76 / 77
第三章 エルフの森
76
しおりを挟む
「まったくコイツは……私たちの苦労も知らないで……起きなさい!」
ミルリーフはアルカンタラの両頬をビンタする。
「ミ、ミルリーフ……叩きすぎでは……?」
女剣士が引くほどのビンタを繰り出すミルリーフだった。
「んん……なんだ……アレ? ここは……?」
辺りをキョロキョロと見渡すも、状況がつかめないアルカンタラ。
「アンタはね……紫牙草に眠らされてたのよ! バカじゃないの? 花粉は吸うなって言ったわよね?」
「あぁ……思い出してきた……くそ、情けない……まさかお前らに助けられるとは……」
ガックリと肩を落とす。アルカンタラは自分の腫れたほっぺたを触る。
「これもモンスターの仕業なのか!? おそろしいモンスターだな……」
「そ、そうよ……大変だったんだから」
その時、ミルリーフに切られ倒れていた紫牙草が動き出す。茎を斬られたショックからか我を忘れて暴れ回っている。
「まだ動けるのね……最後の悪あがきってやつかしら」
ミルリーフは剣を構える。剣といってももちろん刃の部分の折れた持ち手だけの剣だ。
「お、おい、お前その剣折れちまったのか?」
「ふふ、見てなさいよ! アルカンタラは寝起きで動けないでしょ」
ミルリーフはさっきと同じように剣を強く握る。
すると、再び光の剣が現れた。
「そ、それは……魔法剣!? お前いつの間に……」
ミルリーフはのたうち回るモンスターに駆け寄る。
瀕死の紫牙草は最後の攻撃を繰り出す。
花の先端から紫色の尖ったツルが飛び出す。紫牙草の名前の由来、岩でも貫通する威力を持つ牙だ。
「危ない!」アルカンタラは咄嗟に声を出す。
しかし、ミルリーフは自身に迫りかかる牙を光の剣でさばく。
硬いはずの牙はサクサクと輪切りにされる。
ミルリーフは地面を蹴り飛び上がり、紫牙草の真上から魔法剣を振り下ろす。
真っ二つに斬られた紫牙草は、左右に二つに裂け倒れた。
「ふふふ、どう? 私、天才だったみたい」
ミルリーフは得意げに振り返る。
「……すげぇ、そのレベルの魔法剣はソーサーだって使えなかったぞ……」
あまりの出来事に、そして不甲斐なく眠ってしまったアルカンタラは珍しく純粋にミルリーフを褒める。
三人は紫牙草を掘り出し、根っこの部分を採取する。
エルフ王の病気、紫斑病を治す薬の材料だ。
「よし、あとは帰り道にヘビを捕まえれば材料は揃うわね」
「エルフ王……無事治ってくれればいいが……」
女剣士は神妙な面持ちで言う。
その時、また地面が揺れた。
「ど、どうして? 紫牙草は倒したのに!?」
三人は辺りを見渡す。すると遠くから砂嵐を巻き上げながら向かってくる紫牙草の群れが現れた。
「くそ、一体だけじゃないのか……やるしかないか」
女剣士は歯を食いしばりながら気丈に剣を握る。そんな女剣士の肩をミルリーフは叩く。
「大丈夫よ。もう心配はいらないわ」ミルリーフは優しく微笑む。
「な、なに?」
後ろではアルカンタラがニヤリと笑う。
「よかったぜ、俺一人寝てる間に解決じゃカッコつかなかったところだ!」
「アルカンタラ、やってやりなさい!」
アルカンタラは紫牙草の大群に向け、手のひらを広げる。
「くらえ!」
アルカンタラの手から真っ白な光が放たれる。
次の瞬間、光に飲まれた紫牙草の大群はバラバラに崩れ落ちていった。
「……こ、これが古代魔法……魔法陣の力か!? 一体倒すだけでもあれだけ苦戦したモンスターの大群をたった一撃で……?」
女剣士は口をポカンと開け驚いていた。
「ふふふ、まあこんなもんだ」
「あ、相変わらずふざけた威力ね……」
ミルリーフはアルカンタラの両頬をビンタする。
「ミ、ミルリーフ……叩きすぎでは……?」
女剣士が引くほどのビンタを繰り出すミルリーフだった。
「んん……なんだ……アレ? ここは……?」
辺りをキョロキョロと見渡すも、状況がつかめないアルカンタラ。
「アンタはね……紫牙草に眠らされてたのよ! バカじゃないの? 花粉は吸うなって言ったわよね?」
「あぁ……思い出してきた……くそ、情けない……まさかお前らに助けられるとは……」
ガックリと肩を落とす。アルカンタラは自分の腫れたほっぺたを触る。
「これもモンスターの仕業なのか!? おそろしいモンスターだな……」
「そ、そうよ……大変だったんだから」
その時、ミルリーフに切られ倒れていた紫牙草が動き出す。茎を斬られたショックからか我を忘れて暴れ回っている。
「まだ動けるのね……最後の悪あがきってやつかしら」
ミルリーフは剣を構える。剣といってももちろん刃の部分の折れた持ち手だけの剣だ。
「お、おい、お前その剣折れちまったのか?」
「ふふ、見てなさいよ! アルカンタラは寝起きで動けないでしょ」
ミルリーフはさっきと同じように剣を強く握る。
すると、再び光の剣が現れた。
「そ、それは……魔法剣!? お前いつの間に……」
ミルリーフはのたうち回るモンスターに駆け寄る。
瀕死の紫牙草は最後の攻撃を繰り出す。
花の先端から紫色の尖ったツルが飛び出す。紫牙草の名前の由来、岩でも貫通する威力を持つ牙だ。
「危ない!」アルカンタラは咄嗟に声を出す。
しかし、ミルリーフは自身に迫りかかる牙を光の剣でさばく。
硬いはずの牙はサクサクと輪切りにされる。
ミルリーフは地面を蹴り飛び上がり、紫牙草の真上から魔法剣を振り下ろす。
真っ二つに斬られた紫牙草は、左右に二つに裂け倒れた。
「ふふふ、どう? 私、天才だったみたい」
ミルリーフは得意げに振り返る。
「……すげぇ、そのレベルの魔法剣はソーサーだって使えなかったぞ……」
あまりの出来事に、そして不甲斐なく眠ってしまったアルカンタラは珍しく純粋にミルリーフを褒める。
三人は紫牙草を掘り出し、根っこの部分を採取する。
エルフ王の病気、紫斑病を治す薬の材料だ。
「よし、あとは帰り道にヘビを捕まえれば材料は揃うわね」
「エルフ王……無事治ってくれればいいが……」
女剣士は神妙な面持ちで言う。
その時、また地面が揺れた。
「ど、どうして? 紫牙草は倒したのに!?」
三人は辺りを見渡す。すると遠くから砂嵐を巻き上げながら向かってくる紫牙草の群れが現れた。
「くそ、一体だけじゃないのか……やるしかないか」
女剣士は歯を食いしばりながら気丈に剣を握る。そんな女剣士の肩をミルリーフは叩く。
「大丈夫よ。もう心配はいらないわ」ミルリーフは優しく微笑む。
「な、なに?」
後ろではアルカンタラがニヤリと笑う。
「よかったぜ、俺一人寝てる間に解決じゃカッコつかなかったところだ!」
「アルカンタラ、やってやりなさい!」
アルカンタラは紫牙草の大群に向け、手のひらを広げる。
「くらえ!」
アルカンタラの手から真っ白な光が放たれる。
次の瞬間、光に飲まれた紫牙草の大群はバラバラに崩れ落ちていった。
「……こ、これが古代魔法……魔法陣の力か!? 一体倒すだけでもあれだけ苦戦したモンスターの大群をたった一撃で……?」
女剣士は口をポカンと開け驚いていた。
「ふふふ、まあこんなもんだ」
「あ、相変わらずふざけた威力ね……」
0
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる