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第1部 第3章 隠し事と対面

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 強く目をつむった。ナイトハルトの情欲のこもった視線から逃れるように身をよじる。

「逃げるな」

 冷たい声でぴしゃりと命じられ、天翔は身を固くする。

 ナイトハルトの指が天翔のシャツのボタンに触れた。ぷつりぷつりと音を立てて外されて、胸元を露わにされてしまう。

「お前は性交渉の経験がないらしいな。――俺がたくさん教えてやる」

 彼の唇が天翔の薄っぺらい胸元に触れる。

 唇が胸をなぞると、不思議なほどにじんじんと甘い痺れが身体を襲った。口から変な声が出てしまいそうで、唇を強くかむ。

「声は我慢しなくていい。どうせ俺しか聞いていない」
「だ、って――!」

 一番聞かれたくない相手は、ほかでもないナイトハルトだった。

(変な声だってからからかわれたくない――!)

 これはきっと、意地なのだ。そして、意地を張ることができるくらいに、天翔の酔いは醒めていた。

 目をつむって唇をかんでいると、全神経がナイトハルトに蹂躙されているような感覚だった。耐えきれずに小さな息が漏れて、身体の奥底がじんわりと熱くなっていく。

(こんなのしたくない! 俺がこういう風にしてほしかった相手は――)

 ナイトハルトではない。それがわかっているのに、どうしてかナイトハルトの顔しか思い浮かばなかった。

 今まであんなにも恋い焦がれていた響也ではなく、ナイトハルトの姿が浮かんでしまった。

(なんで、なんで!)

 自分はナイトハルトに恋なんてしていないはずなのに――。

 まだ、響也が好きなはずなのに。

「ほかのことなんて考えるな。俺のことだけ考えていればいい」

 ナイトハルトの唇が天翔の胸の尖りに近づいていく。普段は意識もしていない場所に触れた温かいものに、腰が跳ねた。

「やぁっ!」

 我慢していた声が、ついに漏れ出てしまった。

 甘ったるくて媚びるような声。まるで女性のもののようで、一気に顔に熱がたまる。

「ひっ、やめ、やめて……!」

 ナイトハルトの舌先が天翔の片方の乳首をなぶった。ちろちろとなめられて、温かい口腔内に導かれる。

 それだけでおかしくなりそうなほどに気持ちよくて、下履きの中が大変なことになっているのがわかった。

(やばい。半分くらい、勃ってる)

 乳首をいじられただけで勃てるなど、どんな淫乱だろうか。

「あ、あぁっ! ないと、はるとさんっ!」

 だめだ。これ以上は本当にダメだ――!

 頭の中にガンガンと警告音がなって、目元から涙があふれた。

 首を横に振るたびに涙が飛び散って、シーツを濡らす。

「泣くな。泣いて止めることができるのなら、俺はこんなことしない」

 ナイトハルトが天翔の耳元に唇を寄せた。彼の言葉の意味が、すぐには理解できない。

「止まることができるのならば、俺だって止まりたい。だが、ここで甘い顔なんて見せるわけにはいかない」
「ひぃっ!」

 耳孔にぬるりとしたなにかが侵入してきた。至近距離でぴちゃぴちゃと水音を立てられて、また腰が跳ねた。

 無意識のうちに腰が動いてしまって、もどかしさが心と身体を支配していくのがわかる。

「俺が酒をすすめたのが原因だが、一番悪いのは――お前が、変な酔い方をしたことだ」

 大きな手のひらが胸元をまさぐる。乳首をつねって、ひっかいて。どんどん硬くなるしこりを指先でもてあそばれた。

「お前が余計なことを口にしなかったら、こんなことにはならなかった」

 どうして彼が傷ついたような態度をとるのかがわからない。傷ついたのは天翔のほうなのに、襲っている彼が傷つくなんて変な話だ。

「ひぁ、あ、あっ」
「わかったら、今後一切俺のことを優しいなんていうな」

 いつものような命令の言葉――のはずなのに。どうして彼が泣きそうな声をしているのか。どうして――こんなにも寂しそうなのだろうか。
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