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第2章
永遠(仮)の愛、誓います 3
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「……可愛い」
その後、ボソッと呟かれたその言葉に、ローゼの目が真ん丸になる。
今、彼はなんと言っただろうか?
(き、聞き間違い、よね……?)
それに、今のローゼはそこまで可愛い顔などしていないはずだ。
だからこそ、ローゼは聞こえなかったフリをした。
「って、て言いますか、団長。……その」
彼の唇に、ローゼの紅が移っている。それを言おうとしたものの、ふとローゼの手首が掴まれた。
驚いて、思わず身を引く。
「団長って、呼ぶな」
彼がローゼの手首を握りながら、そう言ってくる。
「俺は……その、お前の上司である以上に、だな……」
しどろもどろになりながら、イグナーツがもう片方の手で頭を掻く。
何だろうか。本気で、彼の意外な一面ばかり見ているような気がしてしまった。
「……イグナーツ、さま」
彼の言いたいことを悟り、ローゼはそっと彼の名前を呼んでみる。すると、彼の目が見開かれた。
だが、すぐにふっと口元を緩める。その表情はとても艶っぽく、ローゼの頬にまた熱が溜まっていく。
「あぁ、今後はそう呼んでほしい」
「……はい」
まぁ、夫婦なのだからこれは当然か。
自分自身にそう言い聞かせ、ローゼは近くにあったタオルを手に取る。
そして、そのタオルをイグナーツの唇に押し付けた。
「……っ」
彼が驚いたように目を瞬かせる。その姿が何となく可愛らしくて、ローゼはそのまま彼の唇をタオルで拭いた。
「私の紅が、移ってしまっていたので……」
もしかして、嫌だっただろうか……?
しばらくしてその可能性に気が付き、ローゼが眉を下げてそう言う。
そうすれば、彼は少し身を引きつつ、ローゼからタオルを受け取った。
「いや、こっちこそ……悪かった。わざわざ、拭かせてしまって……」
「いえ、構いません」
普段はきっちりとしているイグナーツのちょっと抜けたところが、可愛らしく見えてしまう。
まぁ、それは絶対に口には出さないけれど。
心の中でそう零していれば、ふとイグナーツがローゼの身体を引き寄せてきた。その所為で、ローゼは彼のたくましい身体にダイブしてしまう。
「……え?」
それから、彼の腕がローゼの背中に回された。ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、ローゼの頭がさらに混乱する。
一体、自分はどうしてイグナーツに抱きしめられているのだろうか?
混乱する頭が、冷静になってくれない。
「ローゼ。……絶対に、大切にするから」
彼がまるで自分自身に言い聞かせるようにそう宣言する。
「は、はぁ……」
対するローゼは気の抜けるようなそんな返事しか出来なかった。
(そもそも、私たちはいわば契約結婚。そんな、大切にするような関係かしら……?)
そうは思ったが、きっと真面目な彼のことだ。少しの間でもローゼを妻として扱う以上、大切にしたいということなのだろう。
いや、そうだ。そうに決まっている。それ以外の可能性なんて――ない。
そんな風に思っていないと、顔に熱が溜まりすぎておかしくなってしまいそうだった。
「……あ、あの、イグナーツ、さま」
「あぁ」
「……ふつつかな妻ですが、どうぞよろしくお願いいたします……」
結局彼に押されて、ローゼはそんな言葉を口にする。本当は契約妻と言おうかと思ったが、それは言えなかった。
「俺こそ、きっと至らない夫になると思う。だが、精一杯ローゼを幸せにできるように努力する」
ローゼの身体を堪能するかのように抱きしめて、イグナーツがそう言う。……何とも真面目な返答だろうか。
「なんていうか、その……」
「あぁ」
「私、男性との交際経験とか、ないので。……本当に、男性の心がわからないと思います」
一応これくらいは白状しておくべきだろう。
そう思ってローゼがぎゅっと手のひらを握ってそう言うと、彼は「ふぅ」と息を吐いていた。
「そうか。……つまり、俺がハジメテということか」
「えっ、え、えぇ、そう、ですね……」
確かに先ほどの口づけだって初めてだし、子作りをするのだって初めてだ。
「嬉しいな。……ローゼのハジメテが、俺だなんて」
「……イグナーツ様、なんだかおかしくないですか?」
なんていうか、やっぱり。今日の彼はおかしい。
(もしかして、もうお酒を飲まれているの? それとも、挙式の雰囲気にのまれてしまわれた……?)
いろいろな考えが脳内によぎるが、ローゼはその考えを必死に振り払う。
顔を上げて、イグナーツとしっかりと視線を合わせる。……彼は、ただ温かい目でローゼのことを見つめていた。
「できれば、今後何でも俺に一番に相談してほしい」
「……まぁ、それが、夫婦、ですものね」
苦笑を浮かべながらそう言うと、なんだか彼が微妙そうな表情を浮かべた。
けれど、ローゼはどうして彼がそんな表情を浮かべるかが、わからない。
ただ……。
(私、思いあがってしまっていたかしら……?)
もしかしたら、自分が都合のいいように捉えすぎていたのかも……と、思ってしまった。
その後、ボソッと呟かれたその言葉に、ローゼの目が真ん丸になる。
今、彼はなんと言っただろうか?
(き、聞き間違い、よね……?)
それに、今のローゼはそこまで可愛い顔などしていないはずだ。
だからこそ、ローゼは聞こえなかったフリをした。
「って、て言いますか、団長。……その」
彼の唇に、ローゼの紅が移っている。それを言おうとしたものの、ふとローゼの手首が掴まれた。
驚いて、思わず身を引く。
「団長って、呼ぶな」
彼がローゼの手首を握りながら、そう言ってくる。
「俺は……その、お前の上司である以上に、だな……」
しどろもどろになりながら、イグナーツがもう片方の手で頭を掻く。
何だろうか。本気で、彼の意外な一面ばかり見ているような気がしてしまった。
「……イグナーツ、さま」
彼の言いたいことを悟り、ローゼはそっと彼の名前を呼んでみる。すると、彼の目が見開かれた。
だが、すぐにふっと口元を緩める。その表情はとても艶っぽく、ローゼの頬にまた熱が溜まっていく。
「あぁ、今後はそう呼んでほしい」
「……はい」
まぁ、夫婦なのだからこれは当然か。
自分自身にそう言い聞かせ、ローゼは近くにあったタオルを手に取る。
そして、そのタオルをイグナーツの唇に押し付けた。
「……っ」
彼が驚いたように目を瞬かせる。その姿が何となく可愛らしくて、ローゼはそのまま彼の唇をタオルで拭いた。
「私の紅が、移ってしまっていたので……」
もしかして、嫌だっただろうか……?
しばらくしてその可能性に気が付き、ローゼが眉を下げてそう言う。
そうすれば、彼は少し身を引きつつ、ローゼからタオルを受け取った。
「いや、こっちこそ……悪かった。わざわざ、拭かせてしまって……」
「いえ、構いません」
普段はきっちりとしているイグナーツのちょっと抜けたところが、可愛らしく見えてしまう。
まぁ、それは絶対に口には出さないけれど。
心の中でそう零していれば、ふとイグナーツがローゼの身体を引き寄せてきた。その所為で、ローゼは彼のたくましい身体にダイブしてしまう。
「……え?」
それから、彼の腕がローゼの背中に回された。ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、ローゼの頭がさらに混乱する。
一体、自分はどうしてイグナーツに抱きしめられているのだろうか?
混乱する頭が、冷静になってくれない。
「ローゼ。……絶対に、大切にするから」
彼がまるで自分自身に言い聞かせるようにそう宣言する。
「は、はぁ……」
対するローゼは気の抜けるようなそんな返事しか出来なかった。
(そもそも、私たちはいわば契約結婚。そんな、大切にするような関係かしら……?)
そうは思ったが、きっと真面目な彼のことだ。少しの間でもローゼを妻として扱う以上、大切にしたいということなのだろう。
いや、そうだ。そうに決まっている。それ以外の可能性なんて――ない。
そんな風に思っていないと、顔に熱が溜まりすぎておかしくなってしまいそうだった。
「……あ、あの、イグナーツ、さま」
「あぁ」
「……ふつつかな妻ですが、どうぞよろしくお願いいたします……」
結局彼に押されて、ローゼはそんな言葉を口にする。本当は契約妻と言おうかと思ったが、それは言えなかった。
「俺こそ、きっと至らない夫になると思う。だが、精一杯ローゼを幸せにできるように努力する」
ローゼの身体を堪能するかのように抱きしめて、イグナーツがそう言う。……何とも真面目な返答だろうか。
「なんていうか、その……」
「あぁ」
「私、男性との交際経験とか、ないので。……本当に、男性の心がわからないと思います」
一応これくらいは白状しておくべきだろう。
そう思ってローゼがぎゅっと手のひらを握ってそう言うと、彼は「ふぅ」と息を吐いていた。
「そうか。……つまり、俺がハジメテということか」
「えっ、え、えぇ、そう、ですね……」
確かに先ほどの口づけだって初めてだし、子作りをするのだって初めてだ。
「嬉しいな。……ローゼのハジメテが、俺だなんて」
「……イグナーツ様、なんだかおかしくないですか?」
なんていうか、やっぱり。今日の彼はおかしい。
(もしかして、もうお酒を飲まれているの? それとも、挙式の雰囲気にのまれてしまわれた……?)
いろいろな考えが脳内によぎるが、ローゼはその考えを必死に振り払う。
顔を上げて、イグナーツとしっかりと視線を合わせる。……彼は、ただ温かい目でローゼのことを見つめていた。
「できれば、今後何でも俺に一番に相談してほしい」
「……まぁ、それが、夫婦、ですものね」
苦笑を浮かべながらそう言うと、なんだか彼が微妙そうな表情を浮かべた。
けれど、ローゼはどうして彼がそんな表情を浮かべるかが、わからない。
ただ……。
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