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第3章

⑫【※】

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 俺の言葉にルーが口元を歪めた。仕草がとても色っぽくて、胸がドキドキと高鳴っていく。

 こういうのも、悪くない。

「積極的だな」

 上着を脱ぎながらルーが意地悪に笑った。そういう意味じゃないのに!

「騎士服、汚れたら困るだろ……!」

 シーツをぎゅっと握りしめ、顔を背けた。すると、ルーはくすくすと声を上げる。からかわれたみたいだ。

 なんだろうか。今日は俺らしくない。いつも以上に心臓がドキドキとしているというか、ルーと交われるということに喜びを感じているというか――。

「まぁ、そうだな。ちょっと待ってろ」

 俺の頬を軽く撫で、ルーが自身のシャツに手をかけた。

 鍛え上げた上半身を惜しみなく露わにし、「これでいいか?」と問いかけてくる。

「……ん」

 首を縦に振ると、ルーの手は今度は俺の衣服を脱がし始めた。

 シャツのボタンを外し、俺の腕から引き抜く。もちろん俺の協力がないと難しいので、俺も言われるがままに身体を動かす。

 なんだろう。ルーの身体なんて見慣れているはずなのに、今日は本当にドキドキしている。

「ユーグ」

 甘ったるい声で俺の名前を呼びながら、ルーが上半身を密着させてくる。

 遮るものがないためか、体温が直に伝わってきた。どことなく熱いルーの身体に、自らも身を寄せる。

「なんていうか、緊張してるのか?」

 俺の目を見て、ルーが問いかけてくる。

 俺は視線を逸らした。今更緊張するのもおかしな話だ。けど、俺は確かに緊張している。

 恋人と肌を重ねることが、生まれて初めてだからだろう。

「……うん、ちょっとだけ。今更だけどさ」
「そうか」

 ルーは俺の言葉をバカにはしなかった。

 むしろ、俺の緊張をほぐすかのように頭を撫で、指先で髪の毛を梳いた。

 そして、俺の身体をするりと撫でる。触れたのは腰。

「今日、手加減しなくてもいいか?」

 そんなことを一々確認しないでほしい。

 喉元まで出かかった言葉を呑み込んで、俺はぎゅっと目を瞑った。

「す、きにして――」

 恥ずかしくて、穴があったら入ってしまいたいとはこういうことなんだろう。

「そっか。――可愛いな」

 俺のことを「可愛い」なんて言うのは、この世でルーくらいなものだろう。

 でも、不服というわけじゃない。ルーに「可愛い」って言われると嬉しいから。

 どちらともなく唇を重ねて、舌を絡め合う。何度も何度もキスをした。ただ、今までで一番甘くて幸せなキスだ。

(……ぁ、気持ちいい)

 なんていうか、キスだけでイケそうな気もする。

 ルーの舌が口内を弄るたびに、あっけなく快楽に呑まれてしまいそうになる。

 そんなの、かっこ悪くて無理だけど。

「っはぁ、ルー」

 唇を解放され、一番にルーのことを呼んだ。

 するとルーの手が俺の身体を撫でまわす。官能を強引に引き出すような触れ方のせいで、俺の息がどんどん荒くなる。

 腹の奥にずしんとした重い熱が溜まっていく。

「なぁ、もっと、触ってよ」

 あまりにもじれったいルーの手にしびれを切らし、俺は唇を尖らせながら強請った。

 淫らだと思われたって、構わない。だって俺の身体をこんな風にしたのはルーなんだから。

「はいはい」

 呆れたような返事をするルーだけど、どこか嬉しそうだ。

 その後、ルーの手が俺の胸元をまさぐり始める。指先が芯を持ち始めた乳首に触れて、弱い力でつねられる。

「んっ」

 声が漏れた。

 甘さを孕んだ熱っぽい声。ルーが息を呑む。

「ユーグはここが感じるもんな」

 意地悪く指摘され、顔に熱が溜まっていく。別にはじめから感じていたわけじゃない。

 ルーがいっぱい触って、弄って、こねくり回すから。そのせいで感じるようになっただけだ。
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