【R18】女騎士から聖女にジョブチェンジしたら、悪魔な上司が溺愛してくるのですが?

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

文字の大きさ
上 下
21 / 28
第2章 聖女と護衛騎士、そして進展する関係

聖女としての初仕事 1

しおりを挟む
「……え、聖女としての、お仕事、ですか?」

 セレーナとアッシュが聖女と護衛騎士として再会して、しばしの日が経ち。

 その日、セレーナはアッシュ。そして、ロロと共にルベーグ神官に呼び出されていた。

「えぇ、そろそろいいかと思いまして。……まぁ、クラリスさまが判断されたのですが」

 ルベーグ神官は、その真っ赤な目を柔和に細めながら、そう言ってくる。が、その目が醸し出す空気はあまり好意的なものとは思えない。大方、まだまだ未熟なセレーナが表に出るのをよくは思っていないのだろう。

 かといって、大聖女クラリスの意向に歯向かうことはしない。彼だって自らの立場は惜しいはずなのだ。

「クラリスさま曰く、そろそろ経験を積んでおいたほうがいいということでございます」
「……はい」
「今回は初仕事ということですから、王都から近めの場所にすることが決まりました」

 そう言って、ルベーグ神官は一枚の地図を手渡してくる。

 そこには一つの大きな丸印がついており、その街は王都からいくつかの街を挟んだ先にある、商業都市。

 名前はマクモロー。商人の街と呼ばれるほどに、活気づいている街である。

「今回のお仕事は、街の大聖堂で祈りを捧げることでございます」
「……はい」
「初仕事ですので、緊張もするでしょう。ですが、その場合は二人の護衛騎士に、支えてもらいなさい」

 裏を返せば、それは「自分は支えるつもりはない」と言うことなのだろう。

 そんな彼の言葉の裏を読み取りつつ、セレーナはぎこちなく笑った。

 それから、ルベーグ神官に追い出されるように部屋を出て行く。部屋を出て神殿の廊下を歩く中、真っ先に言葉を発したのは予想通りロロだった。

「いやぁ、いきなりでしたね……」

 ロロは頭を掻きながらそう言ってくる。

 今日の彼はその青色の髪の毛を軽く撫でつけていた。大層騎士らしい風貌だ。

「……そうね、驚きだわ」

 彼の言葉に同意するようにセレーナが声を上げれば、アッシュがこほんと咳ばらいをする。

 ……どうやら、ロロを咎めているらしい。

「アッシュさん。ロロにそこまで厳しくしなくてもいいかと……」

 アッシュにだけ聞こえるようにそう告げれば、彼は淡々としていた。

「あぁいうタイプは、甘やかすと調子乗ります」

 ……さすがは、『悪魔の隊長』と呼ばれていた人物だ。部下をしごくのに容赦がない。

「そもそも、セレーナさまに軽口をたたくほうが、騎士としてダメなのです」
「……私は、気にしていないわ」

 ゆるゆると首を横に振りながら、そう伝える。

 護衛騎士となって以来、アッシュは度々ロロの口調や態度を咎めている。

 必ずセレーナを呼ぶ際はさまづけにすること。その口調は丁寧なものにするように、と。

 対するロロは特に気にした風もなく、自身の腕時計を見つめる。

「俺、そろそろ準備に行ってきます!」

 かと思えば、そう言って駆けだした。……まったく、忙しない男である。

 ロロの言う準備とは、旅の準備である。護衛騎士は聖女の巡礼に同行するため、二人がそれぞれ準備をする必要がある。

 もちろん、一人ずつだ。二人が二人とも、聖女の側を離れることはない。

(……本当に、ロロったら。……それにしても、こうやってまじまじと見ると、アッシュさんって色気があるわ)

 そんなことを思いつつ、セレーナはこっそりと息を吐く。

 あれ以来、アッシュは毎晩のようにセレーナの部屋に夜這いにやって来た。

 そして、セレーナの身体に快楽を覚え込ませる。まだ最後まで致していないとはいえ、このままでは純潔を奪われるのも時間の問題だろう。そう、思う。

(アッシュさんのことを見ていると、夜のことを思い出してしまう……)

 アッシュのあの昂った熱杭が、自身の身体を貫くのを想像すると……柄にもなく、身体が疼いてしまうのだ。

 彼のことが好きだ。彼に恋をしている。

 それは自覚しているのだが、言葉にすることは出来ない。

「……セレーナさま?」

 セレーナがなにも言わないためか、アッシュが声をかけてくる。

 彼のその表情は、上手く読み取れない。ただ、セレーナの考えていることが彼に伝わっていないことだけは、わかる。

 それが、せめてもの救いだろうか。

「い、いえ、なんでもない、わ」

 アッシュに対してこういう話し方をするのにも、ある程度は慣れてしまった。

 逆にセレーナに対してアッシュが丁寧な口調で話すのにも、慣れてしまった。

 けれど、前のように。セレーナ嬢と呼んでほしい。あわよくば、その低い声で呼び捨てにしてほしい。

(って、こんなことを考えるのはダメよ……)

 軽く首を横に振りながら、セレーナは自分に言い聞かせる。

 アッシュに下心を持ってしまっては、ダメなのだ。だって、彼は――所詮、仕事の一環でセレーナに快楽を覚え込ませているのだから。恋をしても、虚しいだけなのだから。

「……明日から、頑張りましょうね」
「……えぇ」

 不意にそう言われて、セレーナはこくんと首を縦に振る。

 すると、アッシュは口角を上げていた。その表情はやっぱり大層色っぽくて、セレーナの心臓がとくんと大きな音を立てた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...