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第1部 第1章

従者の特別な仕事 5

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 一度涙が零れると、もう我慢できなかった。涙がはらはらと落ちていく。

 見えなくても、セラフィンさまには僕が泣いていることが伝わっていたらしい。彼が慌てているのが背中越しにわかる。

「ルドルフ。……嫌だったか? 意地悪しすぎてしまったか?」

 セラフィンさまが、僕の身体をぎゅっと抱きしめて、そう問いかけてくださる。

 僕は、上手く返事をすることさえ出来なくて。小さく嗚咽を漏らしてしまう。

「もう、しないから。……だから、安心してくれ」

 ……こんなの、主従の関係ではないみたいだ。

 心の奥底でそう思いつつも、僕は震える唇を開けた。

「嫌、というわけでは、なくて……」

 多分、それは間違いない。

「ただ、その。セラフィンさまに、汚いものを触らせてしまっているということが、申し訳ない、だけで……」

 今にも消え入りそうなほどに小さな声で、僕は自らの気持ちを伝える。

 すると、セラフィンさまはごくりと息を呑まれた。

「汚いわけがないだろう」

 セラフィンさまは、本当にお優しい。それを実感して、僕の心が温かくなる。

「本当に、汚いわけがない。俺からすれば、こんなにも愛おしいものはない」

 そうおっしゃったセラフィンさまが、竿をするりと撫で上げる。その所為で、僕の身体がまたびくんと跳ねた。

 ……少し萎えかけていた陰茎が、また硬さを取り戻していく。

「だから、大丈夫だ。……安心して、俺に身を委ねて」

 僕の耳元で。甘ったるい声でそう囁かれたセラフィンさま。

 彼は、僕の陰茎を握り直す。人に握られるのって、なんだか変だった。

「俺の手だけに、集中したらいい。……大丈夫。怖くない」

 セラフィンさまが、僕のつむじにキスを落として、手を動かされる。

「んっ、う、ぅ」

 ゆったりとした動き。なのに、的確に快楽を与えてくる。

 先端から溢れ出る先走りを指に絡められて、ぬりたくられるように動かされる。

「んっ、ぁ、だ、め……」
「ダメじゃない。……気持ちいいって言ってくれ。……そうすれば、俺は幸せになれる」

 どうして、彼はこんなことをおっしゃるのだろうか?

 意味が分からない僕だけれど、彼の言葉の裏を読む力なんてない。

 だから、僕はこくこくと首を縦に振る。

「セラフィンさまの手、あったかくて、気持ちいい、です……」

 呼吸がどんどん荒くなる。そんな中、僕は必死に言葉を紡ぐ。

 あったかい手のひらにが、なんだか落ち着く。

「そうか。じゃあ、そのまま感じていて。……俺だけを、感じてくれたら嬉しい」

 まるで懇願するような声を、否定することなんて出来なかった。

 僕は首を縦に振る。でも、時折与えられる強すぎる快楽に、身を跳ねさせる。

「ぁ、あっ! せ、らふぃん、さま……!」
「うん、どうしたの?」
「も、むり、です……!」

 だから、そろそろ手を離してくれないと――と思った瞬間、セラフィンさまの手が早くなる。

 まるで、絶頂に導こうとしているかのようだった。

「そうか。じゃあ、遠慮なく出したらいい」
「で、もっ……!」

 もしかしたら、セラフィンさまの手を汚してしまうかも……と、心配してしまう。

 しかし、セラフィンさまにはそんなことお見通しだったらしい。

「ルドルフ。俺は別にそんなことを怒るつもりはない。……だから、ほら」
「んっ」

 耳元にふぅっと息を吹きかけられて、僕の身体がぶるりと震える。

 そして、すぐに陰茎の先端から熱い飛沫が溢れ出る。

 しかも、セラフィンさまは最後まで出し切らそうとしているのか。しごく手を止めてくださらない。

「ぁ、も、で、ない……」

 僕がそう訴えて、ようやく手を止めてくださった。

「ルドルフは、いい子」

 意識を失う前に聞こえたのは、セラフィンさまのそんな声だった。
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