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第三章 エルフの森
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アムハイナ王国から長い距離を伝書鳩は戻ってきた。
エルフ王の病気を治すため、薬を持って鳩が帰ってきてくれることを願っていたアルカンタラたちだったが、鳩が持っていたのは1通の手紙だけだった。
「手紙だけ……? 薬は無いってこと?」
期待していた特効薬はないようで落胆する三人だった。
恐る恐る伝書鳩の足に結ばれた手紙を解く。
ミルリーフの書いた『古代兵器を作るために宝玉を集めている。エルフ王が紫斑病になり命の危機で薬が欲しい』という内容の手紙の返事だ。
ミルリーフを不安そうに文面に視線を落とす。
「おいおい、薬がねぇじゃねぇか! どうなってるんだよ? エルフの王の紫斑病って病気は今ではすぐ治るんだろ?」
横でギャーギャーと騒ぐアルカンタラを無視して、ミルリーフは黙々と手紙を読む。
「……なるほど」ミルリーフが呟く。
手紙の内容はこうだった。
数十年前、世界中で大流行した紫斑病には確かに特効薬があった。
しかし、今では予防接種や栄養面の向上で、人間の世界では根絶された病気になった。そのため不要になった特効薬はアムハイナにはなく、すぐに用意できないということだった。
「……くそ、じゃあエルフ王の病気は治せねぇってことかよ?」
「いえ……大丈夫よ! 薬はないけど、作り方が手紙に書いてあるわ。そんなに難しくなさそう。材料さえあれば私たちでも作れそうだわ」
「……本当か!? よかった!」
エルフの姫もホッと胸をなでおろす。
ミルリーフは薬のレシピをしっかりと確認する。
「えーっと、紫斑病の薬は……紫牙草という花の根っことヘビの肝臓を混ぜると出来上がるみたいだわ」
「紫牙草……? 聞いたことねぇな?」アルカンタラは首をかしげる。
「ヘビは大丈夫ね、この山はヘビだらけだからすぐ見つかるわ。姫、このあたりに紫牙草って花は咲いてるかしら?」
緑に囲まれたエルフの森、大抵の植物はこの森で手に入るだろう。
「紫牙草……確か聞いたことはあるが、どこだったかな……」
思い出そうと頭を抱える姫。その時、扉がバタリと開いた。ミルリーフの試合相手だったエルフの女剣士だ。
「姫、申し訳ございません。盗み聞きするつもりはなかったのですが話が聞こえてしまいました。王を治す薬があるのですね?」
女剣士は驚いたように部屋に入ってくる。
エルフ王の病気を治すため、薬を持って鳩が帰ってきてくれることを願っていたアルカンタラたちだったが、鳩が持っていたのは1通の手紙だけだった。
「手紙だけ……? 薬は無いってこと?」
期待していた特効薬はないようで落胆する三人だった。
恐る恐る伝書鳩の足に結ばれた手紙を解く。
ミルリーフの書いた『古代兵器を作るために宝玉を集めている。エルフ王が紫斑病になり命の危機で薬が欲しい』という内容の手紙の返事だ。
ミルリーフを不安そうに文面に視線を落とす。
「おいおい、薬がねぇじゃねぇか! どうなってるんだよ? エルフの王の紫斑病って病気は今ではすぐ治るんだろ?」
横でギャーギャーと騒ぐアルカンタラを無視して、ミルリーフは黙々と手紙を読む。
「……なるほど」ミルリーフが呟く。
手紙の内容はこうだった。
数十年前、世界中で大流行した紫斑病には確かに特効薬があった。
しかし、今では予防接種や栄養面の向上で、人間の世界では根絶された病気になった。そのため不要になった特効薬はアムハイナにはなく、すぐに用意できないということだった。
「……くそ、じゃあエルフ王の病気は治せねぇってことかよ?」
「いえ……大丈夫よ! 薬はないけど、作り方が手紙に書いてあるわ。そんなに難しくなさそう。材料さえあれば私たちでも作れそうだわ」
「……本当か!? よかった!」
エルフの姫もホッと胸をなでおろす。
ミルリーフは薬のレシピをしっかりと確認する。
「えーっと、紫斑病の薬は……紫牙草という花の根っことヘビの肝臓を混ぜると出来上がるみたいだわ」
「紫牙草……? 聞いたことねぇな?」アルカンタラは首をかしげる。
「ヘビは大丈夫ね、この山はヘビだらけだからすぐ見つかるわ。姫、このあたりに紫牙草って花は咲いてるかしら?」
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「紫牙草……確か聞いたことはあるが、どこだったかな……」
思い出そうと頭を抱える姫。その時、扉がバタリと開いた。ミルリーフの試合相手だったエルフの女剣士だ。
「姫、申し訳ございません。盗み聞きするつもりはなかったのですが話が聞こえてしまいました。王を治す薬があるのですね?」
女剣士は驚いたように部屋に入ってくる。
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