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序章
prologue
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過去の俺が、今の俺を見たら、どんな感想を抱くんだろうか。
笑うんだろうか。悲しむんだろうか。はたまた――驚くんだろうか。
まぁ、一番可能性が高そうなのは三つ目だと思う。
だってまさか――俺が、極道の若頭の愛人になるなんて、思わないじゃん。
「うぅ~」
毎度毎度、こういうのは慣れないというか。身体が重くて怠くてたまらない。ついでに、なんか痛い。
敷布団に突っ伏しながら唸る俺。そんな俺の傍に、誰かが座る。
「……なんだ、まだへばってんのか?」
胡坐をかいて、俺の背中をつつく男。おずおずと顔を上げて、そいつを見つめる。
明るい茶色の髪の毛には、一房だけ赤が入っている。メッシュを入れていると言っていたので、多分それ。
上半身裸のその男には、刺青も入っていた。……見るからに、ヤバい人なんだよなぁ。
「というか、紡さんは俺がへばっている間、何処に言ってたんですか……」
若干恨めしく見つめながら、男にそう問いかける。すると、男は「別に」と言っていた。
「外で煙草吸ってただけだよ」
「……禁煙っていう考え、ないんですか?」
「生憎その予定はないね」
確かに仄かに煙草のにおいがする。……俺はあんまり好きじゃないけれど、強く言えるような立場じゃない。
「というか、お前、今日休みだろ?」
「……まぁ、そうですね」
今日は大学の講義もないし、居酒屋でのアルバイトは円満退職したし……。
(というか、辞めさせられたっていうのが正しいのか)
それも、この目の前の男の手によって。職場に迷惑をかけたくなかったら辞めろ。そんな脅し文句に、俺は屈した。
だって、店長も従業員もめちゃくちゃいい人ばっかりだったんだから。
「じゃあ、もう一回付き合え」
「は、はぁ!?」
だが、ちょっと待て。
そう思って重苦しい身体を這わせて布団から出ようとする。なのに、男のほうが動きは早くて。
あっという間に布団の上に縫い付けられてしまった。……やばい、ヤバいって。
「大体お前、俺に逆らう権利なんてないだろ」
「そ、そう、ですけどっ……!」
そりゃあ、こういう契約だから、仕方がないんだけど!
けど、でもっ……!
(この人の一回は、一回では済まないんだよ……!)
だから、正直、無理。無理無理無理っ!
俺はそう思うのに、容赦なく唇が重ねられて……結局、この日も俺は成す術もなく流されてしまうのだった。
笑うんだろうか。悲しむんだろうか。はたまた――驚くんだろうか。
まぁ、一番可能性が高そうなのは三つ目だと思う。
だってまさか――俺が、極道の若頭の愛人になるなんて、思わないじゃん。
「うぅ~」
毎度毎度、こういうのは慣れないというか。身体が重くて怠くてたまらない。ついでに、なんか痛い。
敷布団に突っ伏しながら唸る俺。そんな俺の傍に、誰かが座る。
「……なんだ、まだへばってんのか?」
胡坐をかいて、俺の背中をつつく男。おずおずと顔を上げて、そいつを見つめる。
明るい茶色の髪の毛には、一房だけ赤が入っている。メッシュを入れていると言っていたので、多分それ。
上半身裸のその男には、刺青も入っていた。……見るからに、ヤバい人なんだよなぁ。
「というか、紡さんは俺がへばっている間、何処に言ってたんですか……」
若干恨めしく見つめながら、男にそう問いかける。すると、男は「別に」と言っていた。
「外で煙草吸ってただけだよ」
「……禁煙っていう考え、ないんですか?」
「生憎その予定はないね」
確かに仄かに煙草のにおいがする。……俺はあんまり好きじゃないけれど、強く言えるような立場じゃない。
「というか、お前、今日休みだろ?」
「……まぁ、そうですね」
今日は大学の講義もないし、居酒屋でのアルバイトは円満退職したし……。
(というか、辞めさせられたっていうのが正しいのか)
それも、この目の前の男の手によって。職場に迷惑をかけたくなかったら辞めろ。そんな脅し文句に、俺は屈した。
だって、店長も従業員もめちゃくちゃいい人ばっかりだったんだから。
「じゃあ、もう一回付き合え」
「は、はぁ!?」
だが、ちょっと待て。
そう思って重苦しい身体を這わせて布団から出ようとする。なのに、男のほうが動きは早くて。
あっという間に布団の上に縫い付けられてしまった。……やばい、ヤバいって。
「大体お前、俺に逆らう権利なんてないだろ」
「そ、そう、ですけどっ……!」
そりゃあ、こういう契約だから、仕方がないんだけど!
けど、でもっ……!
(この人の一回は、一回では済まないんだよ……!)
だから、正直、無理。無理無理無理っ!
俺はそう思うのに、容赦なく唇が重ねられて……結局、この日も俺は成す術もなく流されてしまうのだった。
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