【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

文字の大きさ
上 下
61 / 67
第1部 第5章 違和感と謎の人

しおりを挟む
 師匠が立ち去ったあと、僕は身動き一つできなかった。キリアンの腕の中で戸惑い続けることしかできない。

「ジェリー。悪かったな」

 キリアンが心底申し訳なさそうな声で謝罪をしてくる。

 謝るくらいなら、はじめからしないでよ――と、言えるわけもなかった。

「ううん」

 力なく首を横に振る。キリアンは僕の身体をさらに強く抱きしめる。まるで僕の身体の震えを止めるかのような抱擁だった。

「俺はどんなジェリーでも好きだ。お前が魔族の血を引いていようと、変わることはない」

 僕の不安を読み取ったかのように、キリアンがまっすぐに言葉をぶつけてくる。僕はなにも反応することができない。

 うつむいて、唇を軽くかんだ。

「お前が俺の言葉で安心できるのなら、何度だって言う。だから、思いつめなくていい」

 キリアンは僕が思いつめやすいことをすっかり理解しているらしい。そして、僕を安心させる言葉なども理解している。

 僕はキリアンの顔を見つめた。精悍な男らしい顔が僕の歯科医いっぱいに広がって、僕はそっと目をつむる。

「キス、してほしい」

 きっと、これは気休め。キリアンが僕のことを本当に愛しているっていう証拠が欲しかった。

「お願い、僕のことを愛して」

 目をつむったままもう一度キスをねだる。キリアンはしばし迷って、僕の唇にキスを落とす。

 ついばむような、触れ合うだけのキス。角度を変えて何度か重なった唇同士が、熱くなっていく。ゆっくりと唇を開くと、キリアンが僕の口腔内に舌を差し込んだ。

「んっ、んぅ」

 自ら舌を絡めて、キリアンのキスに応えた。

 キスをしていると、熱は唇だけではなく、身体まで熱くしていく。脳内がとろけて、なにも考えられなくなっていく。

 ――それが、とても心地よかった。

 腕を伸ばして、キリアンの首に回す。

(もっと、もっとキスして、僕を欲して。僕を必要として――)

 僕が本当に欲しかったのは、キリアンからの愛なのか。はたまた、僕が存在する理由だったのか。それさえもわからない。

 身体を支配する熱は思考回路を溶かしていく。気持ちよくなりたいって、身体が快楽を求める。

「ね、キリアン――」

 僕の腕がキリアンの腕を引き寄せるとほぼ同時に、身体が荒々しくソファーに押し倒された。

 キリアンの顔が僕を見下ろす。発情した男の目。射抜かれると僕のお腹の奥はきゅんと主張していく。

 まだ一度しか身体を重ねていないのに。あのときの快楽が僕の頭と身体に呼び起こされる。

 下肢にたまる熱。視線を動かすと、キリアンのモノもわずかに主張を始めていた。

「ジェリー。あんまり煽るな。乱暴に襲い掛かりそうだ」

 彼の指先が僕のシャツの前ボタンを上から数個開ける。あらわになった鎖骨部分にキリアンが顔をうずめた。

「ここに印をつけたくなるだろ。ほかの輩に狙われないように、俺のものだという証を」

 鎖骨を舌でぺろりとなめられた。

 熱い。熱くてたまらない。

(顔も熱いし、お腹の奥も熱いよ。……キリアンが、欲しい)

 心の底からキリアンを求めてしまう。息をのんだ。無意識のうちに脚が動いて、キリアンの身体を逃がさないように抱き込んだ。

「ジェリー?」
「してもいいよ。僕をキリアンのモノにして。印をつけて」

 少なくとも印があるうちは、一人じゃないよね――?

「僕のことめちゃくちゃにしてよ。僕から離れられないくらい、夢中になってよ。僕を一人にしないでよ――」

 師匠がいない今、僕にはキリアンしかいないんだ。

 僕はキリアンに見捨てられたら、一人ぼっちになってしまう。

「そのためだったら、僕、なんでもするよ。苦しいことも、痛いことも。我慢するから」

 キリアンが僕を痛めつけたいなら、僕は我慢する。キリアンが僕を苦しめたいのなら、僕は耐える。

 だから、ね、お願いだから――。

「僕のこと、一人ぼっちにしないでよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

発情薬

寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。  製薬会社で開発された、通称『発情薬』。  業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。  社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

処理中です...