【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

文字の大きさ
上 下
21 / 67
第1部 第3章 優しい人、不思議な気持ち

しおりを挟む
(え――?)

 僕は驚く。うっすらと開いた唇をこじ開けるように、口の中になにかが入ってきた。

(な、なななっ!)

 ぬるりとした分厚くて熱いもの。それは、キリアンの舌だ。

 キリアンの舌は僕の口内に入ってきて、容赦なく口の中をかき回していく。

 逃げようとするのに、逃げられない。いつの間にかキリアンが僕の後頭部を掴んでいるせいだった。

「んんっ、ふぅ、ぅ」

 息も絶え絶えになりながら、僕はキリアンから逃れようとする。もちろん、実際に逃げることが出来るわけがない。力の差は圧倒的だ。

 僕の口内をキリアンの舌かかき回す。最後とばかりに僕の口の中に残っていた飴玉という薬をかすめ取った。

(――あっ)

 僕の口からキリアンの口に移動した薬。この行動について、僕はすぐには理解が追い付かない。

 理解できたのは、キリアンが僕から顔を離したとき。彼が飴玉のように薬をガリッとかみ砕いた音で僕は現実に戻ってくる。

「き、きりあ――」
「まぁ、それなりってところだな」

 キリアンは僕のことを無視して、薬の感想を述べる。

「味は悪くないが、全体的に薄いといったところか」

 彼が淡々と感想を述べている。僕はそれどころじゃない。

(き、キス、キスしちゃった……!)

 しかも、深いほう! 挙句、口移しのおまけつきだ。

 ――ありえない。

(二回目、だよね。でも、気分は一回目なんだけど!)

 少し前のキスは忘れようと必死だったのに。二回もキスされてしまったら、忘れることなんて出来そうにない。

 視線をさまよわせる僕をよそに、キリアンはもう一度薬をガリッとかみ砕いた。彼の男らしい喉が動くのが、妙に艶めかしい。

「ジェリー?」

 キリアンをぼうっと見つめていると、彼は小首をかしげて僕のことを呼んだ。

 彼の声にはまるで先ほどのキス、口づけなんてなかったような雰囲気。気にしているのは僕だけだって、思い知らされてしまう。

「キリアンは、その。誰にでもこういうことを、するの?」

 この余裕な態度はきっとそうに違いない!

 彼は恋愛に興味はないみたいだけど、遊んできた可能性は十分にある。

 恋愛と遊びは同じようで全然違うと、師匠が言っていた。

「は?」
「だって、キス、慣れてるような気がして……」

 小さな声でぼそぼそと言うのが精いっぱいだ。

 自分の唇を指でなぞる。なんだかじぃんと熱いような気がする。

「……お前、なに言って」
「ぼ、僕は……キリアンとのキスが、初めてだったんだけど!?」

 彼に顔をぐいっと近づけて、叫んだ。キリアンは一瞬驚いたようだけど、すぐにふっと口元を緩める。

 その仕草だけで経験の差を見せつけられているような気がした。

「そうだな――って、言ったらどうする?」
「――は?」

 言ったらどうするって、別に僕には関係ないんだけど。

 僕は戸惑った。キリアンは戸惑う僕を見て唇の端を上げる。意地悪な表情も恐ろしいほどに色っぽい。

 心臓がとくとくと早足になる。なんだか、顔も熱い気がする。

「――なんてな」

 しかし、キリアンは僕の思考を遮るかのように、前髪の上から僕の額をたたいた。

 小さな力だったため、まったく痛くない。ただ現実に戻ってくるには十分な絶妙な力加減。

「別にそういうわけじゃない。誰にでもするような軽いやつは嫌いだ」
「えっと」

 彼はなにを言っているんだろうか?

 間抜けにも口を開けてキリアンを見つめる僕に、彼は「はっ」と声を上げて笑う。

「ジェリーだけだよ、俺がこんなことをするのは」

 キリアンが当然のように言う。……ぼ、くだけ?

(僕、だけ?)

 僕だけ……僕だけ!?

(え、な、なんで!? というか、僕ってキリアンにとって――)

 どういう存在なんだろうか。

 そう思うともうどうすることも出来なくて、僕は頬に熱がカーっと溜まるのを実感することしか出来ない。

 い、意味が。本当に意味が分からないんだけど!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

オメガパンダの獣人は麒麟皇帝の運命の番

兎騎かなで
BL
 パンダ族の白露は成人を迎え、生まれ育った里を出た。白露は里で唯一のオメガだ。将来は父や母のように、のんびりとした生活を営めるアルファと結ばれたいと思っていたのに、実は白露は皇帝の番だったらしい。  美味しい笹の葉を分けあって二人で食べるような、鳥を見つけて一緒に眺めて楽しむような、そんな穏やかな時を、激務に追われる皇帝と共に過ごすことはできるのか?   さらに白露には、発情期が来たことがないという悩みもあって……理想の番関係に向かって奮闘する物語。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

ペットの餌代がかかるので、盗賊団を辞めて転職しました。

夜明相希
BL
子供の頃から居る盗賊団の護衛として、ワイバーンを使い働くシグルトだが、理不尽な扱いに嫌気がさしていた。 ▽…シグルト視点 ▼…ユーノ視点 キャラクター シグルト…20代前半 竜使い 黒髪ダークブルーの目 174cm ヨルン…シグルトのワイバーン シグルトと意志疎通可 紫がかった銀色の体と紅い目 ユーノ…20代半ば 白魔法使い 金髪グリーンの瞳 178cm 頭…中年 盗賊団のトップ 188cm ゴラン…20代半ば 竜使い 172cm トルステン…30代半ば 182cm 郵便配達店店主 短髪赤毛 赤銅色の瞳

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...