上 下
4 / 36

寝ている間に……

しおりを挟む
 僕が助かるにはこのままレベルを上げて魔獣を倒すしかない。

 少し前のレベル1の僕なら、魔獣を倒すなど考えもしなかったことだった。
 しかし、今の僕は小さな町なら1番の魔法使いに匹敵するレベルに成長していた。

 今は焦らずに、このまま攻撃を受け続けよう。
 チャンスを待つんだ!

 
相変わらず魔獣は攻撃の手を緩めない。


「そういえば、石化した状態でも【バランス】は使えるのかな?」

 石化中でも【鑑定】が使えたのだ、【バランス】も使えるだろうと思った。

 【回復】

 試しに回復魔法を自分にかけてみた。
 すると、岩に潰された足、全身の打撲が少しづつうちに治っていく。

「おぉっ! すごい!」

 レベル1の時は指のささくれを治せるくらいの魔力だった。
 それが今では全身の怪我を治せるまでになっていた。

 「信じられない……僕の魔法がこんなにレベルアップしているなんて」

 【石化の首飾り】のおかげで気を失っているだけでここまで成長していることに驚いた。

 石化のおかげで元々痛みはなかったが、なににしろもう歩けないだろと思ってた足を治すことができた。

 「回復魔法でこれなら、攻撃魔法はどうなっているんだ……?」

 僕は魔獣に攻撃魔法を使ってみようと思った。しかし……

「いや……待て、やめておこう。魔獣が警戒して攻撃をやめても困るしな……」

 このまま魔獣の攻撃を受け続け、経験値を貯めるしか、僕が生き延びる方法はない。
 余計なことをするのはやめておこう。 

 魔獣のレベルは一番高くてレベル60くらいか?

 僕もレベル60くらいまで……いや、念のためレベル70くらいには上げて石化を解きたい。

 どれくらいの時間がかかるかは分からない。
 でも、待つしかない。この魔獣たちを倒し、ダンジョンを脱出できるレベルになるまで。

 ◇

 しばらくたって、また自分を【鑑定】してみた。
 身動きの取れない今、僕にできることは【鑑定】くらいだ。

 レベルアップのおかげか、以前よりも細かく情報を見れるようになっていた。
 体力、攻撃力なども成長しているが、それよりレベルアップした自分の使える魔法をみて驚いた。
 魔法の名前は知っているが、自分には使うことなど考えたこともない魔法をたくさん取得していた。

 僕の【バランス】は様々な魔法を同じ魔力で使える珍しいスキルだが、魔法の種類が多くなるとその分1つ1つの魔法は弱くなってしまう。

 そのため、この【バランス】のスキルを持つもので強力な魔導士になったものはほとんどいないと聞く。
 僕も同世代の【炎使い】や【水使い】のような1つの属性に特化した魔導士には歯が立たないのだ。

 貴重な【スキル】だが、なかなか使いこなせないでいた。しかし、今の僕は違う。
 レベル1の僕が、本来ならあり得ないような場違いなA級ダンジョンで強力な魔獣と戦闘? を続けて、爆発的にに成長していた。

 「すごいな……僕がこんなに魔法を使えるなんて。聞いたことのない魔法もあるな」

 僕は1つ1つ魔法の能力を【鑑定】していた。
 日頃は勉強熱心ではないが、時間はまだまだかかるのだ。とにかく時間を潰さなければならない。

 【鑑定】にも飽き始めた僕。
 もっと早くレベルを上げることはできないのだろうか?
 新しく使えるようになった魔法の能力をみる。

 「おっ? この魔法は使えるか? これも悪くないぞ」

 いくつか気になる魔法があった。それは【誘導】と【眠気】だ。

 「……これならいけるかもしれないな」

 僕は1つの作戦を思いついた。

【誘導】はフェロモンを放出し、魔獣の注目を集める魔法だ。
 本来は自分から魔獣を遠ざけたいときに【誘導】を離れたところに使い、注意をそらす使い方をする。

 【眠気】は文字通り、相手を眠らせる魔法。

 僕の考えた作戦はこうだ。

 まず【誘導】を僕自身にかける。
 そうすれば今より多くの魔獣が僕に襲い掛かるだろう。

 そして、【眠気】も自分にかける。
 そうすれば、睡魔に襲われ、退屈な時間を過ごすことなく、目が覚める頃には今よりもレベルアップしているはずだ。
 魔獣な軍団のど真ん中で寝るという、危険な作戦ではあるが、僕はこれに賭けてみようと思った。

 ◇

 【誘導】発動!

 僕は自分に【誘導】をかけた。モンスターをおびき寄せるフェロモンが僕から溢れ出る。
 すると………

 「「「「「「ガァァァアアアアア」」」」」」

 すぐにとんでもない数の魔獣が襲い掛かってきた!

 「ひいぃ!!」
 石化しているとはいえ、おびただしい数の魔獣に襲われてるのは恐怖であった。

 「こんなに魔獣が集まるなんて……大丈夫かな?」
 さすがに不安になってきた僕だったが、

 「まあ、やるしかないか……じゃあな魔獣ども、僕が起きる……それがお前たちの最期だ!」

 【眠気】発動!

 僕は眠気に包まれた。
 魔獣達に牙や爪の打撃音が子守歌に聴こえるような安らかな眠気だった。

 大量の魔獣が襲い掛かる中、僕は熟睡した。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」  ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。  あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。  元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……  更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。  追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に! 「――わたし、あなたに運命を感じました!」  ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません ※他サイトでも投稿しています

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。 さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。 魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。 神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。 その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。 だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。 一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。

処理中です...