アルマン伯爵と男装近侍

早瀬黒絵

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# The fifth case:Pure insanity.―純粋な狂気―

感情、二つ。

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 ほぼ即答で切り込んだのは意外にも伯爵だった。

 どこか怒りを湛えた表情で振り返る。



「お前を手放すことなどない。だから絶対に作ろうとするな。いいか、絶対にだ。例え興味本位であっても禁じる。そうして自死も許さん。いいな?」



 その鋭い眼差しは伯爵自身の言葉というよりかは、アルマン卿としての言葉といった風ではあったが、わたしは口元の笑みを外行き用に戻すと胸に片手を当てて一礼した。



の思いのままに」



 やると言ったら本当にやるわたしを知っているのは伯爵だけだ。

 だけど、そうならないようにすると言ってくれた。

 だからわたしはそれを信じるし、そうなると分かっていたので、あえて意地の悪いことを言ったに過ぎない。もしもそうなって死ぬ時は伯爵の目の届かぬ場所でひっそりと死ぬだろう。



「はははっ! これは買い取るのは無理そうだな!」



 それまだ黙っていた赤毛の男性が心底愉快そうに声を上げて笑う。

 顔を戻した伯爵が「当然だ」と返してくれたので、今度こそわたしは心からの笑みを浮かべた。

 コホンと咳払いをして何とも言えない空気を一掃させた伯爵が口を開く。



「ところでカードは読んだか?」



 その問いに赤毛の男性が答えた。



「ああ。驚いたぜ、うちの市に人間の肉が混じってるなんてよお。名前も教えてもらったから売った奴は簡単に見つけられたしな。知ってたかどうかは別にしても隣に控えさせてるぜ」

「此処へ通せ。直に話を聞きたい」

「はいよっと。……おい、アイツ連れて来い」



 脇の扉の前で待機していた男が頷き、隣室へ入ると一人の男を連れて戻って来る。

 連れられた男は随分と委縮した様子で少しふくよかな身を縮ませ、不安に視線を彷徨わせている。呼ばれた理由が何なのか分かっているのだろうか。

 伯爵とわたしを見て怪訝そうな顔をした。



「あ、あの……そちらの方はどなたで……?」



 赤毛の男が呆れ顔でその男に返す。



「アルマン伯爵家の御当主様さ。この人を知らないなんて、お前本当にうちの市の者か?」

「あ、も、申し訳ありません! 売り買いをするようになったのは最近なものでして……!」

「あっそ。まあ礼は欠くなよ」



 顔は知らずともアルマン伯爵家の名は知っているらしい。

 青い顔でペコペコと頭を下げる男は哀れなほど震えていた。



「法に触れなければ蛇の肉だろうが蛙の肉だろうが私は関知しない」

「そ、そうでしたか……」

「だが今回は別だ。お前も聞き込みの際に警官より聞いだろうがは問題だ。その肉を用意したのがお前だと言うのなら、それは殺人か死者の冒涜になる。それに肉を買った相手に対する詐欺にも当たる」

「いえ! いえ、そんな、私はそんな大それたことなどしておりません! あの肉は他所から仕入れたものです!」



 分かりやすく噛み砕いて説明する伯爵に男が何度も首と手を振る。

 あまりにも勢いよく振り過ぎて首がもげてしまいそうだ。

 男の反応は大袈裟だがワザとらしさはなく、本気で慌てているようで、その顔には冷や汗が浮かんでいた。殺人罪はこの国では財産の没収に加えて絞首又は斬首刑に処される。

 仕入れたものであり、男は何も知らなかったのであれば、逆に男は詐欺の被害者となる。

 その場合は罪に問われない。



「ではどこで手に入れた?」



 伯爵の問いに男が答える。



「私の家の近所にある小さな肉屋より仕入れました。売り物にならない肉だから、良ければ私が露店を開き始めた闇市で売ってくれないかと頼まれたのですっ」

「セナ」

「はい、こちらに」



 持って来た王都の地図をローテーブルの上へ広げる。

 わたしが「どちらにお住まいでしょうか?」と聞くと男は地図の一か所を指で示した。

 先日の休みに試しに作った鉛筆で地図に印を付ける。

 貧しい人々が住む地区にこの男の住居もあるようだ。



「それで、肉屋がこの辺りにあります……」



 次に男が示したのは僅かに先ほど示した位置から離れていた。

 そこにも鉛筆で印を付け、鉛筆を仕舞い、伯爵へ地図を差し出す。

 受け取った伯爵が地図を見ながら男へ聞く。



「肉を譲られたという相手の名前は?」

「マイルズです。マイルズ=オアという少し体の大きい男で、その店の従業員です」

「そうか。その者が認めれば、お前が無罪であると証明出来るだろう」



 男がホッとした表情を見せて、頭を下げた。

 黙って事の成り行きを眺めていた三人のうち、栗毛の男性が軽く手を振る。

 すると扉の所にいた男が最初と同様に露店の男を隣室へ連れて行った。

 扉が閉まると伯爵が立ち上がる。



「用は済んだ。突然の訪問すまなかったな。これで失礼する」

「お気になさらずに。近侍君のことは残念でしたが、何時でもお越しください。アルマン卿のためでしたら他の予定は全て後に回しても構いませんので」



 ブルーブラウンの男性の言葉に伯爵が頷き返し、長椅子を迂回して扉へ向かう。

 その背を追おうとして、ふとブルーブラウンの男性と目が合った。

 食えない笑みを浮かべるその人にわたしは嫌味なほど丁寧に一礼して伯爵の後を追う。

 廊下を抜けると出入口の扉が開けられ、外の狭い路地へ漸く出る。

 建物の中が息苦しいという訳ではないが奇妙な緊張感が続いていたので肩が凝ってしまった。闇市の元締めなどと言われて会ったせいか思っていた以上にわたしは気を張っていたのだろうか。

 路地を歩き、停めたままの馬車へ戻る。

 御者に警察署へ行くよう伯爵が告げ、馬車へ乗り込むと走り出した。



「……全く、お前は恐ろしいことを口にする」



 馬車が走り始めて少しした頃に伯爵がそうぼやいた。

 元締めの所で言ったことについてか。



「申し訳ありません。伯爵にわたしを手放さないと言っていただかなければ、あの方々も引かないと思いましたので。あんなところに行く気はありませんから」

「分かっている。だが冗談でもああいうのは止せ。想像してしまっただろう」



 嫌そうな顔をする伯爵へ「わたしは綺麗におりましたか?」と聞くと「私の知らぬところで死ぬだろう、お前は」と返されて、ああこの人はわたしのことをよく理解しているなと少し嬉しくなった。

 笑ったわたしに「何を笑っている?」と訝しげにしたが追及はされなかった。

 静かになった馬車の中でもう一度考える

 もし、わたしが伯爵の下を離れる日がくるとしたら、それは死ぬ時だ。

 この世界で他に行く当てなどないのだから当然と言えば当然だろう。

 こんなに重いこと、伯爵には言えないけれどね。

 そうこうしているうちに馬車は目的地に着き、外から御者の「御到着致しました」という声がする。

 わたしが先に馬車を降り、伯爵が次に降りる。

 数か月ぶりの警察署だが特に代わり映えはしない。

 玄関の階段を上がり、建物内へ入ると伯爵は迷いなく受付の一つへ歩み寄った。



「デール=バジョット刑事を呼んでくれ。アルマンが来たと言えば分かる」



 伯爵の言葉に受付の女性はすぐに他の人を使いに出す。

 受付前で少し待てば、熊みたいな大柄の刑事さんが廊下の向こうからやって来た。

 相変わらずややよれた服を身に纏っているが、剃った髪や髭などは整えており、衣類以外は実のところ割りと綺麗なのだ。何故、服だけはよれているんだろうか。

 伯爵とわたしを見つけて片手を上げて歩み寄って来る。



「旦那、もしやもう調べてくださったんですかい?」

「ああ」

「流石ですね。此方としてもありがたいですぜ」



 ガリガリと頭を掻いて軽く頭を下げた刑事さんを伯爵が手で制す。



「あそこは伯爵家の管轄だからな。その件でお前と後二、三人ほど警官の手が欲しい」

「これから会う相手はそんなに厄介なヤツで?」

「さてな。ただ体の大きい肉屋だと聞いた。肉屋というのは肉の解体や移動で体力を使うのだろう? 体格の良い男に掴みかかられては堪らんからな」

「なるほど、分かりました。ちょっと待っていただければすぐに人手を用意しますよ」



 理由を心得た刑事さんはそう返事をすると廊下の向こうへ消え、五分ほどで三人の警官を連れて戻って来た。その三人は背が高く、刑事さんほどではないものの体格も良い。

 刑事さんを含めたこの四人ならば相手が暴れたとしても難なく捕まえられそうだ。



「お前達は別の馬車に乗ってついて来い。俺はアルマン卿の馬車で概要を聞かなきゃならねえからな」



 と、他の警官に刑事さんが言う。

 その言葉通り、警察署を出ると伯爵家の馬車に刑事さんが同乗する。

 体が大きいだけに普通の馬車では小さいそうで「旦那の馬車は広くて良いですねえ」と笑った。

 逆に刑事さんが乗るとわたしは馬車が小さくなったように感じるのだ。

 隣の大柄な体から出来る限り体を離して座るが、そうなると壁際に身を寄せる格好となり、物理的に肩身の狭い思いをするのである。



「それで、どういうことか説明お願いできますかい?」

「大した内容ではないがな。三つ目鴉の所へ行って肉を売っていた男に話を聞いた。あの肉は他の者から仕入れたものだそうだ。仕入れた先は近所の肉屋で、譲ったのは従業員のマイルズ=オア、体の大きい男で『売り物にならぬからそちらで売ってくれ』と渡されたそうだ」

「じゃあ、そのマイルズって野郎がクロですかねえ」

「判断をするには微妙だな。その男もどこかで肉を仕入れ、人間の肉だと気付いて処分に困ったという線もある。本人に確認するか確かな証拠が出ない以上はどれも憶測に過ぎん」



 そこまで話し、馬車がゆっくりとスピードを落としていく。

 やがて止まると御者の到着を告げる声がして、扉が開いた。

 まずはわたしが降りて、次に刑事さん、最後に伯爵の順だ。

 後ろから追いかけてきた馬車からも警官達が降りてくる。

 周りの街並みは木造や石造りのものが入り交じり、オマケにお世辞にも綺麗とは言い難い。先ほどの元締め達がいた場所とそう離れていないからか街並みはほぼ同じだが、こちらの方が少しばかりボロさがある。

 入り組んだ路地や狭く奥行きの長い家々はまるで立体のパズルの如く隣り合っており、どこが境目なのか分からない建物もあれば、人など住んでいなさそうな崩れかけの家もあって、全体的にくすんだ色味の景色が続く。

 伯爵が地図を手に歩き出し、わたし、刑事さんと警官三人とそれに続く。

 しばらく街を歩き、小さな店の前で伯爵が止まった。



「此処だな」



 店は一目では少々肉屋とは分かり難い。造りから何かの店であるのは見て取れるが、店の名前もなければ何を売っているかの看板らしきものもなく、開いてるかどうかも怪しい様だった。

 思わず伯爵と視線だけで互いに見合わせてしまったのは無理もないだろう。

 刑事さんは特に気にした風もなく「まずは俺が行ってきますよ」と扉を押し開けて中へ入っていく。

 警官三人は何時でも立ち入れるように待機した。

 だが十分もしないうちに変なものを食べてしまった時のような顔の刑事さんが出て来て「何というか拍子抜けしました。……あ、旦那達も入ってみてくださいよ」と眦を下げる。

 それに伯爵が店内へ入ったのでわたしも足を踏み入れた。

 店内は外観と同じく手狭で、レジ代わりの台がドンとあり、壁に肉の名前と重さ、値段が書かれているけれど冷蔵庫などのないこの世界ではナマモノは日持ちしないので肉屋は午前中のみ開店するという旨が書かれた板が一緒の壁に立てかけてあった。

 そのレジ代わりの台の向こうには確かに体の大きい男がいた。

 この国でよく見かける短い茶髪にライトブラウンの瞳は目尻が下がっていて、大柄の男の威圧的な雰囲気を和らげ、肩を縮込ませて曲がった猫背も相まって外見とは裏腹に気弱そうな印象を受けた。

 男は伯爵とわたしを見て戸惑った風に意味もなく両手を上げて彷徨わせる。



「お前がマイルズ=オアか?」



 伯爵の質問に男は目を丸くして頷いた。



「え、あ、は、はい、俺がマイルズですが……あの、て、店長は今はいません……」



 上擦ったような声は少しだけ特徴的な吃音きつおんが混じった。

 それに本人も気付いたのか顔がほんのり赤くなる。上がり症なのかもしれない。

 後ろから入って来た刑事さんがマイルズへ声をかける。



「用があるのはお前さんだよ。んで、さっきと同じ質問になるが、闇市に出入りしてる近所の男に人間の肉を譲ったって本当か?」



 マイルズさんが一つ頷いた。



「あ、ああ、そう、そうだ」

「その肉はどこで手に入れたんだっけ?」

「ひ、貧民街だよ、俺はに、肉屋だから売る肉が、ほ、欲しかったんだ。渡したのはあ、余りで」

「買い取ったのか?」



 今度は首を横に振った。



「い、いや、貧民街のやつを、俺が、つ、捕まえて、潰して、肉にした」



 これには後ろにいた他の警官達が色めき立つ。

 しかしマイルズさんはビクリと肩を震わせたものの、まるで何か悪いことをしてしまったのかと怯える子供のような顔と仕草で台の向こう側に大きな体を隠そうとする。

 おかしなその反応に伯爵もわたしも首を傾げてしまう。



「な、何で警察が来るんだ? お、俺は肉、売ってるだけなのに」

「その肉が問題なんだ。それは分かっているだろう?」

「?」



 伯爵の言葉にマイルズさんは小首を傾げる。

 それは殺人という罪すらよく分かっていないということに他ならなかった。

「どういうことだ」と伯爵が刑事さんに聞くも、刑事さんも「それがサッパリでさあ」と肩を竦めてお手上げのポーズをして見せた。

 マイルズを含めた誰もが戸惑う中でとりあえずわたしは小さく挙手してみる。



「あの、少々宜しいでしょうか?」

「あん?」

「何だ」

「わたしがお話ししても?」



 恐らくだが、この人は善悪の判断が普通とは違うのだろう。

 その理由は人それぞれだ。生まれながらに他人と共感出来ない人間もいれば、自身の価値観の中でのみ生きている人間もいる。自身こそが正しいと信じて疑わない人間も。

 だからこそ、マイルズさんと話して何故そうなのか調べる必要がある。

 内容如何ではこの人の罪が減刑される可能性だってありえるのだ。

 真っ直ぐに伯爵を見返せばブルーグレーとぶつかり、肯定の瞬きが返された。



「好きにしろ」

「ありがとうございます」


 
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