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オネェ系剣士の雄の本性~告白したら成り行きで食べられてしまいました~
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ここ、ディロン王国では約千年に一度、魔王が目覚める。
魔王が目覚めると魔物が活気づき、活動時間が伸びる。
魔物は人間に害を与える生き物だ。なので、人間側は魔王が目覚めたという知らせを聞くと、魔王を永い眠りにつかせるために行動を始める。
その役割を与えられるのが――勇者という存在。
勇者は国が選んだ存在である剣士、魔法使い。それから聖女と共に旅に出て、魔王を永い眠りにつかせるのだ。
そして、この年。
昨年に目覚めた魔王を永い眠りにつかせることが出来た。
◇
(……本当に、こんなの嫌に決まっているじゃない!)
魔王が眠りについて約三ヶ月。国では魔王や魔物の脅威が去りつつあり、平和な日常が戻ってきていた。
だが、そんな中心の中で「あり得ない」を繰り返すのが一人。
勇者一行で聖女として活躍したこのディロン王国の第三王女、アーシュラ・セリーナ・ディロン。その人である。
アーシュラは父に命じられ、勇者たちのサポート役として旅に同行した。
アーシュラの回復魔法は強力であり、勇者たちはそれに何度も助けられた。彼女自身も、聖女という役割に誇りを持っている。
旅路でのアーシュラの活躍はたくさんの人の耳に入っており、帰ればきっとたくさんの求婚が来るだろう。そう、思っていたのに――。
「お父様ったら、本当にあり得ないわっ!」
そう叫んで、アーシュラは目の前のテーブルをバンっと力いっぱいたたく。
そうすれば、目の前にいた男が「俺も、本当にあり得ないと思います」と言いながらワインを煽った。
「どうして、どうしてライナスと結婚しろなんておっしゃるの!?」
目の前の男――ライナス・ウェインに向かってアーシュラがそう叫べば、彼は「アーシュラ姫が何とかしてくださいよ」という。そのままワインのお代わりを要求してきた。……まったく、食えない男だ。
ライナス・ウェインはこのディロン王国の当代の勇者である。元は静かな村に住んでいた農家の息子。それが彼だ。
だが、彼は神託を受けたことにより勇者として魔王を眠りにつかせる役割を受け持ってしまった。
本人曰く、「面倒くさい」ということだったが、結局ごり押しされてしまったのだと語っている。
そして、実はアーシュラは目の前のライナスとの結婚を王である父に命じられてしまったのだ。
「大体、俺には村に残してきた恋人がいるんです。彼女のために頑張ったのに……アーシュラ姫と結婚なんて、絶対にごめんです」
「……私のような容姿も地位も名誉もある女を前にしてそんなことを言うの、貴方くらいよ」
「俺からすれば恋人が一番ですから」
やれやれとばかりに首を横に振りながらライナスがそう言う。まぁ、アーシュラとてもしもライナスがこの結婚に乗り気だったらと考えると気が気じゃない。
そのため、彼がこういう風に言ってくれることにかなりのありがたさを覚えている。
「とにかく。国王陛下の説得をお願いしますよ。俺は村に帰って彼女と結婚するんです」
ライナスはそれだけを言うと、自身の飲み物代を置いて颯爽と立ち去っていく。
そんな彼の後ろ姿を見つめながら、アーシュラは「……私にだって、好きな人がいるのにぃ!」と零してしまった。
魔王が目覚めると魔物が活気づき、活動時間が伸びる。
魔物は人間に害を与える生き物だ。なので、人間側は魔王が目覚めたという知らせを聞くと、魔王を永い眠りにつかせるために行動を始める。
その役割を与えられるのが――勇者という存在。
勇者は国が選んだ存在である剣士、魔法使い。それから聖女と共に旅に出て、魔王を永い眠りにつかせるのだ。
そして、この年。
昨年に目覚めた魔王を永い眠りにつかせることが出来た。
◇
(……本当に、こんなの嫌に決まっているじゃない!)
魔王が眠りについて約三ヶ月。国では魔王や魔物の脅威が去りつつあり、平和な日常が戻ってきていた。
だが、そんな中心の中で「あり得ない」を繰り返すのが一人。
勇者一行で聖女として活躍したこのディロン王国の第三王女、アーシュラ・セリーナ・ディロン。その人である。
アーシュラは父に命じられ、勇者たちのサポート役として旅に同行した。
アーシュラの回復魔法は強力であり、勇者たちはそれに何度も助けられた。彼女自身も、聖女という役割に誇りを持っている。
旅路でのアーシュラの活躍はたくさんの人の耳に入っており、帰ればきっとたくさんの求婚が来るだろう。そう、思っていたのに――。
「お父様ったら、本当にあり得ないわっ!」
そう叫んで、アーシュラは目の前のテーブルをバンっと力いっぱいたたく。
そうすれば、目の前にいた男が「俺も、本当にあり得ないと思います」と言いながらワインを煽った。
「どうして、どうしてライナスと結婚しろなんておっしゃるの!?」
目の前の男――ライナス・ウェインに向かってアーシュラがそう叫べば、彼は「アーシュラ姫が何とかしてくださいよ」という。そのままワインのお代わりを要求してきた。……まったく、食えない男だ。
ライナス・ウェインはこのディロン王国の当代の勇者である。元は静かな村に住んでいた農家の息子。それが彼だ。
だが、彼は神託を受けたことにより勇者として魔王を眠りにつかせる役割を受け持ってしまった。
本人曰く、「面倒くさい」ということだったが、結局ごり押しされてしまったのだと語っている。
そして、実はアーシュラは目の前のライナスとの結婚を王である父に命じられてしまったのだ。
「大体、俺には村に残してきた恋人がいるんです。彼女のために頑張ったのに……アーシュラ姫と結婚なんて、絶対にごめんです」
「……私のような容姿も地位も名誉もある女を前にしてそんなことを言うの、貴方くらいよ」
「俺からすれば恋人が一番ですから」
やれやれとばかりに首を横に振りながらライナスがそう言う。まぁ、アーシュラとてもしもライナスがこの結婚に乗り気だったらと考えると気が気じゃない。
そのため、彼がこういう風に言ってくれることにかなりのありがたさを覚えている。
「とにかく。国王陛下の説得をお願いしますよ。俺は村に帰って彼女と結婚するんです」
ライナスはそれだけを言うと、自身の飲み物代を置いて颯爽と立ち去っていく。
そんな彼の後ろ姿を見つめながら、アーシュラは「……私にだって、好きな人がいるのにぃ!」と零してしまった。
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