12 / 77
第一章 勇者パーティーの魔法使い
12
しおりを挟む
ミルリーフは城に用意された部屋にアルカンタラを案内する。
客人用のピカピカの部屋、フカフカベッドにシャンデリアと豪華な一室だ。
「おお……これはすごい! この時代の部屋はみんなこんな豪華なのか? なんだこの弾力は!?」
ベットをぴょんぴょんと飛び跳ね遊ぶアルカンタラ。
「ちょっと、遊んでるんじゃないわよ! この部屋は客人用の特別豪華な部屋よ」
子供のように遊ぶアルカンタラをあきれた表情で眺めるミルリーフ。
「なあ、さっきから気になっていたんだが天井に吊るされているあの光ってるランプはなんだ?」
アルカンタラは電球を指差す。
「……ん? 電球がどうかしたの? あ、そっか。100年前に電球はなかったのか……」
「……デンキュウ? それは電魔法か!?」
興味津々なアルカンタラ。
「アンタ……あんなに強くても何も知らないのね。
蛇口から水を出しただけで驚いてたし。しょうがないわね! 私がイチから現代での暮らしを教えてあげるわ!」
ミルリーフは腕を組んでアルカンタラを見下ろす。
「……くっ、偉そうに、ムカつくな」
室内で使われている電気は地下に眠るエネルギーを利用している。
魔法を使うものが減った現代の世界では、電気や火なども地下エネルギーを使っており、ミルリーフが氷漬けのアルカンタラを発見した時もその地下エネルギーの採掘中だった。
「――――そういう訳で今はみーんな地下エネルギーを使っているのよ。昔に比べるとだいぶ便利な生活になったんじゃないかしら?」
ミルリーフは一通り説明を終える。
「地下エネルギーか……そんなものがあったとは」
アルカンタラは不思議そうに電球をつつきながら呟く。
「ふふ。私はアンタから見たら未来人だからね。なんでも聞いてちょうだい」
「ふん、まさか未来人がこんなに弱くなってるなんてソーサーやアゼリが知ったら悲しむぜ」
アルカンタラは嫌味たっぷりに返す。
「うぅ……ねえ、ソーサーおじいちゃんとアゼリおばあちゃんの話を聞かせてよ。
文献とか昔話では聞いたことあるけどどれもリアル感がないのよね」
「お、ソーサーとアゼリか……いくらでも話すことはあるぞ。まずは何から話すかな?」
それからアルカンタラは一晩中、勇者パーティーの思い出を語った。
ずっと氷の中で眠っていたアルカンタラからすればつい数日前のことも、ミルリーフから見れば100年前のおとぎ話だった。
◇
「すごい話だわ……伝えられてる話とは全然違うわね。おじいちゃん達、まるで神様みたいな書かれ方をされてる文献ばかりで……」
アルカンタラの話を聞きながらミルリーフは祖先のエピソードに驚く。
「はは、神様? ソーサーもアゼリも普通の人だったよ。強くて優しい戦士だ」
誇らしげにアルカンタラは言った。
「ソーサーなんか酔っ払うと酷くてな。酔っ払ってサドラー国王をボコボコにしてたなぁ」
「お、おじいちゃんが……!?」
青ざめるミルリーフ。
「ああ、アゼリもムカつく奴にはトコトンやるタイプで手がつけられなかったよ」
「まさか……私の先祖がそんなヤンチャだったなんて……」
「くっくっ、こんなもんじゃないぞ? ソーサーなんてあれで女癖が悪くてなぁ――」
「やめてぇ! もう聞きたくないわぁ!」
言い伝えの勇者像とはだいぶ違った真実を知り、耳を覆うミルリーフだった。
客人用のピカピカの部屋、フカフカベッドにシャンデリアと豪華な一室だ。
「おお……これはすごい! この時代の部屋はみんなこんな豪華なのか? なんだこの弾力は!?」
ベットをぴょんぴょんと飛び跳ね遊ぶアルカンタラ。
「ちょっと、遊んでるんじゃないわよ! この部屋は客人用の特別豪華な部屋よ」
子供のように遊ぶアルカンタラをあきれた表情で眺めるミルリーフ。
「なあ、さっきから気になっていたんだが天井に吊るされているあの光ってるランプはなんだ?」
アルカンタラは電球を指差す。
「……ん? 電球がどうかしたの? あ、そっか。100年前に電球はなかったのか……」
「……デンキュウ? それは電魔法か!?」
興味津々なアルカンタラ。
「アンタ……あんなに強くても何も知らないのね。
蛇口から水を出しただけで驚いてたし。しょうがないわね! 私がイチから現代での暮らしを教えてあげるわ!」
ミルリーフは腕を組んでアルカンタラを見下ろす。
「……くっ、偉そうに、ムカつくな」
室内で使われている電気は地下に眠るエネルギーを利用している。
魔法を使うものが減った現代の世界では、電気や火なども地下エネルギーを使っており、ミルリーフが氷漬けのアルカンタラを発見した時もその地下エネルギーの採掘中だった。
「――――そういう訳で今はみーんな地下エネルギーを使っているのよ。昔に比べるとだいぶ便利な生活になったんじゃないかしら?」
ミルリーフは一通り説明を終える。
「地下エネルギーか……そんなものがあったとは」
アルカンタラは不思議そうに電球をつつきながら呟く。
「ふふ。私はアンタから見たら未来人だからね。なんでも聞いてちょうだい」
「ふん、まさか未来人がこんなに弱くなってるなんてソーサーやアゼリが知ったら悲しむぜ」
アルカンタラは嫌味たっぷりに返す。
「うぅ……ねえ、ソーサーおじいちゃんとアゼリおばあちゃんの話を聞かせてよ。
文献とか昔話では聞いたことあるけどどれもリアル感がないのよね」
「お、ソーサーとアゼリか……いくらでも話すことはあるぞ。まずは何から話すかな?」
それからアルカンタラは一晩中、勇者パーティーの思い出を語った。
ずっと氷の中で眠っていたアルカンタラからすればつい数日前のことも、ミルリーフから見れば100年前のおとぎ話だった。
◇
「すごい話だわ……伝えられてる話とは全然違うわね。おじいちゃん達、まるで神様みたいな書かれ方をされてる文献ばかりで……」
アルカンタラの話を聞きながらミルリーフは祖先のエピソードに驚く。
「はは、神様? ソーサーもアゼリも普通の人だったよ。強くて優しい戦士だ」
誇らしげにアルカンタラは言った。
「ソーサーなんか酔っ払うと酷くてな。酔っ払ってサドラー国王をボコボコにしてたなぁ」
「お、おじいちゃんが……!?」
青ざめるミルリーフ。
「ああ、アゼリもムカつく奴にはトコトンやるタイプで手がつけられなかったよ」
「まさか……私の先祖がそんなヤンチャだったなんて……」
「くっくっ、こんなもんじゃないぞ? ソーサーなんてあれで女癖が悪くてなぁ――」
「やめてぇ! もう聞きたくないわぁ!」
言い伝えの勇者像とはだいぶ違った真実を知り、耳を覆うミルリーフだった。
20
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜
ネリムZ
ファンタジー
唐突にギルドマスターから宣言される言葉。
「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」
理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。
様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。
そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。
モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。
行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。
俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。
そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。
新たな目標、新たな仲間と環境。
信念を持って行動する、一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる