【R18】女騎士から聖女にジョブチェンジしたら、悪魔な上司が溺愛してくるのですが?

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

文字の大きさ
上 下
28 / 28
第3章 聖女と護衛騎士、通じ合う気持ち

進展させたい 1

しおりを挟む
 あの襲撃事件から、数週間が過ぎた。

 医者に診てもらったところ、セレーナの魔力は現在戻りつつあるらしい。

 そのため、あと三日程度安静にすれば、聖女としての職務に戻っても構わないということだった。

「……本当に、セレーナさまはお見舞いがお好きですねぇ」
「……まぁ、退屈だから」

 この日、セレーナはロロの見舞いに来ていた。

 ロロは神殿が管理する病院に入院しており、セレーナは起き上がれるようになってから三日と空けずにここにきている。

 ……というのも、ロロにしか相談できないことがあるためだ。

「それにしても、セレーナさまがアッシュさんの元部下だったなんて驚きですよ」

 ロロはそう言いながら、けらけらと笑う。……驚いているというよりは、からかっているという雰囲気だ。

 つい先日。セレーナがロロの見舞いに来ると、彼は「退屈だ」と愚痴をこぼしていた。その際に、なにか面白い話をしてほしいと強請られたのだ。

 そこで、セレーナは自分とアッシュの関係についてを話すことにした。

 ……誰か一人くらい、この話を知っておいてほしかったのだ。もちろん、クラリスは除いている。

「えぇ、私、元女騎士だから……」

 苦笑を浮かべながら、セレーナはそう言う。すると、ロロはまた笑った。

「そうでしょうねぇ。セレーナさまは、度胸がありますから」
「なによ、それ」

 ロロの言葉にそう返しながら、セレーナは窓側に置いてある花瓶の花を変えることにした。

 そうしていれば、不意にロロが「あっ」と声を上げる。

「だーから。セレーナさまはアッシュさんのことが、好きなんだ」
「……え」

 今、彼はなんと言ったのだろうか?

 聞き間違いでは無ければ――セレーナがアッシュのことを好きだと。確信しているかのようだった。

「え、え」
「あれ? もしかして、違いました?」

 ロロがきょとんとした表情でそう問いかけてくる。

 間違いではない。むしろ、当たっている。ただ、それを実際に指摘されると……困ってしまう。

「ま、間違いではない……けれど」
「あっ、もしかして、なんで俺がそれを知っているかってことですか?」

 セレーナの焦ったような表情を見て、ロロが楽しそうに笑う。が、傷が痛むらしく「いたた……」と声を上げていた。

「……笑うからよ」

 彼のそんな姿を見て、セレーナはため息をつく。しかし、ロロは反省した素振りなど見せない。ただ、笑うだけだ。

「いや、セレーナさまバレバレでしたし。……俺とアッシュさんへの対応、全然違いましたし」
「え、えぇっ……」

 まさか、態度が違っていたなんて――。

 そこまで思って、セレーナは顔から血の気が引くような感覚に襲われた。

「あ、そこまで思いつめないでくださいよ。俺、気にしちゃいませんから」

 ロロはそう言うけれど、セレーナからすれば気にするほかない。だって、もしかしたらロロに不快な思いをさせてしまったかもしれないのだ。

「あのですねぇ、セレーナさま。思いつめたような表情をされていますけれど、その態度は恋する女性として当然のものですからね?」

 あまりにもセレーナが思い詰めてしまったからなのか、ロロがそう声をかけてくる。

 ……その言葉に、少しだけ救われたような気がした。

「で? 好きだって、言ったんですか?」

 けれど、そうやって興味津々なのは困りものだ。

 そんなことを思いつつ、セレーナは眉を下げる。……そんなこと、ロロに言えるわけがない。

「い、言えるわけが、ないわよ……」

 が、口が滑った。

 それに、そもそも実際は好きだと言って断られている。でも、思い出したくなかったので言えていないということにした。

 ……そちらのほうが、まだ楽だから。

「えぇ~。まぁ、アッシュさんってカタブツっぽいし、扱いにくそうですもんねぇ」

 どうやら、ロロはそこまで深入りをしてくるつもりはないらしい。

「……でも、進展させたいって、思ってるでしょ?」

 ……しかし、彼は一体何処まで知っているのだろうか。

 ロロと話していると、セレーナは自身の頬が引きつっているような感覚に陥る。

 ……そもそも、夜の行為でさえ、最後までしていないのだ。

(私に魅力がない……わけでは、ないわよね……)

 セレーナを愛撫すると、アッシュも興奮してくれている。それはつまり、セレーナの痴態がそそらないというわけではないのだ。

「……もういっそ、押し倒して上に乗っかっちゃうとか!」
「そ、そんなのっ!」

 そんなこと、出来るわけがない。いや、本当はしたい……。

 相反する気持ちを抱きしめて、セレーナは顔に熱を溜めてしまう。視線を逸らす。

「ははっ、顔、真っ赤ですよ」

 ロロの言うとおりだ。

 そう思いつつセレーナが視線を下に向けていると、不意に病室の扉が開く。

 慌ててそちらに視線を向ければ、そこには――ほかでもないアッシュがいた。彼はなにやら差し入れらしきお菓子を持っており、ロロとセレーナのほうに歩いてくる。

「……セレーナさま」

 静かな声で、彼がセレーナのことを呼ぶ。……だけど。

(なんとなくだけれど、怒っていらっしゃるような……?)

 なんとなく、彼は怒っているような。そんな雰囲気だと思った。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...