【R18】俺のセフレはどうやら王国で人気の高い騎士団長らしい。

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

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第4章

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(じゅ、純粋――?)

 アベラールさんの言葉を頭の中で繰り返した。

 俺の表情はきっと間抜けなものだっただろう。アベラールさんの視線がほんの少し柔らかになる。

「えぇ、そもそもセザール坊ちゃんは割と自己中心的、身勝手な部分がありますので」

 ……そう、だっただろうか?

(確かに身勝手だったけど、自己中心的かと言われると……)

 むしろ、俺のペースに合わせてくれ、俺のことを気遣ってくれた。あと、大切にもしてくれた。

 自己中心的とは全然違う。献身的な性格だったはず。もちろん、誰にだって自己中心的な部分はあるけど。

「それに、セザール坊ちゃんに言い寄るのは自分に自信のあるお方ばかりでした。苛烈な人柄……といえば、伝わるでしょうか?」
「――あぁ」

 それには納得。騎士団長で侯爵家の人間。しかも、見た目麗しい。

 ここまで来ると、自分に自信のある人しか言い寄らない。

 俺はルーが騎士団長だとか高位貴族だとか知らなかったから、のんきに関係を続けていた。

 ――ルーに想いを寄せてしまった。

(ルーがセザールさまだって知っていたら、俺も気楽にセフレなんて続けていなかっただろうし)

 地味で平凡。特別な能力もない俺。こんな俺が人気の高い騎士団長には相応しいわけがない。

 根本がこれだから、すれ違っちゃったわけだし。

「なので、ここまで穏やかで純粋なお方を想われていたなんて……。感激しすぎて泣きそうでございます」
「え、えぇ……」

 アベラールさんが本当に涙を流し始めたので、うろたえた。

 俺が泣かせた感じにならないだろうか?

「な、泣かないでください。その、俺でよかったら。ずっとルーの側にいたい、です」

 この言葉が正解なのかはわからない。むしろ、間違えている気すらしてしまう。

 が、アベラールさんは黙って涙を拭った。文句を言われないっていうことは、これで正解――なんだろう。

「えぇ、今後とも末永く。どうか、セザール坊ちゃんをよろしくお願いいたします」

 けど、こんなにも深々と頭を下げられると、どういう反応をするといいかわからなくて。俺は目の前で手をぶんぶんと振る。

「俺のほうこそ、ふつつかな人間ですが、どうぞよろしくお願いします」

 返答、これであってるのかな……?

 一抹の不安を胸に抱き、俺も頭を下げた。

(しかしこれ、いつまで続けたらいいんだろう)

 そして、浮上した次の問題。俺もアベラールさんも頭を下げたまま動かないせいで、次の行動をどうしたらいいかわからないこと。

(俺から頭を上げるのは違う気がするし。かといって、アベラールさんから頭を上げることもないような気が……)

 沈黙の場。大人の男二人がそろって頭を下げている。シュールだ。とてもシュールだった。

(この後、本当にどうしたらいいんだろうか)

 混乱して、いっそ額に汗がにじむほどだ。先ほどまでとは全然違う意味で緊張している。

(誰か、来てくれ――!)

 心の中での叫びが伝わったのか、部屋の扉が開いた。それからすぐに「お前ら、なにをしてるんだ」と呆れた声が耳に届く。

「あぁ、セザール坊ちゃん」
「遅いから呼びに来てみれば、なんで二人そろって頭を下げて無言なんだ」

 ため息をつきつつも、ルーが俺のほうに寄ってくる。そのまま俺の顔を覗き込む。

 寝起きに見るには美しすぎる顔だった。

「ユーグ、行くぞ」
「……いく? どこに?」
「朝飯食べるんだろ」

 彼の言葉にハッとした。

 俺の様子を見て、ルーが笑う。綺麗だけどにんまりとした意地の悪い笑みだ。

「わかっ――」

 言葉が最後まで続かなかった。俺は目を丸くする。

 だって、そうじゃないか。

「ルー!」

 まさか、いきなりルーが俺の身体を横抱きにするなんて、誰が想像できるのだろう。
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