42 / 66
第1部 第4章 最悪とハジメテ
⑫
しおりを挟む
身体が冷えたらいけないと、くっついて眠ることはまだ理解できた。
それに、昨夜も似たようなものだったし――と。
でも、なんだろうか。後ろから抱きしめられているこの体勢は、さすがにちょっと違うような気がする。
(しかも、キリアンの息が首筋に当たる――!)
どこか生温かい息が僕の首筋に当たって、変な気分になってしまいそうだ。
僕は必死に首を横に振って、気持ちを落ち着ける。なのに、僕の腰に回されたキリアンの腕の感覚で、どうしてもこらえきれない。
「――ジェリー」
苦しそうに息を漏らした僕に、キリアンが心配そうに声をかけてくる。
「う、ううん、なんでもないよ――」
さすがに言えない。
純粋に心配してくれているキリアンに、なんか無性に変な気分になっちゃいそう――なんて、言えない。
キリアンが起きて僕の顔を覗き込んでくる。慌てて両手で自分の顔を隠す。
「おい、ジェリー」
「だ、ダメ、今は見ちゃダメ!」
絶対に変な表情をしてるだろうから――!
そんな僕の願いも虚しく、キリアンは僕の身体の向きを動かしてあおむけにさせた。
彼の手が僕の手をどける。僕は咄嗟に目をつむった。
「ジェリー、大丈夫か?」
心配そうな声が頭の上から降ってきた。本当に申し訳なくてたまらない。
「――き、りあん」
ゆっくりと瞼を上げた。視界に入ったキリアンの心配そうな表情に、心がチクチクと痛む。まるで針で刺されているかのようだ。
「ごめん、ね。その、ちょっと距離を取りたいっていうか――」
目を泳がせ、しどろもどろになりつつ僕は必死に自分の気持ちを伝える。
昨夜はそうじゃなかったのに。どうして、今になって……。
「だから、もうちょっと離れて寝ようよ。冷えたらいけないのはそうなんだけど、このままだと――」
――僕は、変な気持ちになってしまいそうだ。
口を開いて言おうとした。言えなかった。
驚いて目を見開く。キリアンが僕の唇に、自分の唇を重ねていた。
(――え?)
初めてのキスじゃない。二度目も三度目も四度目も経験している。なのに、僕の鼓動は相変わらずうるさい。
「んっ」
何度も何度も角度を変えて口づけられた。僕の手をつかむキリアンの手が動く。
自然な流れで僕の腕をひとまとめにして、頭上で固定した。
(な、にこれ……)
身をよじって逃げようとするのに、それさえ叶わない。
キリアンは自身の舌で僕の唇を割る。僕の口内に舌を差し込んで、蹂躙していく。
(ぁ、やっ――! 今、そんなことされたらっ……!)
――もっともっと、変な気持ちになっちゃうからぁ……!
という僕の心の底からの叫びは、キリアンに呑み込まれていく。
キリアンに舌先をじゅうって音を立てて吸い上げられて、僕の身体が大きく跳ねてしまった。
「ジェリー」
僕の名前を呼ぶキリアンの声が、艶めかしい。鼓動がうるさい。
「き、りあん。その、僕、あのね……その」
なんて言おう。
視線を彷徨わせて、僕が言葉を探していると。キリアンが僕の脚に下肢を押し付けてきたのがわかった。
ソコが硬くなっているのに、僕は気が付いてしまう。
「悪いな、あんまりにもジェリーが可愛いから」
僕を見つめるキリアンの目は獰猛な獣のようだった。
口でこそ「悪い」と言っているけど、心ではちっとも思っていないんだろう。その証拠に、僕の脚に下肢をぐりぐりとこすりつけてくる。
(こんなの、おかしいって――!)
思っているはずなのに。僕の口から零れたのは、色欲を孕んだような吐息だけ。
潤んだ目でキリアンを見上げてしまう。歪んだ視界の中、キリアンが僕を見下ろしている。
視線が僕を射貫いている。まるで、僕のことが欲しいって言っているみたいだった。
「き、りあんは」
「――あぁ」
「僕なんかで、興奮するの――?」
恐る恐る問いかけた。キリアンは口元を歪める。僕の耳元に唇を近づける。
「むしろ、ジェリーじゃないと興奮しない」
それに、昨夜も似たようなものだったし――と。
でも、なんだろうか。後ろから抱きしめられているこの体勢は、さすがにちょっと違うような気がする。
(しかも、キリアンの息が首筋に当たる――!)
どこか生温かい息が僕の首筋に当たって、変な気分になってしまいそうだ。
僕は必死に首を横に振って、気持ちを落ち着ける。なのに、僕の腰に回されたキリアンの腕の感覚で、どうしてもこらえきれない。
「――ジェリー」
苦しそうに息を漏らした僕に、キリアンが心配そうに声をかけてくる。
「う、ううん、なんでもないよ――」
さすがに言えない。
純粋に心配してくれているキリアンに、なんか無性に変な気分になっちゃいそう――なんて、言えない。
キリアンが起きて僕の顔を覗き込んでくる。慌てて両手で自分の顔を隠す。
「おい、ジェリー」
「だ、ダメ、今は見ちゃダメ!」
絶対に変な表情をしてるだろうから――!
そんな僕の願いも虚しく、キリアンは僕の身体の向きを動かしてあおむけにさせた。
彼の手が僕の手をどける。僕は咄嗟に目をつむった。
「ジェリー、大丈夫か?」
心配そうな声が頭の上から降ってきた。本当に申し訳なくてたまらない。
「――き、りあん」
ゆっくりと瞼を上げた。視界に入ったキリアンの心配そうな表情に、心がチクチクと痛む。まるで針で刺されているかのようだ。
「ごめん、ね。その、ちょっと距離を取りたいっていうか――」
目を泳がせ、しどろもどろになりつつ僕は必死に自分の気持ちを伝える。
昨夜はそうじゃなかったのに。どうして、今になって……。
「だから、もうちょっと離れて寝ようよ。冷えたらいけないのはそうなんだけど、このままだと――」
――僕は、変な気持ちになってしまいそうだ。
口を開いて言おうとした。言えなかった。
驚いて目を見開く。キリアンが僕の唇に、自分の唇を重ねていた。
(――え?)
初めてのキスじゃない。二度目も三度目も四度目も経験している。なのに、僕の鼓動は相変わらずうるさい。
「んっ」
何度も何度も角度を変えて口づけられた。僕の手をつかむキリアンの手が動く。
自然な流れで僕の腕をひとまとめにして、頭上で固定した。
(な、にこれ……)
身をよじって逃げようとするのに、それさえ叶わない。
キリアンは自身の舌で僕の唇を割る。僕の口内に舌を差し込んで、蹂躙していく。
(ぁ、やっ――! 今、そんなことされたらっ……!)
――もっともっと、変な気持ちになっちゃうからぁ……!
という僕の心の底からの叫びは、キリアンに呑み込まれていく。
キリアンに舌先をじゅうって音を立てて吸い上げられて、僕の身体が大きく跳ねてしまった。
「ジェリー」
僕の名前を呼ぶキリアンの声が、艶めかしい。鼓動がうるさい。
「き、りあん。その、僕、あのね……その」
なんて言おう。
視線を彷徨わせて、僕が言葉を探していると。キリアンが僕の脚に下肢を押し付けてきたのがわかった。
ソコが硬くなっているのに、僕は気が付いてしまう。
「悪いな、あんまりにもジェリーが可愛いから」
僕を見つめるキリアンの目は獰猛な獣のようだった。
口でこそ「悪い」と言っているけど、心ではちっとも思っていないんだろう。その証拠に、僕の脚に下肢をぐりぐりとこすりつけてくる。
(こんなの、おかしいって――!)
思っているはずなのに。僕の口から零れたのは、色欲を孕んだような吐息だけ。
潤んだ目でキリアンを見上げてしまう。歪んだ視界の中、キリアンが僕を見下ろしている。
視線が僕を射貫いている。まるで、僕のことが欲しいって言っているみたいだった。
「き、りあんは」
「――あぁ」
「僕なんかで、興奮するの――?」
恐る恐る問いかけた。キリアンは口元を歪める。僕の耳元に唇を近づける。
「むしろ、ジェリーじゃないと興奮しない」
185
お気に入りに追加
833
あなたにおすすめの小説
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
「ねぇ、俺以外に触れられないように閉じ込めるしかないよね」最強不良美男子に平凡な僕が執着されてラブラブになる話
ちゃこ
BL
見た目も頭も平凡な男子高校生 佐藤夏樹。
運動神経は平凡以下。
考えていることが口に先に出ちゃったり、ぼうっとしてたりと天然な性格。
ひょんなことから、学校一、他校からも恐れられている不良でスパダリの美少年 御堂蓮と出会い、
なぜか気に入られ、なぜか執着され、あれよあれよのうちに両思い・・・
ヤンデレ攻めですが、受けは天然でヤンデレをするっと受け入れ、むしろラブラブモードで振り回します♡
超絶美形不良スパダリ✖️少し天然平凡男子
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる