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第1部 第4章 最悪とハジメテ
②
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「キリアン。あの、僕はね――」
――なにか、言わなくちゃ。
その一心で口を開くものの、上手く言葉が出てこない。視線を泳がせて、僕は言葉を必死に探した。
(なにを言ったらいいんだろ……)
このままだと大変なことになっちゃいそう――と思ったとき。
お部屋の扉が乱暴にノックされた。驚いて肩を跳ねさせる僕。キリアンは「ちっ」と舌打ちをした後、僕から離れていく。絡めていた指が解かれたとき、僕はどうしてか寂しさを覚えてしまった。
「なんだ」
キリアンがぶっきらぼうに扉に向かって言葉を返せば、勢いよく扉が開く。
そして、顔を覗かせたのはエカードさん。けど、彼の様子は普段とは全然違う。慌ただしい。
「至急来客だ」
「こんな朝早くからくる客なんて追い返しておけばいい」
「そういうわけにもいかなくてだな――」
エカードさんがなにかを言おうとしたとき。彼の後ろから誰かが顔を覗かせたのが見えた。
「……おい」
その人物を見たとき、キリアンが露骨に表情を歪めた。
というか、あのお方って!
(シデリス殿下!?)
金髪は短くてさらりとしている。大きなエメラルドのような目はぱっちりとしていて、美しい。背丈は僕よりも少し高くて、身体は細い。
まさに理想の王子殿下という容姿を持つ彼は、シデリス・ステパット殿下。ステパット王国の第四王子殿下である。
(って、いやいや、さすがにこんなところに王子殿下がいらっしゃるわけが――!)
多分そっくりさんかなにかだろう。
僕は自分自身を納得させようとした。けど、キリアンが「シデリス」と名前を呼んだことにより、僕は卒倒しそうになった。
(まさかの本物! しかも、キリアンは呼び捨てにして――!)
それって、不敬罪に当たるんじゃないだろうか?
怯えてびくびくとする僕を気にする様子もなく、シデリス殿下は呆れたような表情を浮かべる。
「全く、キミはなにも変わっていない。その傲慢な態度、僕の前でくらい隠せと言っているというのに」
「残念だが、俺はお前を敬う気はまったくないんでな」
それはもう処刑レベルの言葉だよ!
慌てふためく僕に気が付いたのか、シデリス殿下はキリアンの身体を押しのけて室内に入ってくる。
キリアンがシデリス殿下を止めに動いたみたいだけど、殿下のほうが早かった。
「キミは――あぁ、ジェリーか」
「え、は、はい」
「キミのことはアクセルから聞いている。なんでも、優秀な魔法使いなんだって?」
シデリス殿下のエメラルドのような瞳が僕を映していた。
眩しすぎて、卒倒しそうだった。なんだろう。美形って怖い。
「ゆ、優秀だなんて恐れ多い……です」
視線をさまよわせる。僕はなにを言えばいいかわからなかった。
今すぐにでも俯きたい気持ちをこらえて、しどろもどろになりながらも言葉を返していく。
「いや、勇者一行に選ばれるだけでも、大したものと言えるだろう」
シデリス殿下が僕の言葉に返事をして、お一人でうんうんとうなずかれる。
彼の姿は可愛らしいというか、愛らしいというか。この人、僕よりも年上のはずなんだけどな……。
「おい、シデリス。ジェリーから離れろ」
現実逃避をしかけた僕を戻したのは、キリアンの冷たい声だった。あ、相変わらず王子殿下に対して不敬!
「キリアン、それは不敬罪――」
口を挟もうとすると、シデリス殿下は手で僕を制する。
「問題ない。コイツとは幼少期から付き合いがあってな。ま、いわば幼馴染というものだ」
「――幼馴染」
なんだか、どこかで聞いたことがあるような単語――。
(え、もしかして、昨夜キリアンが話していた幼馴染って――)
まさかまさかで、シデリス殿下のことだったんだろうか。
僕が視線だけでキリアンに問うと、彼は首を縦に振った。
う、嘘でしょ! 王子殿下と幼馴染ってどういうこと!?
――なにか、言わなくちゃ。
その一心で口を開くものの、上手く言葉が出てこない。視線を泳がせて、僕は言葉を必死に探した。
(なにを言ったらいいんだろ……)
このままだと大変なことになっちゃいそう――と思ったとき。
お部屋の扉が乱暴にノックされた。驚いて肩を跳ねさせる僕。キリアンは「ちっ」と舌打ちをした後、僕から離れていく。絡めていた指が解かれたとき、僕はどうしてか寂しさを覚えてしまった。
「なんだ」
キリアンがぶっきらぼうに扉に向かって言葉を返せば、勢いよく扉が開く。
そして、顔を覗かせたのはエカードさん。けど、彼の様子は普段とは全然違う。慌ただしい。
「至急来客だ」
「こんな朝早くからくる客なんて追い返しておけばいい」
「そういうわけにもいかなくてだな――」
エカードさんがなにかを言おうとしたとき。彼の後ろから誰かが顔を覗かせたのが見えた。
「……おい」
その人物を見たとき、キリアンが露骨に表情を歪めた。
というか、あのお方って!
(シデリス殿下!?)
金髪は短くてさらりとしている。大きなエメラルドのような目はぱっちりとしていて、美しい。背丈は僕よりも少し高くて、身体は細い。
まさに理想の王子殿下という容姿を持つ彼は、シデリス・ステパット殿下。ステパット王国の第四王子殿下である。
(って、いやいや、さすがにこんなところに王子殿下がいらっしゃるわけが――!)
多分そっくりさんかなにかだろう。
僕は自分自身を納得させようとした。けど、キリアンが「シデリス」と名前を呼んだことにより、僕は卒倒しそうになった。
(まさかの本物! しかも、キリアンは呼び捨てにして――!)
それって、不敬罪に当たるんじゃないだろうか?
怯えてびくびくとする僕を気にする様子もなく、シデリス殿下は呆れたような表情を浮かべる。
「全く、キミはなにも変わっていない。その傲慢な態度、僕の前でくらい隠せと言っているというのに」
「残念だが、俺はお前を敬う気はまったくないんでな」
それはもう処刑レベルの言葉だよ!
慌てふためく僕に気が付いたのか、シデリス殿下はキリアンの身体を押しのけて室内に入ってくる。
キリアンがシデリス殿下を止めに動いたみたいだけど、殿下のほうが早かった。
「キミは――あぁ、ジェリーか」
「え、は、はい」
「キミのことはアクセルから聞いている。なんでも、優秀な魔法使いなんだって?」
シデリス殿下のエメラルドのような瞳が僕を映していた。
眩しすぎて、卒倒しそうだった。なんだろう。美形って怖い。
「ゆ、優秀だなんて恐れ多い……です」
視線をさまよわせる。僕はなにを言えばいいかわからなかった。
今すぐにでも俯きたい気持ちをこらえて、しどろもどろになりながらも言葉を返していく。
「いや、勇者一行に選ばれるだけでも、大したものと言えるだろう」
シデリス殿下が僕の言葉に返事をして、お一人でうんうんとうなずかれる。
彼の姿は可愛らしいというか、愛らしいというか。この人、僕よりも年上のはずなんだけどな……。
「おい、シデリス。ジェリーから離れろ」
現実逃避をしかけた僕を戻したのは、キリアンの冷たい声だった。あ、相変わらず王子殿下に対して不敬!
「キリアン、それは不敬罪――」
口を挟もうとすると、シデリス殿下は手で僕を制する。
「問題ない。コイツとは幼少期から付き合いがあってな。ま、いわば幼馴染というものだ」
「――幼馴染」
なんだか、どこかで聞いたことがあるような単語――。
(え、もしかして、昨夜キリアンが話していた幼馴染って――)
まさかまさかで、シデリス殿下のことだったんだろうか。
僕が視線だけでキリアンに問うと、彼は首を縦に振った。
う、嘘でしょ! 王子殿下と幼馴染ってどういうこと!?
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