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第1章
きっかけというか、理由というか 7【※】
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「ひっ、う」
唇が離れた一瞬、俺の口から情けない声が漏れる。
でも、それを呑み込むかのようにまたキスをされる。舌を絡め取られて、じゅって吸われた。
それだけで、頭がおかしくなりそうなほどに気持ちいい。
(頭、ぼうってする……)
もしかしたら、これって酸素不足なんじゃあ……と思うよりも先に。
蒔田さんの顔が、俺から離れていく。ようやく唇を解放されて、肩を揺らして大きく息を吸った。
「ま、きたさんっ……!」
抗議するように強くそう言う。けど、彼は俺のその態度なんて気にもしていない。
ただ自身の唇をぺろりと舌で舐めるだけだ。その仕草の艶っぽさに、なんとも言えない感情を覚えた。
「これくらいでへばるっていうことは、本当に初心ってことだな」
「さっきからそう言っているじゃないですか!」
もうなんか全然頭が回っていない。相手は極道の若頭なのだ。こんな強気な言葉を投げつけたら、最悪の場合殺されるかもしれないのに。
なのに、俺は蒔田さんを睨みつけることを止められなかった。
(……身体、熱い)
先ほど触れられた箇所が、じんじんと熱を持っているように感じられるのは気のせいじゃない。
その所為で俺が自身の身体を抱きしめていれば、蒔田さんが俯く俺の顎を指ですくい上げた。
彼の視線と俺の視線がしっかりと絡み合う。
「その態度は、割と好きかも」
「……は?」
彼の言葉の意味が、これまたすぐにはわからなかった。ぽかんと口を開けていれば、蒔田さんがけらけらと笑いだす。
なんていうか、腹が立つというか、気に障る笑い方だ。
「ま、せいぜい頑張って俺の暇つぶしの相手をしてくれ」
どうやら、彼にとっては俺との関係は暇つぶしでしかないらしい。うん、本気になられるよりもずっといいけどさ……。
(でも、なんていうか……これ、ありなの?)
愛人とか、普通で考えれば後ろめたい関係だ。日陰者っていうか。日向には出られない存在っていうか。
「なんか余計なこと考えてる?」
まるで俺の頭の中を見透かしたみたいに、蒔田さんがそう問いかけてくる。
「い、いや……」
ちょっと誤魔化すように笑ってそう言う。だって、この関係を解消されたら困るのは蒔田さんではなく、俺なんだし。
三千万なんて大金、簡単に用意することは出来ないんだから。
「ふぅん、変なところで余裕たっぷりって感じだな」
「は、はぁ!?」
余裕なんて、ちっともないんですけど!?
……と、言おうとして。また唇に蒔田さんの唇が触れた。驚いて開いた口の中に、もう一度舌を差し込まれる。
今度はわざとらしくぐちゅぐちゅって音を立ててくる。嫌だ、なんか、こんなの嫌なんだけど……!
「っはぁ、んぁっ」
唇が一瞬離れる隙を狙って、息を吸う。また唇を重ねられて、窒息しそうになって。
そんなことを何度か繰り返していると、今度は服の上から上半身をまさぐられた。
(あっ)
ツーッと身体を撫でられて、彼の手が俺の薄っぺらい胸に触れる。
そんなところ、触っても気持ちよくなんてないのに……と、抗議する間もなく。わさわさと触られて、息を呑んでしまう。
(ぁ、ちょ、そこ……)
その大きな手のひらが、シャツ越しに俺の胸を撫でてくる。なんか、これ、変な感じ……。
唇を塞がれている所為で、抗議の声を上げることも出来ない。硬いソファーに押し倒されている所為で、若干背中も痛い。
でも、それさえ関係なくなるほどに。この愛撫が気持ちいい。
「んっ」
蒔田さんの指が、俺の片方の胸をまさぐって、その中心に触れる。普段は特に気に留めることもない突起に触れて、ぐりっと刺激された。
「ぁ、あっ」
そのとき唇が離れていたこともあり、なんか甲高い声が俺の口から零れ出た。
……なんだろうか、今のは。
「割と感度はいいって感じか」
「か、んどって……」
「ん? お前センスあるなっていう話」
なんだそれは。愛人のセンスなんていらない。そんなものあるくらいならば、もっと別の才能が欲しい。
そう思っていれば、また乳首をぐりっと刺激されて、今度は爪で引っかかれる。シャツの薄い生地越しに触れられて、なんかじんじんとしてしまうような感覚だった。
「ぁ、あっ、あんっ」
いっそ、キスしてほしかった。
だって、そうすれば――こんな甲高い情けない声、上げないで済むのに。
「ぁあっ、だ、だめ……」
必死にぶんぶんと首を横に振る。口を塞がなくちゃって思って、自身の手で口を覆った。
けど、それに抗議するかのようにひときわ強く乳首を引っかかれた。……くぐもった声が、俺の口から漏れ出る。
「なぁ、声、上げろ」
蒔田さんが命令口調でそう言ってくる。……だけど。だって、外にさっきの人たちいるかもだし……!
「外に、人……」
「あぁ、いないよ」
俺の心配を蹴り飛ばすかのように、蒔田さんがにんまりと笑った。
「アイツらはこうなることを予想してただろうから。……今頃車で邸宅に戻ってるだろうよ」
「え……」
なんか、衝撃の事実だった。予想していたって、どういうことだよ――!
「ま、後で説明してやるよ。……とりあえず、今はあんたの身体を暴くのが先」
なんかめちゃくちゃ言葉が生々しいんですけれど!?
そんな俺の考えは、乳首をつねられたことで水の泡となって消えてしまった。
唇が離れた一瞬、俺の口から情けない声が漏れる。
でも、それを呑み込むかのようにまたキスをされる。舌を絡め取られて、じゅって吸われた。
それだけで、頭がおかしくなりそうなほどに気持ちいい。
(頭、ぼうってする……)
もしかしたら、これって酸素不足なんじゃあ……と思うよりも先に。
蒔田さんの顔が、俺から離れていく。ようやく唇を解放されて、肩を揺らして大きく息を吸った。
「ま、きたさんっ……!」
抗議するように強くそう言う。けど、彼は俺のその態度なんて気にもしていない。
ただ自身の唇をぺろりと舌で舐めるだけだ。その仕草の艶っぽさに、なんとも言えない感情を覚えた。
「これくらいでへばるっていうことは、本当に初心ってことだな」
「さっきからそう言っているじゃないですか!」
もうなんか全然頭が回っていない。相手は極道の若頭なのだ。こんな強気な言葉を投げつけたら、最悪の場合殺されるかもしれないのに。
なのに、俺は蒔田さんを睨みつけることを止められなかった。
(……身体、熱い)
先ほど触れられた箇所が、じんじんと熱を持っているように感じられるのは気のせいじゃない。
その所為で俺が自身の身体を抱きしめていれば、蒔田さんが俯く俺の顎を指ですくい上げた。
彼の視線と俺の視線がしっかりと絡み合う。
「その態度は、割と好きかも」
「……は?」
彼の言葉の意味が、これまたすぐにはわからなかった。ぽかんと口を開けていれば、蒔田さんがけらけらと笑いだす。
なんていうか、腹が立つというか、気に障る笑い方だ。
「ま、せいぜい頑張って俺の暇つぶしの相手をしてくれ」
どうやら、彼にとっては俺との関係は暇つぶしでしかないらしい。うん、本気になられるよりもずっといいけどさ……。
(でも、なんていうか……これ、ありなの?)
愛人とか、普通で考えれば後ろめたい関係だ。日陰者っていうか。日向には出られない存在っていうか。
「なんか余計なこと考えてる?」
まるで俺の頭の中を見透かしたみたいに、蒔田さんがそう問いかけてくる。
「い、いや……」
ちょっと誤魔化すように笑ってそう言う。だって、この関係を解消されたら困るのは蒔田さんではなく、俺なんだし。
三千万なんて大金、簡単に用意することは出来ないんだから。
「ふぅん、変なところで余裕たっぷりって感じだな」
「は、はぁ!?」
余裕なんて、ちっともないんですけど!?
……と、言おうとして。また唇に蒔田さんの唇が触れた。驚いて開いた口の中に、もう一度舌を差し込まれる。
今度はわざとらしくぐちゅぐちゅって音を立ててくる。嫌だ、なんか、こんなの嫌なんだけど……!
「っはぁ、んぁっ」
唇が一瞬離れる隙を狙って、息を吸う。また唇を重ねられて、窒息しそうになって。
そんなことを何度か繰り返していると、今度は服の上から上半身をまさぐられた。
(あっ)
ツーッと身体を撫でられて、彼の手が俺の薄っぺらい胸に触れる。
そんなところ、触っても気持ちよくなんてないのに……と、抗議する間もなく。わさわさと触られて、息を呑んでしまう。
(ぁ、ちょ、そこ……)
その大きな手のひらが、シャツ越しに俺の胸を撫でてくる。なんか、これ、変な感じ……。
唇を塞がれている所為で、抗議の声を上げることも出来ない。硬いソファーに押し倒されている所為で、若干背中も痛い。
でも、それさえ関係なくなるほどに。この愛撫が気持ちいい。
「んっ」
蒔田さんの指が、俺の片方の胸をまさぐって、その中心に触れる。普段は特に気に留めることもない突起に触れて、ぐりっと刺激された。
「ぁ、あっ」
そのとき唇が離れていたこともあり、なんか甲高い声が俺の口から零れ出た。
……なんだろうか、今のは。
「割と感度はいいって感じか」
「か、んどって……」
「ん? お前センスあるなっていう話」
なんだそれは。愛人のセンスなんていらない。そんなものあるくらいならば、もっと別の才能が欲しい。
そう思っていれば、また乳首をぐりっと刺激されて、今度は爪で引っかかれる。シャツの薄い生地越しに触れられて、なんかじんじんとしてしまうような感覚だった。
「ぁ、あっ、あんっ」
いっそ、キスしてほしかった。
だって、そうすれば――こんな甲高い情けない声、上げないで済むのに。
「ぁあっ、だ、だめ……」
必死にぶんぶんと首を横に振る。口を塞がなくちゃって思って、自身の手で口を覆った。
けど、それに抗議するかのようにひときわ強く乳首を引っかかれた。……くぐもった声が、俺の口から漏れ出る。
「なぁ、声、上げろ」
蒔田さんが命令口調でそう言ってくる。……だけど。だって、外にさっきの人たちいるかもだし……!
「外に、人……」
「あぁ、いないよ」
俺の心配を蹴り飛ばすかのように、蒔田さんがにんまりと笑った。
「アイツらはこうなることを予想してただろうから。……今頃車で邸宅に戻ってるだろうよ」
「え……」
なんか、衝撃の事実だった。予想していたって、どういうことだよ――!
「ま、後で説明してやるよ。……とりあえず、今はあんたの身体を暴くのが先」
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