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第三章 エルフの森
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「まったくコイツは……私たちの苦労も知らないで……起きなさい!」
ミルリーフはアルカンタラの両頬をビンタする。
「ミ、ミルリーフ……叩きすぎでは……?」
女剣士が引くほどのビンタを繰り出すミルリーフだった。
「んん……なんだ……アレ? ここは……?」
辺りをキョロキョロと見渡すも、状況がつかめないアルカンタラ。
「アンタはね……紫牙草に眠らされてたのよ! バカじゃないの? 花粉は吸うなって言ったわよね?」
「あぁ……思い出してきた……くそ、情けない……まさかお前らに助けられるとは……」
ガックリと肩を落とす。アルカンタラは自分の腫れたほっぺたを触る。
「これもモンスターの仕業なのか!? おそろしいモンスターだな……」
「そ、そうよ……大変だったんだから」
その時、ミルリーフに切られ倒れていた紫牙草が動き出す。茎を斬られたショックからか我を忘れて暴れ回っている。
「まだ動けるのね……最後の悪あがきってやつかしら」
ミルリーフは剣を構える。剣といってももちろん刃の部分の折れた持ち手だけの剣だ。
「お、おい、お前その剣折れちまったのか?」
「ふふ、見てなさいよ! アルカンタラは寝起きで動けないでしょ」
ミルリーフはさっきと同じように剣を強く握る。
すると、再び光の剣が現れた。
「そ、それは……魔法剣!? お前いつの間に……」
ミルリーフはのたうち回るモンスターに駆け寄る。
瀕死の紫牙草は最後の攻撃を繰り出す。
花の先端から紫色の尖ったツルが飛び出す。紫牙草の名前の由来、岩でも貫通する威力を持つ牙だ。
「危ない!」アルカンタラは咄嗟に声を出す。
しかし、ミルリーフは自身に迫りかかる牙を光の剣でさばく。
硬いはずの牙はサクサクと輪切りにされる。
ミルリーフは地面を蹴り飛び上がり、紫牙草の真上から魔法剣を振り下ろす。
真っ二つに斬られた紫牙草は、左右に二つに裂け倒れた。
「ふふふ、どう? 私、天才だったみたい」
ミルリーフは得意げに振り返る。
「……すげぇ、そのレベルの魔法剣はソーサーだって使えなかったぞ……」
あまりの出来事に、そして不甲斐なく眠ってしまったアルカンタラは珍しく純粋にミルリーフを褒める。
三人は紫牙草を掘り出し、根っこの部分を採取する。
エルフ王の病気、紫斑病を治す薬の材料だ。
「よし、あとは帰り道にヘビを捕まえれば材料は揃うわね」
「エルフ王……無事治ってくれればいいが……」
女剣士は神妙な面持ちで言う。
その時、また地面が揺れた。
「ど、どうして? 紫牙草は倒したのに!?」
三人は辺りを見渡す。すると遠くから砂嵐を巻き上げながら向かってくる紫牙草の群れが現れた。
「くそ、一体だけじゃないのか……やるしかないか」
女剣士は歯を食いしばりながら気丈に剣を握る。そんな女剣士の肩をミルリーフは叩く。
「大丈夫よ。もう心配はいらないわ」ミルリーフは優しく微笑む。
「な、なに?」
後ろではアルカンタラがニヤリと笑う。
「よかったぜ、俺一人寝てる間に解決じゃカッコつかなかったところだ!」
「アルカンタラ、やってやりなさい!」
アルカンタラは紫牙草の大群に向け、手のひらを広げる。
「くらえ!」
アルカンタラの手から真っ白な光が放たれる。
次の瞬間、光に飲まれた紫牙草の大群はバラバラに崩れ落ちていった。
「……こ、これが古代魔法……魔法陣の力か!? 一体倒すだけでもあれだけ苦戦したモンスターの大群をたった一撃で……?」
女剣士は口をポカンと開け驚いていた。
「ふふふ、まあこんなもんだ」
「あ、相変わらずふざけた威力ね……」
ミルリーフはアルカンタラの両頬をビンタする。
「ミ、ミルリーフ……叩きすぎでは……?」
女剣士が引くほどのビンタを繰り出すミルリーフだった。
「んん……なんだ……アレ? ここは……?」
辺りをキョロキョロと見渡すも、状況がつかめないアルカンタラ。
「アンタはね……紫牙草に眠らされてたのよ! バカじゃないの? 花粉は吸うなって言ったわよね?」
「あぁ……思い出してきた……くそ、情けない……まさかお前らに助けられるとは……」
ガックリと肩を落とす。アルカンタラは自分の腫れたほっぺたを触る。
「これもモンスターの仕業なのか!? おそろしいモンスターだな……」
「そ、そうよ……大変だったんだから」
その時、ミルリーフに切られ倒れていた紫牙草が動き出す。茎を斬られたショックからか我を忘れて暴れ回っている。
「まだ動けるのね……最後の悪あがきってやつかしら」
ミルリーフは剣を構える。剣といってももちろん刃の部分の折れた持ち手だけの剣だ。
「お、おい、お前その剣折れちまったのか?」
「ふふ、見てなさいよ! アルカンタラは寝起きで動けないでしょ」
ミルリーフはさっきと同じように剣を強く握る。
すると、再び光の剣が現れた。
「そ、それは……魔法剣!? お前いつの間に……」
ミルリーフはのたうち回るモンスターに駆け寄る。
瀕死の紫牙草は最後の攻撃を繰り出す。
花の先端から紫色の尖ったツルが飛び出す。紫牙草の名前の由来、岩でも貫通する威力を持つ牙だ。
「危ない!」アルカンタラは咄嗟に声を出す。
しかし、ミルリーフは自身に迫りかかる牙を光の剣でさばく。
硬いはずの牙はサクサクと輪切りにされる。
ミルリーフは地面を蹴り飛び上がり、紫牙草の真上から魔法剣を振り下ろす。
真っ二つに斬られた紫牙草は、左右に二つに裂け倒れた。
「ふふふ、どう? 私、天才だったみたい」
ミルリーフは得意げに振り返る。
「……すげぇ、そのレベルの魔法剣はソーサーだって使えなかったぞ……」
あまりの出来事に、そして不甲斐なく眠ってしまったアルカンタラは珍しく純粋にミルリーフを褒める。
三人は紫牙草を掘り出し、根っこの部分を採取する。
エルフ王の病気、紫斑病を治す薬の材料だ。
「よし、あとは帰り道にヘビを捕まえれば材料は揃うわね」
「エルフ王……無事治ってくれればいいが……」
女剣士は神妙な面持ちで言う。
その時、また地面が揺れた。
「ど、どうして? 紫牙草は倒したのに!?」
三人は辺りを見渡す。すると遠くから砂嵐を巻き上げながら向かってくる紫牙草の群れが現れた。
「くそ、一体だけじゃないのか……やるしかないか」
女剣士は歯を食いしばりながら気丈に剣を握る。そんな女剣士の肩をミルリーフは叩く。
「大丈夫よ。もう心配はいらないわ」ミルリーフは優しく微笑む。
「な、なに?」
後ろではアルカンタラがニヤリと笑う。
「よかったぜ、俺一人寝てる間に解決じゃカッコつかなかったところだ!」
「アルカンタラ、やってやりなさい!」
アルカンタラは紫牙草の大群に向け、手のひらを広げる。
「くらえ!」
アルカンタラの手から真っ白な光が放たれる。
次の瞬間、光に飲まれた紫牙草の大群はバラバラに崩れ落ちていった。
「……こ、これが古代魔法……魔法陣の力か!? 一体倒すだけでもあれだけ苦戦したモンスターの大群をたった一撃で……?」
女剣士は口をポカンと開け驚いていた。
「ふふふ、まあこんなもんだ」
「あ、相変わらずふざけた威力ね……」
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