3 / 4
第一章・十階層編
第二話・ミケさんのお願い
しおりを挟む
シャワーから浴びて戻ってくると茶髪の少年が話しかけてきた。
「僕はダンテス。よろしくね。」
「よろしく。ところでミケさんは?」
辺りを見渡すが、ミケさんの姿は見えない。
「エルフの受付嬢ならまだシャワー室だよ。そんなことより君!もしかして不死身なの!?すごい!傷がもう塞がってる!」
そんなことより。
その物言いに俺は頭にきた。
「そんなことより!?ミケさんがいないなんてことは一大事だぞ!?ミケさんがいなくなったら……この村は終わるぞ」
「うん、君はやっぱり面白いね。よほどエルフの受付嬢が好きなんだね。」
「好き?チョットナニイッテルカワカラナイ。だいたいロリコンじゃねーし」
俺がそう言うと後ろから殺気を感じた。
これは……子供とよく間違えられるのが軽くコンプレックスになっているミケさんが放つ殺気!
「クロノス君?誰がロリっ子だって?」
後ろには笑顔のミケさんが立っていた。
笑っているのに何故か怖い。
そして可愛い。
まだ濡れている髪、ほんのりと香るシャンプーの匂い……うん、ミケさんは最高だ。
「ミケさんって可愛いですよね!大人な女性って感じがします」
俺はミケさんを悲しませたくない。
だから俺は嘘をついた。
ミケさんは子供っぽいです、ごめんなさい。
「えへへ、そうかな?ありがとう」
ミケさんは照れくさそうにはにかんだ。
ミケさんは純真無垢だ。
チョロすぎて心配になるレベル。
これは……決まりだ。俺が守ってやらねば!
「えーと、クロノス君?」
俺がミケさんと二人だけの世界に入っているとエルシーが話しかけてきた。
「さっきはごめんね。うちのシトがあんなことしちゃって」
エルシーは申し訳なさそうに頭を下げた。
「全然気にしてないから大丈夫だよ。気持ちかっ、ゲフンゲフン!ナンデモナイヨー」
「それなら良かった」
エルシーは安心したのか、「はぁ」とため息をついた。
その時、今までに感じたことのないほどの殺気を感じた。
「おいっ!エルに何やらせてんだ!」
声を荒げたのは黒髪の少年だ。
「文句ならシトに言ってくれよ」
「シトに勝てるわけないだろうが!」
いや、それ堂々と言うことじゃないでしょ。
「お前には死んでもらう」
そう言うと、黒髪の少年は手から黒い炎を出した。
なにそれ!?カッコいい!
「死にたくなけりゃ土下座しろ!」
俺は迷った。
「炎に体を焼かれる痛みはどれくらい気持ちいいものなのか?攻撃を受けてみてもいいのではないか?」と。
しかし、結論はすぐ出た。
俺は男に痛めつけられて興奮する変態じゃない。
「断る。土下座はしないが攻撃を受ける気はない」
俺はエルシーの後ろに素早く回り込む。
女の子を盾にするのはどうかと思ったけど、ミケさん以外の女の子なんてどうでもいいしね。
すると、笑い声が聞こえてきた。
「ははは、リュウガ君。ぷっ、ダメだってそれは」
笑い声はダンテスのものだった。
「くくく、やめよう?ね?」
「ちっ!」
リュウガは舌打ちをすると炎を消した。
「いやー、クロノス君。これはね、このリュウガ君の能力なんだ」
この国ではごく稀に、特殊な能力を持って生まれてくる子供がいた。
その子供は魔力を持たず、魔法が使えない代わりに強力な能力を使える。
俺の場合は『不死身』が能力だ。
「ちなみに僕の能力は『幸運』ね。それで、リュウガ君の能力なんだけど手から……ふふ」
ダンテスは笑いをこらえ、リュウガは顔を真っ赤にしている。
シトとエルシーもニヤニヤしている。
「手から炎を出す能力」
「だろうな」
これは予想通りだ。さっきのを見れば誰でもわかる。
それより気になるのはダンテスの能力だ。
幸運ってなんだ?
「じゃなくて、『手から炎を出しているように見せる』能力なんだ」
「えっあっ、……ちょっ、は?」
俺は驚きのあまり固まってしまった。
え?能力者って魔法使えないんだよ?その代わりに強力な能力を使えるんだよ?
「ダサっ!」
シトが笑いをこらえながらそう言った。
「うるせーっ!殺してやろうか!?ブス女!」
「やってみる?死んでも知らないからね?」
「ちっ!」
シトが少し睨んだだけでリュウガは引っ込んでしまった。
えぇー!もしかして本当にそんな能力なの!?戦闘力皆無じゃん。
「とまあ、私たちはこんな感じなんだけど……君の能力は?」
「あ、ああ。えーと『不死身』だ」
「うん、ありがとう。えーと、私たちの仲間になってくれると嬉しいなぁ?パーティーに入ってくれない?」
俺は動揺していたが、エルシーの言葉で動揺は吹き飛んだ。
「断る!」
俺にはパーティーを組む資格はない。
もちろん、パーティーをもう一度組みたいと思ったことはある。
でも、仲間を見捨てた俺が新しい仲間を作るなんてことしてはいけないんだと思う。
親友の最期の言葉がフラッシュバックする。
「クロノス!お前は……逃げろ!新しい仲間と楽しく過ごせ!」
俺は……どうすればいい?
俺は新しい仲間を作っていいのか?
俺は多分一生死ねない。
だから、この罪を一生背負っていかなければいかないと思っていた。
罪を忘れるなんてことは考えもしなかった。
罪を忘れてもいいのか?
「そこをなんとか……お願い!」
エルシーは手を合わせて頭を下げる。
俺の前にはみんながいる。
エルシーがいる。
シトがいる。
ダンテスがいる。
リュウガがいる。
俺が思ったのはただ一つ。
「このメンバーで過ごす日常は楽しいんだろうな」と。
そう思った。
「ねえ、クロノス君。これは罪滅ぼしだよ。君はみんなに助けられた。だから、今度は君が助ける番なんだ」
「俺が……助ける番?」
「そうだよ。彼らがいるとギルドは人が寄り付かなくてね?私を助けると思って、ね?」
ミケさんは最高の笑顔で言葉を続けた。
「私を助けて!」
ミケさんのお願いだ。答えは決まっている。
「はい!パーティーに入ります!」
「僕はダンテス。よろしくね。」
「よろしく。ところでミケさんは?」
辺りを見渡すが、ミケさんの姿は見えない。
「エルフの受付嬢ならまだシャワー室だよ。そんなことより君!もしかして不死身なの!?すごい!傷がもう塞がってる!」
そんなことより。
その物言いに俺は頭にきた。
「そんなことより!?ミケさんがいないなんてことは一大事だぞ!?ミケさんがいなくなったら……この村は終わるぞ」
「うん、君はやっぱり面白いね。よほどエルフの受付嬢が好きなんだね。」
「好き?チョットナニイッテルカワカラナイ。だいたいロリコンじゃねーし」
俺がそう言うと後ろから殺気を感じた。
これは……子供とよく間違えられるのが軽くコンプレックスになっているミケさんが放つ殺気!
「クロノス君?誰がロリっ子だって?」
後ろには笑顔のミケさんが立っていた。
笑っているのに何故か怖い。
そして可愛い。
まだ濡れている髪、ほんのりと香るシャンプーの匂い……うん、ミケさんは最高だ。
「ミケさんって可愛いですよね!大人な女性って感じがします」
俺はミケさんを悲しませたくない。
だから俺は嘘をついた。
ミケさんは子供っぽいです、ごめんなさい。
「えへへ、そうかな?ありがとう」
ミケさんは照れくさそうにはにかんだ。
ミケさんは純真無垢だ。
チョロすぎて心配になるレベル。
これは……決まりだ。俺が守ってやらねば!
「えーと、クロノス君?」
俺がミケさんと二人だけの世界に入っているとエルシーが話しかけてきた。
「さっきはごめんね。うちのシトがあんなことしちゃって」
エルシーは申し訳なさそうに頭を下げた。
「全然気にしてないから大丈夫だよ。気持ちかっ、ゲフンゲフン!ナンデモナイヨー」
「それなら良かった」
エルシーは安心したのか、「はぁ」とため息をついた。
その時、今までに感じたことのないほどの殺気を感じた。
「おいっ!エルに何やらせてんだ!」
声を荒げたのは黒髪の少年だ。
「文句ならシトに言ってくれよ」
「シトに勝てるわけないだろうが!」
いや、それ堂々と言うことじゃないでしょ。
「お前には死んでもらう」
そう言うと、黒髪の少年は手から黒い炎を出した。
なにそれ!?カッコいい!
「死にたくなけりゃ土下座しろ!」
俺は迷った。
「炎に体を焼かれる痛みはどれくらい気持ちいいものなのか?攻撃を受けてみてもいいのではないか?」と。
しかし、結論はすぐ出た。
俺は男に痛めつけられて興奮する変態じゃない。
「断る。土下座はしないが攻撃を受ける気はない」
俺はエルシーの後ろに素早く回り込む。
女の子を盾にするのはどうかと思ったけど、ミケさん以外の女の子なんてどうでもいいしね。
すると、笑い声が聞こえてきた。
「ははは、リュウガ君。ぷっ、ダメだってそれは」
笑い声はダンテスのものだった。
「くくく、やめよう?ね?」
「ちっ!」
リュウガは舌打ちをすると炎を消した。
「いやー、クロノス君。これはね、このリュウガ君の能力なんだ」
この国ではごく稀に、特殊な能力を持って生まれてくる子供がいた。
その子供は魔力を持たず、魔法が使えない代わりに強力な能力を使える。
俺の場合は『不死身』が能力だ。
「ちなみに僕の能力は『幸運』ね。それで、リュウガ君の能力なんだけど手から……ふふ」
ダンテスは笑いをこらえ、リュウガは顔を真っ赤にしている。
シトとエルシーもニヤニヤしている。
「手から炎を出す能力」
「だろうな」
これは予想通りだ。さっきのを見れば誰でもわかる。
それより気になるのはダンテスの能力だ。
幸運ってなんだ?
「じゃなくて、『手から炎を出しているように見せる』能力なんだ」
「えっあっ、……ちょっ、は?」
俺は驚きのあまり固まってしまった。
え?能力者って魔法使えないんだよ?その代わりに強力な能力を使えるんだよ?
「ダサっ!」
シトが笑いをこらえながらそう言った。
「うるせーっ!殺してやろうか!?ブス女!」
「やってみる?死んでも知らないからね?」
「ちっ!」
シトが少し睨んだだけでリュウガは引っ込んでしまった。
えぇー!もしかして本当にそんな能力なの!?戦闘力皆無じゃん。
「とまあ、私たちはこんな感じなんだけど……君の能力は?」
「あ、ああ。えーと『不死身』だ」
「うん、ありがとう。えーと、私たちの仲間になってくれると嬉しいなぁ?パーティーに入ってくれない?」
俺は動揺していたが、エルシーの言葉で動揺は吹き飛んだ。
「断る!」
俺にはパーティーを組む資格はない。
もちろん、パーティーをもう一度組みたいと思ったことはある。
でも、仲間を見捨てた俺が新しい仲間を作るなんてことしてはいけないんだと思う。
親友の最期の言葉がフラッシュバックする。
「クロノス!お前は……逃げろ!新しい仲間と楽しく過ごせ!」
俺は……どうすればいい?
俺は新しい仲間を作っていいのか?
俺は多分一生死ねない。
だから、この罪を一生背負っていかなければいかないと思っていた。
罪を忘れるなんてことは考えもしなかった。
罪を忘れてもいいのか?
「そこをなんとか……お願い!」
エルシーは手を合わせて頭を下げる。
俺の前にはみんながいる。
エルシーがいる。
シトがいる。
ダンテスがいる。
リュウガがいる。
俺が思ったのはただ一つ。
「このメンバーで過ごす日常は楽しいんだろうな」と。
そう思った。
「ねえ、クロノス君。これは罪滅ぼしだよ。君はみんなに助けられた。だから、今度は君が助ける番なんだ」
「俺が……助ける番?」
「そうだよ。彼らがいるとギルドは人が寄り付かなくてね?私を助けると思って、ね?」
ミケさんは最高の笑顔で言葉を続けた。
「私を助けて!」
ミケさんのお願いだ。答えは決まっている。
「はい!パーティーに入ります!」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
マルドゥクの殺戮人形
今晩葉ミチル
ファンタジー
星明かりを映す海で、誰かがおぼれている。
そう思ったグローリア王国の王女マリアは、助け出そうとして海に落ちてしまう。
マリアを助けたのは、透き通る瞳の美少年。
しかし、その少年は重苦しい過去を背負っていた。
脅威的なスキルを操る少年であるが、自称最弱のスキル持ちで、天然と言われる事もある。
時にバトル、時にほのぼの。
重くて暗い世界観のはずなのですが、シリアスになりきれない物語です。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる