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【精神洗濯屋】
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【精神洗濯屋】
わたしは、大学卒業して5年間、親から引き継いでコインランドリーの経営をしている。名前は、五色麗(ごしき れい)。親から彼氏もいないのに、結婚をせがまれている。朝、室内清掃中に、大学生の常連客、気仙卓哉(きせん たくや)君と出会う。彼は新聞配達をしていて、お調子者だが、今日は元気がない。
「調子悪いの?」
「実は、彼女と別れたんです!もう人生、終わりですよ!」
「ああ、それは、ご愁傷様です」
気仙君の彼女は、増田琉羽(ますだ るう)さんといい、看護師の専門学生らしい。高校時代からのお付き合いだそうだ。
「俺、どうしたら、いいですかね?精神洗濯っての受けた方が良いですか?」
「そうね。初回なら、半額の5千円で良いよ?」
「高い!」
わたしには、精神洗濯という一家相伝の特別な力があった。簡単に言うと、ヒーリングの進化版。裏家業として、人の心の淀みを綺麗にしている。結局、彼は、その日に5千円を払った。
1週間後、気仙君と出会った。
「お姉さん。効果はあったんですけど、琉羽の事を思い出したら、心が!」
「まぁ、表面上を綺麗にしてるだけで、本質まで綺麗にしたら、精神や記憶に支障をきたすからね」
「それでも、記憶を消し去るくらいして欲しいんです!俺は、新しい恋がしたいので!」
若さというのは実に恐ろしい。
「分かった。本気の洗濯だから、3万で手を打つよ!」
「高い!マジで、高い!!」
これで、諦めてくれても良し。しかし、次の日、彼は、3万円を持ってきた。
そして、彼は、能天気な明るさを取り戻した。わたしも、陰ながら、彼の恋を応援していたら、遂に、新しい彼女を連れて来た。
「彼女の増田琉羽さんです」
「初めまして、よろしくお願いします」
増田琉羽と紹介された女性から挨拶された。確かに、わたしは初対面だ。
「初めまして」
わたしは、そう答えるしかなかった。どうやら、気仙君は彼女の事を忘れまま、新しい彼女と思っているようだ。もちろん、増田さんには、個別で真実を告げた。すると、彼女は大号泣した。彼女は、別れて初めて、彼が必要不可欠だと気付き、本当に記憶喪失か疑っていたが、彼の傍にいたいと告白したとの事。そして、増田さんは言った。
「思い出は、自分が覚えてればいい。いつか、思い出してくれるかもしれないし」
そう言われた、わたしには、罪悪感が残った。
「ありがとうございました」
それでも、増田さんは、わたしに感謝していた。
完
全1000文字
わたしは、大学卒業して5年間、親から引き継いでコインランドリーの経営をしている。名前は、五色麗(ごしき れい)。親から彼氏もいないのに、結婚をせがまれている。朝、室内清掃中に、大学生の常連客、気仙卓哉(きせん たくや)君と出会う。彼は新聞配達をしていて、お調子者だが、今日は元気がない。
「調子悪いの?」
「実は、彼女と別れたんです!もう人生、終わりですよ!」
「ああ、それは、ご愁傷様です」
気仙君の彼女は、増田琉羽(ますだ るう)さんといい、看護師の専門学生らしい。高校時代からのお付き合いだそうだ。
「俺、どうしたら、いいですかね?精神洗濯っての受けた方が良いですか?」
「そうね。初回なら、半額の5千円で良いよ?」
「高い!」
わたしには、精神洗濯という一家相伝の特別な力があった。簡単に言うと、ヒーリングの進化版。裏家業として、人の心の淀みを綺麗にしている。結局、彼は、その日に5千円を払った。
1週間後、気仙君と出会った。
「お姉さん。効果はあったんですけど、琉羽の事を思い出したら、心が!」
「まぁ、表面上を綺麗にしてるだけで、本質まで綺麗にしたら、精神や記憶に支障をきたすからね」
「それでも、記憶を消し去るくらいして欲しいんです!俺は、新しい恋がしたいので!」
若さというのは実に恐ろしい。
「分かった。本気の洗濯だから、3万で手を打つよ!」
「高い!マジで、高い!!」
これで、諦めてくれても良し。しかし、次の日、彼は、3万円を持ってきた。
そして、彼は、能天気な明るさを取り戻した。わたしも、陰ながら、彼の恋を応援していたら、遂に、新しい彼女を連れて来た。
「彼女の増田琉羽さんです」
「初めまして、よろしくお願いします」
増田琉羽と紹介された女性から挨拶された。確かに、わたしは初対面だ。
「初めまして」
わたしは、そう答えるしかなかった。どうやら、気仙君は彼女の事を忘れまま、新しい彼女と思っているようだ。もちろん、増田さんには、個別で真実を告げた。すると、彼女は大号泣した。彼女は、別れて初めて、彼が必要不可欠だと気付き、本当に記憶喪失か疑っていたが、彼の傍にいたいと告白したとの事。そして、増田さんは言った。
「思い出は、自分が覚えてればいい。いつか、思い出してくれるかもしれないし」
そう言われた、わたしには、罪悪感が残った。
「ありがとうございました」
それでも、増田さんは、わたしに感謝していた。
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