53 / 76
53
しおりを挟む
日本近海、海底深くのダンジョン。
異世界での傷を負った魔王は数十年前、この世界に逃げてきてここで傷を癒している。
傷を治すために魔力が必要な魔王はこの世界にモンスターと魔力を持った人間を作った。
生物から少しづつ魔力を吸収し傷を癒している。
魔王の元に黒い伝書鳩が飛んでくる。
ネクロマンサーが死に際に飛ばした伝書鳩だ。
『……ほう、ネクロマンサーがやられたか……人間にそこまでやれる戦士がいるのか?
そこまで心配する必要はないだろうが……偵察くらいしておくか……』
魔王の影が人型に起き上がり、魔王そっくりな分身が出来上がる。
『ククク、分身でも半分くらいの力はあるかな?』
◆
僕の名前は木本オタフク、通称キモオタ。
高校3年生のちょっと太めの男の子だ。
冒険者に憧れた少年時代、レベル0と知り悲しんだ学生時代、
そして今、僕はレベル50、世界でも有数の冒険者になった。
相棒の精霊ガイドにだけレベルアップの案内が見える。
この世界でレベルアップ出来るのは精霊と契約できた僕だけだ。
魔王の側近、ネクロマンサーを倒した今、次の相手は魔王だ。
異世界での傷の回復ももうじき癒える頃だろう。
サクラちゃんの呪いが解けて数日後、
僕とガイドはまたレベルアップの日々だ。
僕のレベルは50。ハッキリ言って僕より上の冒険者は少ないだろう。
「ふーっ、ガイド、少し休憩しようか」
「えぇ? また休憩ですか!? キモオタくん、ちょっとたるんでませんか? またずっとたるんでますけどね……」
ガイドは僕の腹を見る。失礼な精霊だ。
「ふふふ、僕はネクロマンサーを倒した最強の冒険者だよ?」
「キモオタ君……調子に乗り始めましたね。次は魔王との戦いなんですよ?」
「……魔王ね……」
正直なところ、ネクロマンサーを倒して少し気が抜けていた。
「あっ! なんかネクロマンサーを倒してもう終わった気でいますね!?」
「うっ!?」
ガイドのはお見通しだ。
「いや……そういうわけじゃないんだけどさ」
ネクロマンサーを倒すのはアスカさんの妹で僕の憧れのアイドルのサクラちゃんを救うので必死だった。
しかし、魔王となると少し話が大きくなりすぎて現実感がなかった。
「もう! 魔王を倒さないとこの世界はお終いですよ! 私の世界だって魔王にボロボロにされたんですから……」
「……そうだったね」
魔王は数十年前、ガイドの世界を滅ぼそうとして負ったダメージをこの世界で癒している。
「でも、魔王を撃退するなんてガイドの世界の精霊は強いな」
「うーん……でも強かった精霊はその魔王との戦いで亡くなってしまいました……今の精霊では魔王はとても倒せませんよ」
「そんなに小さい体でみんな強かったんだね」
「私たち精霊も戦士は体を大きく出来たりしますね」
「そうなんだ。ガイドは?」
「私は戦士じゃないので元の世界でもこのままの大きさですよ」
「ほう、手のひらサイズね」
「だから私は戦争のときは直接戦いには参加していませんでした。後方支援や、負傷者の治療なんかがメインでしたね」
「そうなんだね……ん? それ何年前……?」
「えーっと……30年くらい前ですね? この世界にダンジョンが現れたころです」
「そ、そうか……」
ガイド……君はいったい何歳なんだい!?!?
「まあでも、僕が魔王もサクッと倒してみせるよ」
「……心配ですね」
『ピカッ』
その時、僕らのそばに黒い光が近づく。
「な、なんだ!?」
その光が人型に姿を変える。
「あ……あぁ……」
ガイドが顔を青白くする。
「なんだこれは?」
「ま、魔王です……」
「えっ!?」
目の前に姿を現した魔王。
背丈は僕と大して変わらない。全身を黒いローブに包んでいる男だ。
異世界での傷を負った魔王は数十年前、この世界に逃げてきてここで傷を癒している。
傷を治すために魔力が必要な魔王はこの世界にモンスターと魔力を持った人間を作った。
生物から少しづつ魔力を吸収し傷を癒している。
魔王の元に黒い伝書鳩が飛んでくる。
ネクロマンサーが死に際に飛ばした伝書鳩だ。
『……ほう、ネクロマンサーがやられたか……人間にそこまでやれる戦士がいるのか?
そこまで心配する必要はないだろうが……偵察くらいしておくか……』
魔王の影が人型に起き上がり、魔王そっくりな分身が出来上がる。
『ククク、分身でも半分くらいの力はあるかな?』
◆
僕の名前は木本オタフク、通称キモオタ。
高校3年生のちょっと太めの男の子だ。
冒険者に憧れた少年時代、レベル0と知り悲しんだ学生時代、
そして今、僕はレベル50、世界でも有数の冒険者になった。
相棒の精霊ガイドにだけレベルアップの案内が見える。
この世界でレベルアップ出来るのは精霊と契約できた僕だけだ。
魔王の側近、ネクロマンサーを倒した今、次の相手は魔王だ。
異世界での傷の回復ももうじき癒える頃だろう。
サクラちゃんの呪いが解けて数日後、
僕とガイドはまたレベルアップの日々だ。
僕のレベルは50。ハッキリ言って僕より上の冒険者は少ないだろう。
「ふーっ、ガイド、少し休憩しようか」
「えぇ? また休憩ですか!? キモオタくん、ちょっとたるんでませんか? またずっとたるんでますけどね……」
ガイドは僕の腹を見る。失礼な精霊だ。
「ふふふ、僕はネクロマンサーを倒した最強の冒険者だよ?」
「キモオタ君……調子に乗り始めましたね。次は魔王との戦いなんですよ?」
「……魔王ね……」
正直なところ、ネクロマンサーを倒して少し気が抜けていた。
「あっ! なんかネクロマンサーを倒してもう終わった気でいますね!?」
「うっ!?」
ガイドのはお見通しだ。
「いや……そういうわけじゃないんだけどさ」
ネクロマンサーを倒すのはアスカさんの妹で僕の憧れのアイドルのサクラちゃんを救うので必死だった。
しかし、魔王となると少し話が大きくなりすぎて現実感がなかった。
「もう! 魔王を倒さないとこの世界はお終いですよ! 私の世界だって魔王にボロボロにされたんですから……」
「……そうだったね」
魔王は数十年前、ガイドの世界を滅ぼそうとして負ったダメージをこの世界で癒している。
「でも、魔王を撃退するなんてガイドの世界の精霊は強いな」
「うーん……でも強かった精霊はその魔王との戦いで亡くなってしまいました……今の精霊では魔王はとても倒せませんよ」
「そんなに小さい体でみんな強かったんだね」
「私たち精霊も戦士は体を大きく出来たりしますね」
「そうなんだ。ガイドは?」
「私は戦士じゃないので元の世界でもこのままの大きさですよ」
「ほう、手のひらサイズね」
「だから私は戦争のときは直接戦いには参加していませんでした。後方支援や、負傷者の治療なんかがメインでしたね」
「そうなんだね……ん? それ何年前……?」
「えーっと……30年くらい前ですね? この世界にダンジョンが現れたころです」
「そ、そうか……」
ガイド……君はいったい何歳なんだい!?!?
「まあでも、僕が魔王もサクッと倒してみせるよ」
「……心配ですね」
『ピカッ』
その時、僕らのそばに黒い光が近づく。
「な、なんだ!?」
その光が人型に姿を変える。
「あ……あぁ……」
ガイドが顔を青白くする。
「なんだこれは?」
「ま、魔王です……」
「えっ!?」
目の前に姿を現した魔王。
背丈は僕と大して変わらない。全身を黒いローブに包んでいる男だ。
1
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

Link's
黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。
人類に仇なす不死の生物、"魔属”
そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者”
人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている――
アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。
ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。
やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に――
猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる