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第一章 勇者パーティーの魔法使い
20 第一章完
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勇者ソーサーと女賢者アゼリの墓は圧倒的な存在感だった。
さすがは世界を救った勇者と女賢者の墓という立派な墓だ。
花や食べ物がたくさん供えられている。
「これがあいつらの墓か……」
アルカンタラは少し寂しそうに、墓石に刻まれた少し薄くなっているソーサーやアゼリの名前を見て長い年月が経っているのだと感じた。
「そうよ。まあ私の一族のお墓でもあるんだけどね。今でもお墓参りに来てくれる人多いみたいで、お花やお供え物はいつもいっぱいよ」
100年前とはいえ、勇者の功績は今でも人々に忘れずに語り継がれているようだ。
「……ったく、せっかく俺が目を覚ましたってのにお前らが死んでたら意味ねーだろ……」
「……アルカンタラ」
アルカンタラの目元に涙が浮かぶのに気づいたミルリーフ。
「お前らがいないから……仕方ねぇから今度は俺が……俺たちが世界を平和にしてくるわ!」
アルカンタラはソーサーたちの墓にそう呟いた。
「さあ、とっとと行くぞ。ミルリーフ!」
「ふふ、ようやく名前で呼んでくれたわね! じゃあ、おじいちゃん、おばあちゃん行ってくるわね!」
2人は笑顔で勇者の墓を後にする。
「……ん?」
その時、アルカンタラが勇者の墓の周りに立ち並ぶ、墓の一つに目を止める。
「どうかしたの?」
「……こ、これ……」
アルカンタラは恐る恐る一つの墓を指差す。
「なによ……? えっ!?」
ミルリーフも驚いた声を出す。
「……ア、『アルカンタラの墓』……!?!?」
そこには勇者ほどではない小ぶりなボロボロの墓石、そして刻まれた『アルカンタラの墓』の文字。
「どうして俺の墓が……!?」
動揺するアルカンタラ。
「……うーん、おそらく魔王との戦いで亡くなった仲間たちのお墓をおじいちゃんたちが作ったのかしら?」
世界平和のために戦い、途中で命を落とした者たちを弔いたいというソーサーの発案だった。アルカンタラ以外の戦士たちの墓も並んでいた。
「あー……ソーサーたちならやりそうだな。フフフ……それにしても……」
そう言いアルカンタラはイタズラな笑顔で墓石にそっと手を添える。
「……俺は……生きてるっつーの!」
『ドン』
ニカっと笑うアルカンタラの手のひらから衝撃波が放たれる。
アルカンタラの墓は粉々に粉砕し、砂煙になって空を舞う。
「ちょ、ちょっとアンタ! なんてことするのよ!?」
突然の出来事に目を丸くするミルリーフ。
「くっくっく、良いんだよ。俺の墓なんだから! ソーサーは早とちりな野郎だぜ。ほら、今度こそ行くぞミルリーフ!」
「まったく……信じられんわよ!」
ミルリーフも笑う。
こうして2人の冒険が始まった。
第一章完
さすがは世界を救った勇者と女賢者の墓という立派な墓だ。
花や食べ物がたくさん供えられている。
「これがあいつらの墓か……」
アルカンタラは少し寂しそうに、墓石に刻まれた少し薄くなっているソーサーやアゼリの名前を見て長い年月が経っているのだと感じた。
「そうよ。まあ私の一族のお墓でもあるんだけどね。今でもお墓参りに来てくれる人多いみたいで、お花やお供え物はいつもいっぱいよ」
100年前とはいえ、勇者の功績は今でも人々に忘れずに語り継がれているようだ。
「……ったく、せっかく俺が目を覚ましたってのにお前らが死んでたら意味ねーだろ……」
「……アルカンタラ」
アルカンタラの目元に涙が浮かぶのに気づいたミルリーフ。
「お前らがいないから……仕方ねぇから今度は俺が……俺たちが世界を平和にしてくるわ!」
アルカンタラはソーサーたちの墓にそう呟いた。
「さあ、とっとと行くぞ。ミルリーフ!」
「ふふ、ようやく名前で呼んでくれたわね! じゃあ、おじいちゃん、おばあちゃん行ってくるわね!」
2人は笑顔で勇者の墓を後にする。
「……ん?」
その時、アルカンタラが勇者の墓の周りに立ち並ぶ、墓の一つに目を止める。
「どうかしたの?」
「……こ、これ……」
アルカンタラは恐る恐る一つの墓を指差す。
「なによ……? えっ!?」
ミルリーフも驚いた声を出す。
「……ア、『アルカンタラの墓』……!?!?」
そこには勇者ほどではない小ぶりなボロボロの墓石、そして刻まれた『アルカンタラの墓』の文字。
「どうして俺の墓が……!?」
動揺するアルカンタラ。
「……うーん、おそらく魔王との戦いで亡くなった仲間たちのお墓をおじいちゃんたちが作ったのかしら?」
世界平和のために戦い、途中で命を落とした者たちを弔いたいというソーサーの発案だった。アルカンタラ以外の戦士たちの墓も並んでいた。
「あー……ソーサーたちならやりそうだな。フフフ……それにしても……」
そう言いアルカンタラはイタズラな笑顔で墓石にそっと手を添える。
「……俺は……生きてるっつーの!」
『ドン』
ニカっと笑うアルカンタラの手のひらから衝撃波が放たれる。
アルカンタラの墓は粉々に粉砕し、砂煙になって空を舞う。
「ちょ、ちょっとアンタ! なんてことするのよ!?」
突然の出来事に目を丸くするミルリーフ。
「くっくっく、良いんだよ。俺の墓なんだから! ソーサーは早とちりな野郎だぜ。ほら、今度こそ行くぞミルリーフ!」
「まったく……信じられんわよ!」
ミルリーフも笑う。
こうして2人の冒険が始まった。
第一章完
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