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第1部 第3章 隠し事と対面
⑤
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強く目をつむった。ナイトハルトの情欲のこもった視線から逃れるように身をよじる。
「逃げるな」
冷たい声でぴしゃりと命じられ、天翔は身を固くする。
ナイトハルトの指が天翔のシャツのボタンに触れた。ぷつりぷつりと音を立てて外されて、胸元を露わにされてしまう。
「お前は性交渉の経験がないらしいな。――俺がたくさん教えてやる」
彼の唇が天翔の薄っぺらい胸元に触れる。
唇が胸をなぞると、不思議なほどにじんじんと甘い痺れが身体を襲った。口から変な声が出てしまいそうで、唇を強くかむ。
「声は我慢しなくていい。どうせ俺しか聞いていない」
「だ、って――!」
一番聞かれたくない相手は、ほかでもないナイトハルトだった。
(変な声だってからからかわれたくない――!)
これはきっと、意地なのだ。そして、意地を張ることができるくらいに、天翔の酔いは醒めていた。
目をつむって唇をかんでいると、全神経がナイトハルトに蹂躙されているような感覚だった。耐えきれずに小さな息が漏れて、身体の奥底がじんわりと熱くなっていく。
(こんなのしたくない! 俺がこういう風にしてほしかった相手は――)
ナイトハルトではない。それがわかっているのに、どうしてかナイトハルトの顔しか思い浮かばなかった。
今まであんなにも恋い焦がれていた響也ではなく、ナイトハルトの姿が浮かんでしまった。
(なんで、なんで!)
自分はナイトハルトに恋なんてしていないはずなのに――。
まだ、響也が好きなはずなのに。
「ほかのことなんて考えるな。俺のことだけ考えていればいい」
ナイトハルトの唇が天翔の胸の尖りに近づいていく。普段は意識もしていない場所に触れた温かいものに、腰が跳ねた。
「やぁっ!」
我慢していた声が、ついに漏れ出てしまった。
甘ったるくて媚びるような声。まるで女性のもののようで、一気に顔に熱がたまる。
「ひっ、やめ、やめて……!」
ナイトハルトの舌先が天翔の片方の乳首をなぶった。ちろちろとなめられて、温かい口腔内に導かれる。
それだけでおかしくなりそうなほどに気持ちよくて、下履きの中が大変なことになっているのがわかった。
(やばい。半分くらい、勃ってる)
乳首をいじられただけで勃てるなど、どんな淫乱だろうか。
「あ、あぁっ! ないと、はるとさんっ!」
だめだ。これ以上は本当にダメだ――!
頭の中にガンガンと警告音がなって、目元から涙があふれた。
首を横に振るたびに涙が飛び散って、シーツを濡らす。
「泣くな。泣いて止めることができるのなら、俺はこんなことしない」
ナイトハルトが天翔の耳元に唇を寄せた。彼の言葉の意味が、すぐには理解できない。
「止まることができるのならば、俺だって止まりたい。だが、ここで甘い顔なんて見せるわけにはいかない」
「ひぃっ!」
耳孔にぬるりとしたなにかが侵入してきた。至近距離でぴちゃぴちゃと水音を立てられて、また腰が跳ねた。
無意識のうちに腰が動いてしまって、もどかしさが心と身体を支配していくのがわかる。
「俺が酒をすすめたのが原因だが、一番悪いのは――お前が、変な酔い方をしたことだ」
大きな手のひらが胸元をまさぐる。乳首をつねって、ひっかいて。どんどん硬くなるしこりを指先でもてあそばれた。
「お前が余計なことを口にしなかったら、こんなことにはならなかった」
どうして彼が傷ついたような態度をとるのかがわからない。傷ついたのは天翔のほうなのに、襲っている彼が傷つくなんて変な話だ。
「ひぁ、あ、あっ」
「わかったら、今後一切俺のことを優しいなんていうな」
いつものような命令の言葉――のはずなのに。どうして彼が泣きそうな声をしているのか。どうして――こんなにも寂しそうなのだろうか。
「逃げるな」
冷たい声でぴしゃりと命じられ、天翔は身を固くする。
ナイトハルトの指が天翔のシャツのボタンに触れた。ぷつりぷつりと音を立てて外されて、胸元を露わにされてしまう。
「お前は性交渉の経験がないらしいな。――俺がたくさん教えてやる」
彼の唇が天翔の薄っぺらい胸元に触れる。
唇が胸をなぞると、不思議なほどにじんじんと甘い痺れが身体を襲った。口から変な声が出てしまいそうで、唇を強くかむ。
「声は我慢しなくていい。どうせ俺しか聞いていない」
「だ、って――!」
一番聞かれたくない相手は、ほかでもないナイトハルトだった。
(変な声だってからからかわれたくない――!)
これはきっと、意地なのだ。そして、意地を張ることができるくらいに、天翔の酔いは醒めていた。
目をつむって唇をかんでいると、全神経がナイトハルトに蹂躙されているような感覚だった。耐えきれずに小さな息が漏れて、身体の奥底がじんわりと熱くなっていく。
(こんなのしたくない! 俺がこういう風にしてほしかった相手は――)
ナイトハルトではない。それがわかっているのに、どうしてかナイトハルトの顔しか思い浮かばなかった。
今まであんなにも恋い焦がれていた響也ではなく、ナイトハルトの姿が浮かんでしまった。
(なんで、なんで!)
自分はナイトハルトに恋なんてしていないはずなのに――。
まだ、響也が好きなはずなのに。
「ほかのことなんて考えるな。俺のことだけ考えていればいい」
ナイトハルトの唇が天翔の胸の尖りに近づいていく。普段は意識もしていない場所に触れた温かいものに、腰が跳ねた。
「やぁっ!」
我慢していた声が、ついに漏れ出てしまった。
甘ったるくて媚びるような声。まるで女性のもののようで、一気に顔に熱がたまる。
「ひっ、やめ、やめて……!」
ナイトハルトの舌先が天翔の片方の乳首をなぶった。ちろちろとなめられて、温かい口腔内に導かれる。
それだけでおかしくなりそうなほどに気持ちよくて、下履きの中が大変なことになっているのがわかった。
(やばい。半分くらい、勃ってる)
乳首をいじられただけで勃てるなど、どんな淫乱だろうか。
「あ、あぁっ! ないと、はるとさんっ!」
だめだ。これ以上は本当にダメだ――!
頭の中にガンガンと警告音がなって、目元から涙があふれた。
首を横に振るたびに涙が飛び散って、シーツを濡らす。
「泣くな。泣いて止めることができるのなら、俺はこんなことしない」
ナイトハルトが天翔の耳元に唇を寄せた。彼の言葉の意味が、すぐには理解できない。
「止まることができるのならば、俺だって止まりたい。だが、ここで甘い顔なんて見せるわけにはいかない」
「ひぃっ!」
耳孔にぬるりとしたなにかが侵入してきた。至近距離でぴちゃぴちゃと水音を立てられて、また腰が跳ねた。
無意識のうちに腰が動いてしまって、もどかしさが心と身体を支配していくのがわかる。
「俺が酒をすすめたのが原因だが、一番悪いのは――お前が、変な酔い方をしたことだ」
大きな手のひらが胸元をまさぐる。乳首をつねって、ひっかいて。どんどん硬くなるしこりを指先でもてあそばれた。
「お前が余計なことを口にしなかったら、こんなことにはならなかった」
どうして彼が傷ついたような態度をとるのかがわからない。傷ついたのは天翔のほうなのに、襲っている彼が傷つくなんて変な話だ。
「ひぁ、あ、あっ」
「わかったら、今後一切俺のことを優しいなんていうな」
いつものような命令の言葉――のはずなのに。どうして彼が泣きそうな声をしているのか。どうして――こんなにも寂しそうなのだろうか。
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