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第1部 第3章 優しい人、不思議な気持ち
⑭
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僕の言葉にキリアンは「は?」と心底不快そうな声を上げた。
でも、今回ばかりは僕も引かない。キリアンは間違いなく、幼馴染さんのことを大切に思っている。
「だって、キリアンは幼馴染さんのことを信頼しているんでしょ?」
首を横に倒して言うと、キリアンは気まずそうに視線を逸らした。
それは肯定の返事のように見える。僕は「ふふっ」と声を上げて笑う。
「――なに、笑ってるんだよ」
「ううん、僕ね、夢だったんだ。こういう風に友人と他愛もない話をすることが」
故郷では浮いていたし、師匠と暮らし始めてからもこういうのとは無縁だった。
だから、なんだか楽しい。もちろん、仕事だから楽しんでばかりじゃダメだってわかってはいる。ただ、まるでお泊り会みたいだなぁって。
「ジェリーは俺のことを友人だと思っているのか?」
「違うの?」
キリアンの問いかけに、疑問で返す。キリアンは不本意そうな表情をしたけど、少ししてあきらめたように息を吐いて額を押さえた。
「違う――わけでも、ないんだろうな」
「なんなの、それ」
「いや、今は友人でいいっていうことだ」
今は――っていうことは、いずれ友人ではなくなるのだろうか?
……そんな日、来ないといいなって思うのは身勝手だろうか?
「ま、今はそんなことを考えている場合じゃないな。とにかく疲れただろ。寝るぞ」
「そう、だね」
キリアンの言葉にうなずいた。簡易の寝台は僕が使えばいいや――と思って、僕が毛布の中に潜り込もうとしたとき。キリアンに止められた。
「――キリアン?」
「お前はそっちで寝るつもりなのか?」
「そうだけど」
当然じゃんか。キリアンは勇者さまなんだ。お供の僕が簡易の寝台を使うに決まっている。
「さすがにそれはダメだろ。お前はか弱いんだから」
「か、よわい?」
「華奢だし、儚く見えるし。――心配だ」
別に簡易の寝台が僕のことを取って食うわけじゃないんだけど……と言える雰囲気ではない。キリアンは真剣に言っている。
「じゃ、じゃあどうするの……?」
「決まってるだろ。俺と一緒にあっちを使えばいい」
キリアンが指さしたのは、部屋にある備え付けの寝台。
じょ、冗談だよね?
「同じように使うって?」
「一緒に寝ればいいだろ」
冗談だよね!?
「ま、待ってよ。そりゃあ、普通の寝台よりは多少広いけどさ……」
さすがに大人の男二人が寝るには、手狭じゃないかなぁ……って。
「ジェリーは小さいから大丈夫だ」
「大丈夫じゃないって!」
僕の身体を軽々と抱き上げて、キリアンは備え付けの寝台のほうに向かう。
そのまま僕を寝台の上に下ろすと、彼は僕の身体に毛布をかぶせた。
(いやいやいや、これはさすがに!)
これって、友人同士だと普通のことなんだろうか? 違うような気もする。
うろたえる僕をよそに、キリアンは当然のように寝台に横になる。僕は壁際にいるせいで、逃げることは出来そうにない。
「おい、寝るぞ」
キリアンは本気なのだろうか?
こんな僕と一緒に眠るなんて。
「ほ、本当に、寝るの?」
「当たり前だろ。寝ないと疲れは取れない」
そういう意味じゃないんですけど!?
「別に取って食おうっていうわけじゃない。襲うわけでもない。だから、いいだろ」
「そういう心配ではなくて、ですね――」
「もちろん、そっちがその気なら――シテもいいけど?」
……もう、従うほかなかった。
僕は渋々寝台に横になる。壁のほうで小さくなっていると、キリアンに当然のように抱き寄せられてしまう。
結果、気が付けば僕はキリアンに抱きしめられる形になっていた。
「き、キリアン! 近いよ」
さすがにこれはないない!
僕が逃げようとしたのを察したかのように、キリアンは僕の身体を抱きしめる腕に力を込めた。
――なんで、どうして、どうしてこうなったの!?
混乱する頭。目が回る。回って、回って――僕の意識が遠のいていく。
(あぁ、もう、寝ちゃおう……)
こうなったら現実逃避だ。
僕は目を瞑って、深呼吸をした。すると、あっさりと夢の世界へと落ちていくことが出来て。
「――ジェリー」
頭のてっぺんにちゅっと口づけられたような気もしたけど、僕は襲いくる睡魔に抗うことが出来なかった。
でも、今回ばかりは僕も引かない。キリアンは間違いなく、幼馴染さんのことを大切に思っている。
「だって、キリアンは幼馴染さんのことを信頼しているんでしょ?」
首を横に倒して言うと、キリアンは気まずそうに視線を逸らした。
それは肯定の返事のように見える。僕は「ふふっ」と声を上げて笑う。
「――なに、笑ってるんだよ」
「ううん、僕ね、夢だったんだ。こういう風に友人と他愛もない話をすることが」
故郷では浮いていたし、師匠と暮らし始めてからもこういうのとは無縁だった。
だから、なんだか楽しい。もちろん、仕事だから楽しんでばかりじゃダメだってわかってはいる。ただ、まるでお泊り会みたいだなぁって。
「ジェリーは俺のことを友人だと思っているのか?」
「違うの?」
キリアンの問いかけに、疑問で返す。キリアンは不本意そうな表情をしたけど、少ししてあきらめたように息を吐いて額を押さえた。
「違う――わけでも、ないんだろうな」
「なんなの、それ」
「いや、今は友人でいいっていうことだ」
今は――っていうことは、いずれ友人ではなくなるのだろうか?
……そんな日、来ないといいなって思うのは身勝手だろうか?
「ま、今はそんなことを考えている場合じゃないな。とにかく疲れただろ。寝るぞ」
「そう、だね」
キリアンの言葉にうなずいた。簡易の寝台は僕が使えばいいや――と思って、僕が毛布の中に潜り込もうとしたとき。キリアンに止められた。
「――キリアン?」
「お前はそっちで寝るつもりなのか?」
「そうだけど」
当然じゃんか。キリアンは勇者さまなんだ。お供の僕が簡易の寝台を使うに決まっている。
「さすがにそれはダメだろ。お前はか弱いんだから」
「か、よわい?」
「華奢だし、儚く見えるし。――心配だ」
別に簡易の寝台が僕のことを取って食うわけじゃないんだけど……と言える雰囲気ではない。キリアンは真剣に言っている。
「じゃ、じゃあどうするの……?」
「決まってるだろ。俺と一緒にあっちを使えばいい」
キリアンが指さしたのは、部屋にある備え付けの寝台。
じょ、冗談だよね?
「同じように使うって?」
「一緒に寝ればいいだろ」
冗談だよね!?
「ま、待ってよ。そりゃあ、普通の寝台よりは多少広いけどさ……」
さすがに大人の男二人が寝るには、手狭じゃないかなぁ……って。
「ジェリーは小さいから大丈夫だ」
「大丈夫じゃないって!」
僕の身体を軽々と抱き上げて、キリアンは備え付けの寝台のほうに向かう。
そのまま僕を寝台の上に下ろすと、彼は僕の身体に毛布をかぶせた。
(いやいやいや、これはさすがに!)
これって、友人同士だと普通のことなんだろうか? 違うような気もする。
うろたえる僕をよそに、キリアンは当然のように寝台に横になる。僕は壁際にいるせいで、逃げることは出来そうにない。
「おい、寝るぞ」
キリアンは本気なのだろうか?
こんな僕と一緒に眠るなんて。
「ほ、本当に、寝るの?」
「当たり前だろ。寝ないと疲れは取れない」
そういう意味じゃないんですけど!?
「別に取って食おうっていうわけじゃない。襲うわけでもない。だから、いいだろ」
「そういう心配ではなくて、ですね――」
「もちろん、そっちがその気なら――シテもいいけど?」
……もう、従うほかなかった。
僕は渋々寝台に横になる。壁のほうで小さくなっていると、キリアンに当然のように抱き寄せられてしまう。
結果、気が付けば僕はキリアンに抱きしめられる形になっていた。
「き、キリアン! 近いよ」
さすがにこれはないない!
僕が逃げようとしたのを察したかのように、キリアンは僕の身体を抱きしめる腕に力を込めた。
――なんで、どうして、どうしてこうなったの!?
混乱する頭。目が回る。回って、回って――僕の意識が遠のいていく。
(あぁ、もう、寝ちゃおう……)
こうなったら現実逃避だ。
僕は目を瞑って、深呼吸をした。すると、あっさりと夢の世界へと落ちていくことが出来て。
「――ジェリー」
頭のてっぺんにちゅっと口づけられたような気もしたけど、僕は襲いくる睡魔に抗うことが出来なかった。
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