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第2章

身請け宣言 4

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 そんなカーティアの気持ちなど、知りもしないのだろう。ヴィクトルが口元を緩める。

「どうか、俺の妻になってくれ。……あなたが、欲しい」

 ヴィクトルはそう言って、カーティアの背中を撫でる。その手はするりとカーティアの身体を伝って、腰をたどって臀部に触れる。

「んっ」

 慣れない感覚に、カーティアの口からは声が零れた。

「……あなたは、本当に可愛いな」

 彼がそう呟いて、もう片方の手でカーティアの身体を自身の身体に押し付ける。

 心臓が鳴らす音がとくとくと早くなって、彼と密着した肌が熱く感じられてしまった。

「いっそ、もう一度したいな……」

 小さく零された言葉に、カーティアの顔にカーっと熱が溜まった。

 もう一度。それは、間違いなく昨日の行為のこと。

(む、無理! そんなの、本当に……)

 そう思って、カーティアの身体がぶるりと震えた。

 なのに。彼の手がカーティアの身体を這いまわる感触に、身体の奥底がじんと熱を持ってしまう。

 じんじんと疼き始めて、艶めかしい吐息が口から零れた。

(こんな顔、見せられないわ……!)

 きっと今の自分は、だらしない顔をしているだろうから。

 そんな風に思うカーティアの気持ちを知ってか知らずか、ヴィクトルがカーティアの身体を自身の身体から引き離す。

「やっ!」

 慌てて自身の顔を手で覆った。

 でも、その手はあっさりとどけられてしまって。カーティアはふるふると首を横に振ることしか出来ない。

「み、見ないで、ください」

 恥ずかしくて、いたたまれなくて。

 カーティアが目を伏せてそう言えば、ヴィクトルがきょとんとしたのがわかった。

「どうして、だろうか?」

 どうしてもこうしてもないのだ。

「だ、だって、私、今とても――」

 ――恥ずかしい顔をしているから。

 最後まで伝えるよりも前に。ヴィクトルの顔が、カーティアの顔にぐっと近づいてくる。

 驚いて息を呑めば、彼が舌なめずりをしたのがわかった。……獲物を前にした肉食獣のような仕草に、カーティアのお腹の奥が無性に疼く。

「あなたは、どんな顔をしていても愛らしい。……でも、今の顔は格別だ」

 彼のその言葉に、カーティアが身を震わせる。低い彼の声は、お腹の奥底に響いて――熱を疼かせる。

「時間があれば、やはりあなたを暴きたい」
「そ、んな……」

 抗議の声は、自分でも驚くほどに甘ったるい。嫌だと言っているのに、熱を孕んでいる。

 まるで、心の奥底では期待しているかのような。そんな色を、宿している。

「だが、時間がない。……理屈ではわかっているんだ。でも、我慢したくない。あなたを、乱したい」

 彼が甘く熱を孕んだ声でそう囁いて、カーティアの唇を指の腹でなぞった。

 その所為か、カーティアが目を瞑る。しばらくして、唇に触れる温かいもの。

(あぁ、キス、されている……)

 ちゅっと音を立てながら、何度か唇が触れ合う。

 しばらく触れ合わせるだけの口づけを交わして、少しして唇を開ける。

 ぬるりと口腔内に入ってきたヴィクトルの舌は、カーティアの舌をいとも簡単に絡め取った。

「んっ」

 喉が鳴って、身体が何故か震える。

 ゾクゾクとしたものが身体中を這いまわって、カーティアの腹の奥底に熱を溜める。

 それらが疼いて、主張をする。この熱を解放して、楽になりたい。頭の片隅が、そう囁いた。

(……少し、少し、だけ)

 腹の奥底にくすぶる熱の所為で、上手く思考回路が動いてくれない。

 そっと彼の身体に身を寄せて、彼の舌に自ら舌を絡めた。くちゅくちゅという音が室内に響いて、頭がくらくらとしてしまう。

(……ぁ、か、れの)

 身体を寄せたことにより、ヴィクトルの下肢の状態がわかってしまう。

 そこは熱を持っていて、昂っていて。これが、カーティアの身体を貫いたのかと思うと――無性に苦しくなって。

 ただ、それに気が付かないふりをして、無我夢中で口づけをする。意識を逸らして、口づけだけを味わう。

(もっと、もっと、欲しい……)

 どうしてそう思うのか。それは、カーティアには定かじゃない。

 唯一わかることといえば。この身体の持ち主であるカーティアという女性は。

 ――かなり、淫らな身体を持っているということ、くらいだろうか。
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