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第2章

本当の夫婦になるために 2【※】

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「……イグナーツ、さま」

 唇が離れて、ローゼがそっと彼の名前を呼ぶ。すると、イグナーツは露骨に息を呑んだ。

「ローゼ。……可愛い」

 彼がうっとりとしたような声音でそう言ってくる。それに驚いてローゼが目を見開けば、また彼と唇が重なった。

 今度は触れるだけの口づけを数回施され、かと思えば舌先で唇がたたかれた。

 だからこそ、ローゼはうっすらと唇を開ける。そうすれば、イグナーツの舌がローゼの口腔内に入ってくる。

「んんっ」

 口づけの感覚から逃げようと、ローゼが身をよじる。けれど、イグナーツはまるで逃がさないとでもいうように、ローゼの頭を掴んだ。その所為で、ローゼは成す術もなく彼の口づけを受け入れるしかなかった。

「んっ、んぅ、ぁっ」

 イグナーツの舌がローゼの口腔内を探ってくる。歯列をなぞられ、口蓋もなぞられる。舌の付け根を弄られたときには、身体がびくんびくんと反応してしまうほどだった。

(……気持ち、いぃ)

 無意識のうちにローゼはそう思ってしまう。ぎゅっとイグナーツの衣服に縋りつつ、彼の口づけを受け入れる。

 くちゅくちゅという水音が口元から聞こえるのが、とても淫靡でローゼの心を淫らにしていく。

「……ぁ」

 そして、イグナーツの唇が離れたとき、二人の間に銀色の糸が伝った。

 それはローゼのナイトドレスに垂れ、とてもいやらしい光景となってしまう。

「ローゼ。……いやらしいな」

 彼はそんな言葉を投げつけてくると、ローゼの唇を指で拭う。

 多分だが、ローゼの表情は淫靡なほどにうっとりとしたものになっているだろう。ローゼだって、それは容易に想像が出来る。うるんだ目は、イグナーツしか見えない。

「イグナーツ、さま」

 ローゼの唇が自然と彼の名前を紡いだ。それを聞いたためなのか、イグナーツがごくりと息を呑む。

 かと思えば、彼はその大きな手でローゼの胸のふくらみを包み込んできた。その手つきはまるで壊れ物でも扱うかのように、丁寧だ。

「んんっ」

 ナイトドレス越しに包み込まれ、ローゼの喉が鳴る。ナイトドレスの薄い生地と、胸の頂がこすれてぴりりとした快感を生む。

 身じろぎして逃げようとするものの、イグナーツが逃がしてくれるわけもない。彼のその情欲のこもった視線だけで、ローゼはまるで縫い留められたかのように動けなかった。

「ローゼは、こんなにも胸が大きかったんだな」

 イグナーツがそう言って、ローゼの胸のふくらみを手のひらで優しくもんでくる。

 その動きがいやらしくて、ローゼは顔に熱を溜めることしか出来なかった。

「ぁ……だ、だって」
「……だって?」
「仕事中は、締め付けてました、からっ……」

 ローゼの胸は平均よりも少し大きいサイズをしている。が、それは仕事中は邪魔だったので下着で締め付けていた。そのため、平均的なサイズにしか見えなかったはずだ。

「……そうか」

 彼の口元が、微かに緩んだような気がした。でも、ローゼがそれを気にする余裕などない。

「あんっ」

 イグナーツの顔が、ローゼの首筋に埋まる。そのままちゅっと音を立てて口づけられると、何とも言えない感覚がローゼの身体に与えられる。

 ぶるりと身を震わせれば、彼の舌が徐々に下りていくのがわかった。

 そのまま、鎖骨や胸元にもちゅっと口づけられていく。それはまるで、愛し合う夫婦の行為のようだった。

(わ、私たち、はっ……!)

 そう思うのに、拒絶できない。彼の舌が身体を這うだけで、ぞくぞくとした何かが身体の奥底から湧き上がってくるのだ。

「うっ、い、いぐなーつ、さまっ……!」

 思わず彼の名前を呼べば、彼の指がローゼの胸の頂を捉える。その瞬間、ローゼの身体にはなんとも言えない快感が走った。

「んんっ!」

 彼の指が、ナイトドレスの生地越しにぐりぐりと胸の頂を刺激してくる。徐々にぷっくりと硬くなり始めた胸の頂が与える刺激は、ローゼには強すぎるものだった。

「あんっ! だ、だめ、だめぇ……!」

 ぶんぶんと首を横に振って、彼にこの行為を止めてもらおうとする。

 けれど、イグナーツは止めてくれない。それどころか、胸の頂を爪で引っかいたりしてくる始末だ。

「ひぃっ! あんっ!」

 声を抑えるという考えは、なかった。与えられる悦楽に、ローゼの身体が惚けていく。

「……直接、触ったほうがいいか?」

 ふとイグナーツがそう問いかけてくる。でも、ローゼからすればそんなことわかるわけもない。

 そう視線だけで訴えれば、彼がふっと口元を緩めた。そして、その手でローゼのナイトドレスの腰ひもを解く。

「……ぁ」

 ナイトドレスの前をはだけさせられ、胸元が彼の眼下に晒された。

 彼の情欲を孕んだ目が、ローゼの身体を見つめている。……身体の奥底が、沸騰したように熱くなっていく。

「み、見ないで……」

 自然とそんな声が出た。だが、イグナーツはゆるゆると首を横に振る。

「見せてくれ。……きれいな身体をしているのだから」

 彼がそう言って、またローゼの胸元にちゅっと口づける。

 かと思えば、その口は徐々に下りていく。そして――先ほど弄られていたほうとは逆の胸の頂に、彼の唇がたどり着いてしまった。
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