【完結】【R18】ゆらり、波打つ【明石唯加の短編集】

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

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一方的にライバル視している男と×××しないと出られない部屋に閉じ込められてしまった私の顛末

3.

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(いやいやいや、今の流れでそれは絶対におかしいでしょ……!?)

 内心で大絶叫をしながら、テレーズはラウルのことを見つめる。彼の目はとても真剣に見えてしまった。……何とも言えない気持ちが、胸の中に渦巻いて消えてくれない。

「テレーズ嬢の口から、俺のことが好きだって聞きたい」

 そう言われても、テレーズはラウルのことが好きではないのだ。そう思い唇をかんでいれば、彼は何を思ったのだろうか。おもむろにテレーズのワンピースに手をかけてくる。

「な、何するんですかっ!?」

 慌てて彼の手を払いのけるものの、彼は「……俺と、しましょう?」と言ってくる。甘えたような口調でそう言われても、テレーズとしては納得できない。

 そう思いつつテレーズが一人戸惑っていれば、ラウルの手がテレーズの身体をなぞってくる。何とも言えないゾクゾクとした感覚が身体を這い、その所為で息が漏れてしまった。

「……ほら」

 甘えたようにそう言われ、ラウルの手はテレーズの首筋を露わにする。そのまま彼は唇をそこに近づけ、ちゅっと痕を残すかのように口づけてきた。

「いやぁ……!」

 身をよじって、彼から逃げようとする。が、逃げられない。いつの間にか彼はもう片方の手でテレーズの腕をまとめており、シーツの上に縫い付けてくる。

 ちゅっ、ちゅっと音を立ててテレーズの首筋にラウルが吸い付いてくる。それだけでおかしくなりそうなほど身体が熱くて、昂ってしまって。テレーズが顔を真っ赤にしながら涙をこらえる。

「んんっ」

 こそばゆいような、何とも言えない感覚だった。思わず「ふぅ」っと艶っぽい息を漏らしてしまえば、ラウルの身体が露骨に震える。

「テレーズ嬢……。俺、我慢できないんですけれど」

 そして、至極真面目な顔でそう言われてしまう。

 彼の言葉の意味が分からずにテレーズがきょとんとしていれば、太ももにラウルが下肢を押し付けてくる。そこは、熱を持っているように熱くて、硬くなっている。恐る恐る視線をそちらに向ければ――トラウザーズの前の部分が不自然に膨らんでいた。

「いやぁあっ!」

 その所為で、テレーズは思いきり彼の頭をはたいてしまう。

(い、い、今の私で、どうやったらそうなるわけ!?)

 今のテレーズはお世辞にも艶っぽいとかいやらしいとか。そういう状態ではなかったはずなのに。なのに、ラウルはテレーズのいつも通りの表情で興奮していて……。

「……今のでも、もっと興奮したんですけれど」

 しかも、彼はテレーズの羞恥心を煽るようなことを真面目な表情で言ってくる。その言葉の所為でテレーズはもうどうすればいいかがわからなかった。毛布を手繰り寄せ、もう一度顔を覆う。そうしていれば、毛布を乱雑に奪い取られてしまった。ほかでもない、ラウルによって。

「テレーズ嬢、毛布じゃなくて、俺の顔を見て?」
「む、無理です、無理ですっ!」

 ぶんぶんと首を横に振る。彼の目は明らかに情欲を孕んでおり、テレーズのことをここで捕食するつもりなのだとすぐに理解できた。

 いや、違う。彼は間違いなくここでテレーズを捕食するのだ。……そうじゃないと、出られないのだから。

(う、うぅ)

 一方的にライバル視していた男に好意を寄せられていた。それだけで驚くことなのに、彼はさも当然のようにテレーズで興奮している。それが伝わってくるからこそ、テレーズの額に冷や汗が垂れる。どうすればいいのだろうか。そう思って、テレーズはぎゅっと目を瞑る。

「……ちょっと、俺、苦しいんですけれど」
「だから、何なんですか……」
「一度、抜いてきてもいいですか?」

 だから、どうして彼はそういうことを何の恥ずかしげもなく言うのだろうか。そう思いつつ、テレーズはこれは自分も覚悟を決めるべきだと思った。だからこそ、テレーズの上から退き何処かに行こうとするラウルの手首をつかむ。

「……テレーズ嬢?」
「……りました。わかりましたよぉ!」

 もう、この際背に腹は代えられない。

 ここから出ないと何もないのだ。……そう、今からこの男性と交わって。

(ま、交わ……って)

 交わる。性交渉をする。そんなことを想像して、テレーズは頭から湯気が出るような感覚に襲われてしまう。けれど、これでもテレーズはある程度の戦場を潜り抜けてきた女騎士である。……一度こうと決めたら曲げることが好ましいことではないことくらい、わかっている。

「わ、私、その……ラウル様と、えっち、します」

 引き寄せた毛布で口元を隠しながら、ラウルから視線をそっと逸らしながらそう言えば、彼は「……出そう」と至極真面目な顔で言ってくる。……だから、一体テレーズの何処に興奮するというのだ。内心でそう思いつつも、テレーズは毛布をぎゅっと握りしめる。

「……で、でも、私……その、やり方とかよく知らないので……」

 任せます。

 そう言おうとした途端、毛布をはぎ取られ唇をふさがれた。そのまま何度も貪るような触れるだけの口づけをされ、テレーズの目が大きく見開いた。

「俺に、任せて」

 次にテレーズがラウルの顔を見つめれば、彼は清々しいほどの笑みを浮かべてそう言っていた。
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