強くは拒絶しない。この世界、上の人間の言うことは絶対だものね。
「ったく、祖父さんども……。悪いな、もう完全に酔っぱらってやがる」
蔵数さんが少し離れたのを見て、燎さんが頭を掻きながら私にそう声をかけてこられた。
……声が、低い。でも、そういうところ……好き、かもしれない。
(多分私の好みって、男らしい人なのよね……)
なよなよした男は嫌い。がっちりとした体格の、ザ・男性! っていうタイプが、好きなんだと思う。
……今更ながらに、それを実感した。
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