【完結】【R18】跡継ぎが生まれたら即・離縁! なのに訳あり女嫌い伯爵さまが甘すぎます!

すめらぎかなめ(夏琳トウ)

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第3章

これからのこと 2

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 そんなことを考えつつ、ローゼは手早く下着とナイトドレスを身に着けた。シュミーズは身に着けていなかったので、何となく胸元が心もとない。

 でも、クローゼットに入るような元気はなかった。自分では体力があるほうだと思っていたローゼだが、性交渉は思ったよりも体力を使うらしい。

「……これが、今後、毎日」

 彼がローゼを雇ったのは、跡継ぎを生んでもらうためだ。それすなわち、ローゼがいち早く孕む必要がある。

 じっと自身の下腹部を撫でる。ここに、いずれは子供が宿って――……。

(って、なに考えているのよ。今はそんなこと、考えている余裕なんてないじゃない)

 ぶんぶんと首を横に振っていれば、イグナーツが寝室に戻ってきた。彼はグラスを持っており、どうやら水を持ってきてくれたらしい。

「冷たいほうがいいだろうと思って」

 彼が水の入ったグラスを差し出してくれる。それをありがたく思いながら、ローゼは口に運んだ。冷たい水が喉を潤す。

 昨日散々喘いだ所為なのだろう。気が付かないうちに、喉はカラカラだったようだ。

「メイドに朝食はここに運ばせるようにと命じておいた」
「あ、ありがとう、ございます」
「いや」

 彼のその態度は、特別なことなどしていないとでも言いたげだ。

 まぁ、実際彼は気の利く男性なので、これくらいは普通なのかもしれないが。

(なんて。私が知っているのは表向きのことだけだものね)

 イグナーツは女性嫌いだ。それほどまでに、女性とは深くかかわらない。

 だから、ローゼの知っている彼は所詮誰もが知っている彼でしかない。……ただ唯一、彼が性交渉の際に甘くなることだけは、ローゼしか知らないことなのだろう。

 そんなことを考えていると、ふと肩を抱き寄せられた。驚いてそちらに視線を向ければ、イグナーツはローゼの隣に腰掛けている。

「ちょ、イグナーツ、さまっ……!」

 彼の分厚い胸に顔が当たる。頬にカーっと熱が溜まっていく。

 その所為で暴れていれば、彼はローゼの顎をすくい上げた。ローゼとイグナーツの視線が、交わった。

「……可愛い」

 ボソッと、彼がそう呟く。その言葉にローゼは目を見開いた。……可愛い、なんて。

「き、昨日も、散々おっしゃっていましたよね……」
「あぁ」

 ローゼがそう確認すれば、彼が力強く頷く。その態度を見つめつつ、ローゼはそっと視線を逸らした。

「私、可愛くないです……」

 今にも消え入りそうなほど小さな声で、そう抗議をした。

「……どうしてだ?」
「だ、だって、私、背丈も女性にしては高いですし、顔立ちだって……」

 しどろもどろになりながらそう告げれば、彼はきょとんとしていた。まるで、本気で意味がわからないと言いたげだ。

「俺から見れば、ローゼは可愛い。ローゼ以上に可愛い存在を、俺は知らない」
「っつ」

 彼の言葉に、ローゼの顔に一瞬にして熱が溜まった。

(というか、本当にイグナーツ様はどうなさったの? こんな、こんなに可愛いって連呼するようなお方じゃないわよね……?)

 ローゼの知っているイグナーツという人物は、いつも無表情。女性を褒めたりするような男性ではなかった。甘い言葉なんてもってのほかだ。

 そんな彼が、ローゼに「好きだ」と言って、「可愛い」と言っている。……まるで、外見だけそのままで中身が知らない誰かのようだ。

「視線を彷徨わせるローゼも可愛い。……もっと、触れたい」

 彼がそう言ってローゼの身体を自身の膝の上に乗せる。身体の向きをひっくり返されたことにより、彼と向かい合わせに座る形になってしまった。……恥ずかしい。

「本当は、もっとつけたかったんだ」

 イグナーツはそのごつごつとした指でローゼの赤い痕を撫でつつ、そう言ってくる。

 するりと身体を撫で上げられると、何とも言えない感覚がローゼの身体を這う。

「んっ」

 思わず身をよじれば、イグナーツの身体がほんの少し震えた。それに気が付き、ローゼは恐る恐る彼の目を見つめる。

 ……彼の目は、完全に欲情していた。

(い、今、朝よ……?)

 身の危険を感じて、ローゼがイグナーツの膝の上から下りようとした。が、それよりも先にイグナーツがローゼの腰を抱き寄せる。彼にしがみつくような形になったかと思えば、彼の手がまたローゼの顎をすくい上げた。

「可愛い」

 まるで熱に浮かされたかのように「可愛い」と言ったイグナーツは、ローゼの唇にちゅっと口づける。

「んんっ」

 何度も何度も、角度を変えて口づけられた。かと思えば、彼の肉厚の舌がローゼの口腔内に入ってくる。

「んぁ」

 ローゼの舌を絡め取るイグナーツの舌。彼はローゼの口腔内を舌で舐め上げてくる。そして、唾液を注いできた。

「んんっ」

 自然とローゼの喉が鳴り、彼の唾液を呑み込んでしまう。

(あぁ、頭がくらくらとする……)

 徐々に身体に力が入らなくなり、イグナーツの寝間着に縋った。ぎゅっと彼の寝間着を握りしめれば、彼の身体がまた震える。

 その後、彼の手がローゼのナイトドレスの腰ひもに触れた。

(脱がされるっ――!)

 ローゼの本能が危険を察知した。このままだと、彼は朝から行為にもつれ込もうとする。

 そう思ったからこそ、ローゼは彼の胸をたたいた。
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