【完結】【R18】モブに転生した俺は、推しのトラウマにはなりません!

すめらぎかなめ

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本編

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 ルドヴィックの唇は柔らかくて、熱い。

 反応できない俺をよそに、ルドヴィックは何度もキスを繰り返す。角度を変えて、俺と自身の唇を合わせる。

「……ノアム」

 唇が離れて、ルドヴィックが俺の名前を呼んだ。

 切ない、悲しい。瞳と声から伝わってくる感情に、俺の胸が苦しくなる。

(なんで、こんなこと)

 そもそも、ルドヴィックにはリュリュがいるじゃんか。

 俺にキスするなんて意味わかんない。

「ねぇ、ノアム」
「――最低だよ」

 喜んだ自分の気持ちを押し殺し、低い声で告げる。ルドヴィックは目を見開いた。

「なんだよ、なんでキスなんてするんだよ」
「ノアム、あのさ」
「俺はお前にキスなんてされたくなかった」

 嘘。本当はすごく嬉しかった。

 でも、ルドヴィックとリュリュの様子が思い浮かんで、胸が冷え切っていく。

「出てけよ」

 このままここにいたら、リュリュが勘違いしてしまう。

 俺とルドヴィックが恋仲だって思わせてしまう。

 俺の肩をつかむルドヴィックの力が緩んだ。今のうちに、逃げてしまおう。

(一度客間かどこかに避難して――)

 寝台を降りようとして、手首をつかまれた。勢いよく引っ張られ、寝台に戻される。いや、ほぼ放り投げられたようなものだった。

「ルドヴィック!」

 抗議するように名前を呼ぶと、ルドヴィックが顔をゆがめる。奥歯をぎりっと噛んだのがわかった。

「ノアム、そんなに俺のことが嫌い? 俺に触られるの、嫌なの?」
「……お前、変だよ」

 なんで、こんなことを聞くんだよ。

 これじゃあまるで、ルドヴィックも俺のことが好きみたいじゃんか。

「変じゃない。俺はいつも通りだ。変なのはノアムだろ」

 ルドヴィックが寝台に乗り上げて、俺に近づいてくる。

 頭のどこかで警告音が鳴った。

「最近俺のこと避けるし、様子もおかしいし」
「それは……」
「俺がなにかしたなら謝るから教えてよ」

 ルドヴィックが俺に覆いかぶさった。

 完全に逃げ道をふさがれ、心臓が嫌な音を鳴らす。

「……別にルドヴィックがなにかしたわけじゃないし」

 視線を逸らす。ルドヴィックはなにも言わなかった。

「なんか、俺がもうお前といたくないなって思っただけだよ」
「ノアム」
「大体、俺らもう年頃だよ。ずっとべったりなんて――できないんだよ」

 そうだ。俺はルドヴィックと一緒にいたくない。

「俺らにもいずれ婚約者ができるじゃんか。恋人だってできるかも。そのときも一緒にいたら、相手に悪いし勘違いさせるって」

 遠回しにリュリュのことを伝えたつもりだった。

「だから、適切な距離になろうよ。べったりじゃなくて、一般的な友人になろうよ」

 俺はルドヴィックの『親友』になりたかった。しかし、無理だった。

 一方が恋心を持った時点で――『親友』でいることは許されなくなる。

「ほら、わかったらさっさと出て行って。俺もいろいろ落ち着いたら、また外に出るし」

 ルドヴィックの青の双眸が、俺をじっと見ている。背筋に嫌な汗が伝った。

「俺にはなにもわからないよ」

 静かな声に、確かな怒り。

「ノアムの言っていることの意味も理由もわからない。俺がノアムとべったりでなにが悪いの?」
「だから、それは」
「それとも、ノアムに好きな人がいるっていうこと?」

 ルドヴィックから顔をそむけた。だって、知られたくないじゃんか。

 顔の上でルドヴィックがため息をつく。

「そっか。わかった。ノアムは俺から離れたかったんだね。その『好きな人』のために」
「……そういうことでいいよ」

 ルドヴィックから離れることができるなら、もうそれでいいや。

 投げやりになって吐き捨てる。

 でも、これでルドヴィックはわかってくれる――はずだったのに。

「じゃあ、俺は余計に離れたりしないから」

 言葉に目を見開いた俺を見下ろし、ルドヴィックは俺にキスを落とす。

「ル――」
「大人しく俺に身を任せて。……気持ちよくしてあげるから」

 これは一体どういうことなのだろうか?

 混乱する俺の唇に、またキスが降ってきた。
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